人命救助で命を落として異世界転生、助けたはずの女の子が僕を追いかけて異世界にやってきたんだけど……

小桃

第一章 始まり編

第1話 追放

▽第一章 始まりの編▽


「異端の者である貴様を、セトレア聖国から穢れ者の国であるミルド共生国へと追放することとする」

「……承りました」


 追放処分を言い渡されると、僕を取り押さえる聖騎士によって手枷を外され、両手の甲に異端者の証となる五芒星ペンタグラムの刻印が刻まれた。


 なぜ僕が異端者と呼ばれるのか? それは僕の授かった【アルテマ】という加護と【万能職マルテム】という職能に原因があった。この世界には【豪】【賢】【癒】【智】と呼ばれる四大加護と、【戦闘職バトラー】【属魔職エレメンター】【刻魔職クレンター】【一般職フリッター】と呼ばれる四大職能がある。ここまで言えば判ると思うが、僕の授かった加護と職能はこの世界に存在しないのだ。それが理由で異端者であると認定されたのだった。


 僕は両手に刻まれた五芒星ペンダグラムの刻印をマジマジと見つめていると、聞き慣れた声が耳に届いてきた。


「妾が産んだとはいえ一応は義兄だった。だが、たった今お前は教会から異端者認定されたことで、セトレア聖国の国民ではなくなった。そう、この僕の義兄などではなく、穢らわしい異端者ということだ。スタフォード男爵家の家督と、婚約者メリージュンは僕が引き継いでやるから安心しろ」

「レオナール……」


 僕が『レオナール』と義弟の名を呼ぶと、突然頭に衝撃が走った。それと同時に汚い言葉で罵声を浴びせられる。


『ゴツッ!』


「ぐっ……」

「貴様っ、異端者が誰に向かって口を利いているんだ!」


『ゴッ、ゴツッ……』


「がっ、がはっ……」


 僕は抵抗もできず、レオナールに何度も頭を踏みつけられると、意識が暗闇の中へと落ちていった……


◇◇◇

『ガタガタガタ……』


 揺れる感覚により覚醒する。


「うっ……」


 覚醒すると同時に、激しい頭痛が無慈悲に襲ってくる。頭部に手を当ててみるとデコボコに腫れ上がっていて、手の平には血糊がベットリと付いていた。なんとか痛みに耐えながら体を起こすと、見知らぬ男から声をかけられる。


「おい、大丈夫なのか? かなり派手にヤラれたんだな。落とされる前に息絶えるのかと思ってたぜ」

「っ……、ここは?」

「あっ、馬車の中だよ。俺たち異端者はミルド共生国へ追放になるんだから当然のことだろう?」

「そうか……」

「そろそろ突き落とされるぜ」


 男の口から『落とされる』と出たが、それは崖から突き落とされることを意味している。つまり追放とは、ミルド共生国へ流れる川に突き落とされることなのだ。


「そうか……僕は異端者だったな」


 暫くすると馬車が止まると、僕と見知らぬ男の2人は崖から突き落とされた。


 生まれ育ったセトレア聖国で異端者の認定を受けた僕は、追放という極刑の処分が下されたのだった。


▽小桃の一言▽

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