文盲の唄

椿生宗大

Que sais-je?

色々言いたいはずだけど


言葉の整理をつけようと


喉元で一息を殺すと


その一瞬の力みから




目の前の景色すら


真っ白に感じる


例えば


体育館前で足が固まって涙が出ていた小5の冬


食卓に並ぶ食器がワンセット減った中1の春


唇に他人の重みを覚えた高2の秋


視覚から冷たさが入り込んできて


人間から離れたように感じる瞬間があった


そのときと同じで


異様な密度を持った時間の流れに


圧倒されてか


麻痺した神経回路に言葉が弾かれた。





上手く言おうと思わなくても


ぼやついて


気付いたら胸が空いて


また抜け落ちた思考を見つめている


感じるもの全てが無機質で


言葉を乗せるほどのことは


どこに転がっているんだろうか


また呼吸を止めていた


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

文盲の唄 椿生宗大 @sotaAKITA1014

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ