甘い採れたてのとうもろこし

 これは北海道旅行に行った時のこと。


 だだっ広い公道をレンタカーで走り抜ける。

 景色は気持ちがいいほどの青空と、辺りいっぱいの緑に囲まれており、距離感がつかめなくなりそうなほどの澄んだ空気によって大自然の素晴らしさを否が応でもわからせてくる。

 こんな中、深呼吸をしていれば寿命が伸びていきそうだなと不意に思う。老後はこんな場所で余生を過ごしてみたいものだな。


 対向車線がはるか向こうでも余裕で見える景色の中、車を走らせていると大きな看板が見えてくる。

 どうやらこの先に民家がやっている、個人経営の八百屋があるようだ。


 そのまま車を走らせ、看板の通りの八百屋へと到着する。

 様々な野菜が並んであるが目を引いたのはとうもろこしだった。

 店主曰く、採れたてのとうもろこしだそうで、何もすることなくそのままかぶりつくことの出来る美味しさだそうだ。


 採れたて。

 それはあまりにも魅力的な言葉であり、そのとうもろこしを購入するのに迷いはなかった。

 家族の分も購入し、車内へと戻る。


 ガサガサとビニール袋からとり出してとうもろこしとご対面。

 綺麗な黄色……否、もはやこれは金色だな。黄金に輝き、綺麗にならんだとうもろこしの粒が光って見える。

 そういえば粒の数は、そのとうもろこしの髭の数と一緒なんだっけ。まぁ面倒だから数えたりはしないが。

 じゃあかぶりつくとしよう。


「いただきまーす」






 あっっっま!

 こういう採れたての野菜は甘いと聞いていたがここまでか!

 なにも調理などをほどこしていないというのが信じられない。

 しかしながら砂糖を使用した甘さではなく、純粋にとうもろこしそのものからなる甘さだということは理解できる。

 野菜にこういった表現を使うのは違う気もするが、ジューシーといった表現が最も似合うかもしれないと感じる。


 そして何よりも驚くべきはその値段だ。

 スーパーで買えるとうもろこしよりもはるかに安いというのにこの美味さ。

 産地直送どころか産地そのものである強みを充分に活かしている。


 この後にも青空と緑の草原の中、車を走らせいくつかの似たような店に立ち寄り、とうもろこしを買ったが、それら全てが種類は違えど、値段は似たようなものであり、無論甲乙つけがたい美味さを内包していた。


 海鮮丼を食べた時にも感じたが、食の宝庫……北海道。

 海鮮であろうと野菜であろうとその美味しさはとどまることを知らないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る