腹いっぱいの二郎系ラーメン

「今日の夜、二郎系ラーメンとか行かへん?」


 ある日の昼過ぎのこと。私は友人からそう提案を受ける。


「いいよ」

「じゃあ帰りに寄ろう」


 私はそれに対し快く了承をしたはいいがちょっとした問題点が心に残る。


 お昼普通に結構食べたんだよな……。




 帰り道にある1つの二郎系ラーメン屋。

 金曜日ということもあってか何人かは既に並んでおり、私達もその列へ並ぶ。

 店内からは香ばしいラーメンの香りが漂ってきて問答無用で食欲を刺激してきていた。


 少しだけ並んだ後、私達の順番となり食券を買って席に着き、ラーメンを待つ。


 二郎系には過去に2,3回行ったことがあるが、当然どれも量が多かった記憶がある。

 昼を食べたということもあり、一抹の不安を覚えながらも麺の量は普通にしたし大丈夫……大丈夫なはずと自分に言い聞かせて座して待っていた。




「ラーメン2つになります」


 私と友人の前に山のようなラーメンが置かれる。

 ドンとアブラ、ヤサイ、ニンニク、チャーシューが乗せられたその様に、これこそが二郎系ラーメンなのだと実感する。

 よしっ。意を決して頂こう。


「「いただきます」」






 美味い!

 しっかりと味付けされたスープや分厚めのチャーシュー、シャキシャキとしたヤサイにパンチの効いたニンニクやコッテリとしたアブラを元に麺をガツガツと食べ進める。

 高カロリー。エネルギー食。そんな言葉を体現したかのような圧倒的な質量。これぞ二郎系ラーメンだ。

 二郎系ラーメンを好む人の中にはヤサイが入っているため栄養バランスもしっかりとれると言っている方々もいるそうだ。知らんけど。


 ふと隣を見てみると、友人も黙々とラーメンに向かって一心不乱に食べ進めている。

 談笑する余裕など一切合切ありはしない。


 ただ目の前にある山を崩すべく、がむしゃらに、ひたむきにその美味さと向き合って食べる食べる食べる。まるで発掘作業のようだ。


 3分の2ほどの量を食べ進めたところで、ズシリと腹部に重しをつけたような感覚に襲われる。しかし残すなどもってのほかだ。出されたものは食べきらなければならない。


「ふぅーっ……!」


 水を飲み、一息をつきながら、まだ行けるのだと自分に暗示をかける。

 さぁラストスパートといこう。






「「ご馳走様でした……!」」


 何とか2人して完食をして店をでる。


「…………」

「…………」


 しばらく無言で歩き続け、人通りが少なくなったところで共に腰掛ける。


「…………いやー……」

「…………あー……」


「「食べすぎた〜」」


 そうやって2人で笑いあった。


「美味しかった! 本当に美味かった! これは本当!」

「わかる。しっかり美味かった。その上で量が凄かったな〜」

「喋る余裕全然なかった」

「少しでも時間置いてしまったらそれだけで無料になりそうだったわ」


 各々に感想を述べ合う。

 言いたいことは大体一緒であり、大変美味しく満足させて頂いたということと、もう少しお腹に余裕がある状態で来ればよかったということだった。


 今度来る時はもっとちゃんと腹を空かして来店しよう。

 そう2人で誓い合った夜だった。

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