軍鶏の親子丼
「
私はとある看板を見つけ立ち止まる。
軍鶏というとなんだかこう……茶色の鶏だったような……。たしか肉が硬いとか聞いたことがあった。
事実看板には軍鶏を使用しているので歯ごたえがありますと堂々と描かれている。
「軍鶏か……食べたことはなかったな」
時刻はちょうど昼時だ。
特に昼飯は決めていないためここにするとしよう。
「いらっしゃいませ」
「1名大丈夫ですか」
「お好きな席にどうぞ」
店内は民家のような雰囲気であり、ご夫婦で経営しているようだ。
メニューは壁や立てかけられたブラックボードに書かれており、やはり目立つ上には親子丼と書かれている。
「親子丼お願いします」
私は注文をして席へと着く。
静かな雰囲気の中、女将さんが常連客らしき人と楽しそうに談笑をしている。
地元に愛されている店というのはこんな感じだろうか。隠れた名店といったやつだな。
「お待たせいたしました」
そんなこんなで私の元に親子丼が到着した。
見た目は普通の親子丼だが……いや、少し肉が小ぶりのような?
まぁそれは店によるか。
それよりも個人的に意外と思ったのは一緒に来た味噌汁だ。
中にはわかめや豆腐ではなく、おそらくもずくが入っている。この店特有か……それとも私が知らないだけで結構一般的なんだろうか?
何はともあれいただくとしよう。
「いただきます」
美味い……というかなるほどと言った感じだな。
たしかに歯ごたえは通常の鶏肉よりも強く感じる。柔らかいズリといった印象だ。
この歯ごたえで普通の大きさの鶏肉ならば顎が疲れるかもしれない。小さいお子様やご年配の方々の場合ならなおさらだろう。
地域の人々と一緒にやってきた経験からだろうか。この店の計らいなのかもしれないな。
味も普遍的に美味しい。普通の親子丼でありながら、新鮮な食感の肉を楽しめる。
このもずくの味噌汁も不思議な感じだ。
私がこれまで飲んできた味噌汁は海藻といえばまずワカメであったため食感がこれまでと違い、これもまた新鮮な形で楽しむことが出来るな。
「ご馳走様でした」
歯ごたえのある軍鶏の肉を使った親子丼に、もずくの入った味噌汁……。
なんだか色々と新鮮な昼食を終えた私はそのまま会計を済ませ店を出る。
食事をする度、新しい店に入る度に思うことだが、やはりまだまだ知らないものが沢山あるのだと感じる。
これは私の食事において大きく楽しみにしている要因の一つなのだ。
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