新幹線内での駅弁
これは、こだまだかのぞみだか忘れてしまったがその新幹線内で起きた
私は駅弁というものに小さな頃から謎の憧れがあり、新幹線に乗る時は大抵買って新幹線内で食べることを楽しみにしている。
この日も出発前に駅弁のコーナーへと趣き、人混みの中吟味する。
海鮮弁当やハンバーグ弁当、チラシ寿司等々……各種様々な弁当が並んでおりどうにも目移りをしてしまう。
そんな中私が選んだのは牛タン弁当であった。
これを選んだのは美味しそうだったり牛タンが好みというのが当然一番の理由なのだが、他にもそこについてある紐を引っ張ることで弁当内部が温まるという仕組みが施されているためだ。
私は弁当は冷えていてもいい、というより普通は冷えていてもそれを楽しむものであると認識しているが、このような仕組みがあるならそれはそれで使ってみたい。これはそういうものなのだ。
新幹線に乗車し、席に座る。
これは持論だがやはり駅弁は走行中に食べるのに限るのではないのだろうか。
いかにも旅をしている感じというか、駅弁を食べている実感がゆうに湧く。移動をしているのに食事をするという少し非日常からなるものが理由かもしれないが。
とにもかくにも、私は発車の時間まで忙しなく席で待ち、その時は訪れる。
走り始めて数十分程景色を楽しみながら私の中での頃合いがつき、待ち焦がれた弁当の中身と対面することを決意した。
蓋を開けると茶色い牛タンが米の上に並べられており、食欲を唆る。隅にあるのは辛味噌かな。
私はすぐさまに底の紐を引っ張り、弁当を加熱する。
…………もう少し思慮深く考えるべきだったと今でも思う。
引っ張ってから数分後。
弁当のそこから加熱されて言っているのが見てわかるようになった。
そう、湯気である。
かなり加熱されているようで、白く熱い煙が私の顔にあたる。
私の顔にあたるということは周囲にも少なかれど影響はあると思われ……私は焦るようにその湯気を何とか止めることが出来ないかと底を触るが……
「あっつ……!」
本当にかなり熱い。
しっかりと弁当の中は温められていき、湯気と同時に牛タンの美味しそうな匂いが広がっていく。
逃げ道のない新幹線の車内にだ。
本当にやってしまったと頭を抱えたい気持ちでいっぱいだった。
周囲からの視線があるのかも確認することすら怖い。
私は温かくなった牛タン弁当に箸を伸ばす。
美味しい……美味しいのだが私の胸中はいたたまれない気持ちでいっぱいであった…………。
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