酸味が効いたオムライス
友人と食べ歩きをしていた日の事。
昼食をどこで済ませるかということとなり、スマホで調べたところ近くに人気のオムライス専門店があるそうなのでそこへと向かう。
「おぉ……並んでる」
住宅地の一角に入り、いかにも民家のような場所。
その路地裏へと続く道に行列ができていた。
並んでみるか……と列の最後尾へ行こうとしたところ友人がある看板を目にして引き止める。
「これで待てるんじゃない?」
そこにはLI〇EのQRコードが描かれており、どうにもこれで待ち時間や順番を確認できるそうだった。
「……はぁ〜文明が発達してるなぁ」
このような日進月歩の躍進を見ると自分が置いていかれたような気分になる。
自分が全然進歩していないようなそんな感じ。
私は感心とちょっとした劣等感のようなものを覚えながらQRコードを読み取っていく。
かなり待ち時間は長かった。
その待ち時間の間私達は周囲を
この彷徨きは私の進歩となりえるのだろうか……。なんて。
「そろそろかな」
大体1時間位だろうか。
そろそろ私達の番であるため店へと戻る。
私達の順番となり、店へと入る。
中は小洒落たカフェの様な内装だった。古民家カフェ(?)のような雰囲気を思わせる。The洋食って感じだ。
映えとかするんだろうな……。私達はSNSをあまりやっていないのでそういうのには疎いのだが。
ま、それはさておきメニューだメニュー。
何にしようかなんてことを話しながら友と眺める。
オリジナルオムライスがずらずらと書かれておりそれはそれは目移りしてしょうがない。
味の予想がつくものや全く予想がつかないもの……本当に何を食べたらいいのか皆目検討もつかない。
……うん。こういう時はオススメだ。大人しく店に従おう。このレモンバターオムライス。正直全く予想がつかないが。
友人もどうやら決めたらしく店員さんを呼ぶ。
「レモンバターのオムライスと……」
「自分は卵かけ醤油オムライス」
友人は友人で美味しそうなものを注文していた。
オムライスに卵かけか……。そりゃあ合うだろうな。レモンバターってどうなんだろ……。
そんなことを話しながら私達は今か今かと待っていた。
「お待たせいたしました」
きたきた。
私達の目の前にオムライスが運ばれてくる。
その様相は家で作られるような楕円形ではなく、山を想起させるような盛られ方をしており、いかにも映えそうなオムライスであった。
私のものはレモンがバランスよくオムライスに乗せられ綺麗に盛り付けられている。友人の方もオムライスの山頂にドンとオレンジに輝く卵黄が鎮座してあり、散られた刻み海苔がいいバランスだった。
そして私は1つの問題に気づく。
……これどうやって食べるんだ?
いや、オムライスの食べ方がわからないわけじゃない。
スプーンですくうのだ。それはわかる。
だがこのレモンをどう扱えばいいのかが皆目見当がつかない。
「いただきまーす」
あーっこいつ。私が悩んでいるというのに。
私の前で友人が手を合わせオムライスに手をかける。
卵黄を割りながらオムライスの山を等分して頬張っていく。
あークッソ。わかりやすくていいな……!
ええい、なるようになれだ。
「いただきます」
私はとりあえずオムライスを口にする。
うん。美味しい。
そしてこのレモンを齧ってみよう。これはテキーラを飲んだ後、レモンを齧るというやり方から着想を得たのだ。
……酸っぱい。
やはりレモンの味が強くなってしまう。
うーん、これで合っているんだろうか……。
そんな事を思いながら私は今度はオムライスとレモンを同時に手をつける。
!?
美味い……!
なんというか、美味さというか味が際立っている!
そうか……。さっきレモンで酸味を感じた分、卵の味が際立つのか。
それに気づいた私はこれで食べ方は合っているのかわからないが、レモンの酸味を楽しみつつオムライスの味を味わっていく。
とにもかくにも美味しければそれでいいのだ。
途中で少しオムライスを取り分けて、友人と互いにシェアしてみる。
うん。わかりやすく友人の方のオムライスも美味しいな。
というか普通にオムライスに卵かけ醤油をして美味しくならないわけもないか。
少し和風テイストのようであり洋風でもある。そんなオムライスだった。
「「ご馳走様でした」」
私達は手を合わせ店を出る。
少し遅めの昼飯となったが満足だ。
……しかし、SNSをやっていたら映えとかできたのかな。
味もさることながら見た目が実に綺麗なオムライスだった。
こういうのをなんて言うんだろう……女子力?
…………多分違うな。
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