引く程のニンニクラーメン
私には以前から気になっている店が……否、気になっているメニューがあった。
ニンニク料理専門店。そしてそのラーメンである。
これまでの話を読んでくださった方には、お察しの方もいくらかいるかと思うが、私はラーメンはかなり好きな部類に位置するものであり、そしてニンニクも同様にかなり好きな食べ物である。
そんな私がこの店が気になるのは当然のことであった。
とはいえ私も恥知らずというわけではない。翌日が平日でそんなガッツリとニンニクを食べるといった愚行は犯しはしない。
しかし、この日の翌日は休日であり人と会う予定も無い。つまるところ気兼ねなくこの店のラーメンを余すことなく楽しむことが出来るのだ。
「いらっしゃいませ」
ドアを開けるとすぐ横に食券機が置かれてある。
食券機を扱うラーメン屋は大抵こんな感じに置かれているような気がする。
まずこの店の名物はニンニクラーメンだそうだ。だが私はその隣の揚げニンニクをさらにふんだんに使用したエネルギーラーメンというものに目がいっていた。
通常のニンニクラーメンよりもさらにニンニクが入ったラーメン……私はなんのためにこの店に来たのか、ラーメンを、ニンニクを食すためにきたのだ。なれば臆することは無い。迷いのない私の手はそのエネルギーラーメンのボタンへと向かっていった。
カウンターに座り、目の前の小さな仕切りを上げ、食券を渡す。
この店はどうやら有名な某半個室ラーメンのチェーン店のような感じで、客と客との間に仕切りはないが厨房と客席との間には仕切りがあり、店員の目が気にならないようになっている。
そして来た時には気づかなかったが、目の前にはQRコードが置いてあり、読み込んでみると替え玉などの注文がスマホからできるようだ。
…………ハイテクな世の中になってきたものだなぁ……。
「お待たせしました」
目の前の仕切りがあげられエネルギーラーメンが客側へと到来する。
「おぉぉ……っ」
注文しておいて大変失礼な話なのだがそのラーメンの上にはちょっと引いてしまう程の揚げニンニクが乗せられたラーメンがそこにはあった。
鼻が若干麻痺してしまったのかわからないが案外ニンニクの香りはしない……実は結構してるかも。
具は揚げニンニクの他にはネギと海苔とチャーシューであり、そこは家系ラーメンに近しいものを感じる。
「いただきます」
おぉ……美味い……。
スープはニンニクが結構効いているものかと思っていたが、かなり口溶けの良い味付けになっており、それによって同時に麺をすすりやすくなっている。
チャーシューは結構ホロホロとしており、口に入れると噛み切ることが用意だ。
たしかにニンニクの風味はある。しかし思っていた以上ではなく結構食べ進めやすい。
となると……やはりこれか。
ニンニクすり潰し機。…………とでもいったらいいのだろうか?
生ニンニクをすり潰しそれをラーメンへと投下する。目の前にもそれはお好みでどうぞと書いてある。
せっかくニンニクの専門店に来たんだ。遠慮なくさせて頂こう。
あー、これだこれ。
少しの辛さが混じったニンニクの香りと味が、スープや麺と共に私の口内へ飛来する。
なんというかこう……ニンニクだなぁ……とそんな気分になる。
当然揚げニンニクも齧っていき、かじる度に美味さとほんの少しの口内や腹部への不安感を覚えることになるが、止めることなく口を進めてしまう。
私は流れるように目の前のQRを読み取って替え玉を注文し、おかわりをすることでそのニンニクたっぷりのスープと揚げニンニクを余すことなく食すことを覚悟した。
「ご馳走様でした」
手を合わせ店を出る。
正直なところ自分が今臭いという実感は無い。臭いというものは自分では気づきにくいものだから。
しかしまぁ少なくとも、私の口臭は凄いことにはなっていると思う。明日が休日で本当に良かった。
そうやってゆっくりと帰宅した私はブレスケアを通常の2倍ほど口の中に放り込みゆっくりと喉に通した。
……胃の中がスースーする。こればっかりはニンニク料理を食べた者は基本避けられない末路だな……。
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