白いラーメン
寒空の下で待つこと約30分。
ダクトから香るラーメンの匂いに私の空腹は刺激され続けていた。
ここは交差点に沿って構えられているラーメン屋。
地元でかなり有名な店であり、昼も夜も長蛇の列が並んでいる。
私もその中の1人だ。
交差点に沿って店が構えられているため列はくねくねと曲がり、店の横で私は並んでいた。
スマホを弄りながら今か今かと待つ。
列に並んでいる人達は友達連れやカップルと思わしき人達が多い。
有名店にはよく見られる現象で、そのような人々に1人きりでいながら待っていると少しだけ恥ずかしい……ような(?)気分になったりもする。
否、別に悪いことなどしていない。純粋にラーメンを楽しみにきただけなのだ。気負うことなど何も無いし、周りの人々も私になど興味もないだろう。
私はこうやって並んでいる時はいつもそう考え気持ちを切り替えている。
「何名様でしょうか」
店の中から店員さんが出てきて人数を確認してくる。
「1名です」
「こちらの方でお並びください」
そう言って店の前まで誘導される。
なるほど。出入り口を塞いでしまうから、先頭数名はこっちで並ぶのか。
そのまま少しすると、再び店員さんがやってきて。
「食券の方、先にお願いします」
そう促される。
食券を先に買い、店員さんに渡しておくことでタイムロスを無くすやり方だ。
長蛇の列が並ぶ店では割とよくある。
私は一度店内に入り食券機の前に立つ。
この店の名物は鶏白湯ラーメン。食べるのはそれと決めていた。
が、せっかくだ。普通の鶏白湯ラーメンよりもさらにレアチャーシューが多く乗った特製の方を頼ませて頂こう。
私は特製鶏白湯ラーメンの食券を買い、店員さんに渡し再び外で待つ。
余談だが、私は初めて来る店では、変に冒険はせずにその店のオススメを大人しく食べるというのが私のスタンスだ。冒険や気になるものがあるのなら2回目以降に食べればいい。オススメというのは店側が自身を持っている証拠なのだからそれが口に合えば自然と足をもう一度運ぶようになるからだ。
だがしかし、トッピングが増量するだけの場合は話が別だ。空腹具合と相談しながら注文する。今回はそのパターンに該当した。
「1名様どうぞ」
ドアが開き、私は店に案内される。
店内は正直言って広いとは言い難い。カウンター席のみであり、その数も多くない。
まぁラーメン屋はこのような店も少なくない。それが評価を下げるポイントになどなりはしない。問題は味だ。
問題は味。と言ったが正直失敗することは無いだろうと確信していた。
何故なら待っている間のダクトから香る強烈な鶏白湯の匂い。あれだけで私は腹を刺激されていたのだから。
「お待たせしました」
目の前の厨房から私の前へとラーメンが出される。
これを待っていた。
スープが白い。本当に真っ白だ。
ドロっとはしていないが、かと言って普通のラーメンのようにわかりやすいスープという感じでもない。どこか泡っぽいような?
そしてその雲海のようなスープの上にあるのは綺麗なピンク色のレアチャーシュー、半熟卵、そして玉ねぎ。
麺は見えないがこの雲海の下だろう。
では……
「いただきます」
箸を潜らせ麺を見つける。黄色いな。生き生きとしている麺だ。
私はそのまま口へと運んだ。
うん! やはり美味い!
麺がよくスープと絡んで抜群の一体感を醸し出している!
まろやかな口どけと言うべきだろうか。食べれば食べるほどもっと食べたいと思わせてくる。
レアチャーシューと半熟卵もいいな。これのおかげで麺をすすり、肉を、卵を食べるというサイクルが作られている。
そしてこの玉ねぎ! これがいいアクセントとなっている。
どうしても麺、肉、卵と柔らかいもののなかに燦然と輝くシャキシャキした歯ごたえ。これによって飽きを感じさせない。
私は一心不乱にそのラーメンを食べ続けた。
「ご馳走様でした」
麺や具材は当然のこと、スープも飲み干し完全に平らげる。
スープはまろやかな口当たりが相まって苦もなく飲むことが出来た。
店を出て、自転車に乗り私は1人ただ呟く。
「美味かったぁ〜…………」
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