第27話:決勝トーナメント(セミファイナル)会場入り

🎤📍【セミファイナル当日・控室前 廊下】

全国ティーンズバンドフェス――

ついに、決勝トーナメント当日。

舞依たち「REJECT CODE」、琴音たち「LayerZero」も会場入りしていた。

会場には、各地から選ばれた精鋭バンドたちが続々と集まり、独特の緊張と高揚感に包まれていた。


その一角で、同じ高校に通う2人の少女が再会する。

「――久しぶり。」

舞依が静かに、けれどどこか嬉しそうに声をかける。

「ヤッホー! 舞依、夏合宿以来ね!」

琴音は、いつもの明るさで返しながら、ぐっと拳を差し出した。

舞依もそれを見て、ふっと微笑む。

「いよいよね。……絶対、グランドファイナルに行こう。」

「うん、また同じステージで会おうね!」

ふたりはガッチリと拳を合わせる。その瞬間だけ、戦いを忘れた“信頼”が交差した。


🤝🎸【メンバー同士の再会】

他のメンバーたちも夏合宿以来の再開に喜びを爆発させていた。

穂奈美 × 拓人

「たっくん元気だった? 私のこと、覚えてる?」

「もちろん! 『REJECT CODE』の元気っ娘、穂奈美ちゃんでしょ! 忘れるわけない!」

「お〜、ちゃんと覚えてくれてたんだ!えらいえらい!」

「いやいや、呼び方が照れるけど……でも、そんなふうに言ってもらえるなら、むしろ光栄だよ」

「そのノリ、嫌いじゃないよ! じゃあ、またステージで会おう、たっくん♪」

「よし、グランドファイナルで再会だね、穂奈美ちゃん!」


千紘 × 香澄

「香澄ちゃん、久しぶりね」

「千紘さんも変わらずお元気そうで何よりです」

「そんな堅いのやめましょ♪ ねぇ、今度のコミケで同人誌出す予定があって。

“音楽とプログラミングの融合”ってテーマの漫画なんだけど、相談のってくれる?」

「それ、興味あります! いっそ共同制作にしません? バンド活動の経験、全部込めて」

「それ、最高かも。今度、校外のカフェで作戦会議しましょっか♪」


彩 × 理央

「ねぇ理央くん。この間、私が“デートしよう”って言ったの、覚えてる?」

「……は、はいっ! 返事が遅れてすみません。でも、その……ちゃんと心の準備してから返そうって……」

「うふふ。そういうところ、誠実で好きよ♡」

「す、すきって、それは……“どの”好き、ですかっ!?」

「ふふ……それは、決勝トーナメントの結果次第、かな♡」


萌絵 × 瑞穂 & 悠真

「お久しぶりです。瑞穂さん、悠真さん」

瑞穂は穏やかに微笑んだ。

「萌絵さん、久しぶりね。相変わらず落ち着いてて素敵」

「いえ、内心は……緊張でいっぱいです。でも、それでも“音”で届けたいと思っています」

悠真が真剣な眼差しで言う。

「“REJECT CODE”って、本当に個性的なメンバーのバンドだよね。そのせいかな?曲が“生きてる”って感じがする」


萌絵が礼儀正しく頭を下げる。


「ありがとうございます。“LayerZero”も、感性と技術の融合で完成度が高い。……部活の領域を越えてるって、正直思ってます」


瑞穂が、前を見据えて語る。

「お互い、行きましょう。グランドファイナルに。

 部室で育った音を、全国に響かせるために――」


萌絵は微笑みながら、静かに答えた。

「はい。“今”の私たちで、全力で挑みます」


🎤📍【セミファイナル当日・ROUGE NEON 控室】

舞依は深く息を吸い、ノックの音と共に扉を開いた。

そこは、ROUGE NEONの控室――鮮やかな照明と、きらびやかな衣装ラックが並ぶ一室。

その空気は、まるでライブステージの予感そのものだった。


「お久しぶりです、七海さん。あのイベント以来ですね」


舞依が一歩足を踏み入れると、奥から七海が手を振りながら歩み寄ってきた。


「おお〜、舞依ちゃんじゃ〜ん♪ 元気しとったぁ?

あのときの“REJECT CODE”、ほんっっっっっとに圧巻やったがね〜〜!

ウチら、終わってから『ど〜する〜!? あれ、超えなかんくない!?』って、めっちゃ盛り上がっとったんだわ〜!」


舞依は静かに頭を下げながらも、瞳には挑む者としての覚悟を込めた。


「そんな……ROUGE NEONのパフォーマンス、あれは“脅威”でした。

でも、今回は――負けません」


その言葉に、七海は微笑を深めると腰に手をあてて力強く言った。


「ほ〜ほ〜、言うじゃ〜ん♪

でもな、ウチらかて全力でやっとるんだで、そんな簡単に勝たせへんよ?

名古屋魂、なめたらいかんでねっ!」


その瞬間――控室に静かな気配を感じる。

控室の中を覗き込むと、ROUGE NEONの他のメンバーたちが、舞依の姿に気づき、五つの視線が静かに舞依を迎え入れてくれていた。


ギターを抱えたルカ。クールなまなざしと、何かを測るような眼差し。

“冷たく燃える”という言葉が、彼女の一瞬のまなざしに宿っていた。


キーボードのミサは、譜面と機材に向かっていた手を止め、微笑んで一礼する。

その佇まいは静かだが、その背後には光と音の魔術が潜んでいるように感じた。


ひよりはドラムスティックを指に回しながら軽くウィンクし、明るく親しみやすい雰囲気を送ってくる。

だが、その笑顔の奥にも、戦場に挑むドラマーの芯が確かにあった。


そして、ベースを構えていたれいなが、ゆっくりと視線を合わせた。

一切の無駄を省いたような静かな動きと、少しの余裕を感じさせる表情。

その視線に、“静けさこそ最も挑発的”だという説得力があった。


舞依は、ふと気づいた。

――このバンドは、**「視線」**で音楽を伝えてくる。


それはまるで、言葉を超えた“視覚での対話”だった。


七海が微笑んで一歩近づき、改めて言う。


「うちら、見せることに全力投球しとるバンドやけどさ~、舞依ちゃんたちの“音の強さ”は、ちゃんと見とるでね!」


舞依は静かにうなずいた。


「……だからこそ、ぶつかりたい。

真正面から、ROUGE NEONの“華と光”に――私たちは“月の光”で、挑みます」


七海が少し口元を上げ、声のトーンを落とした。


「……ほんなら、ステージで待っとるで。あんたらの“ガチ”、見せてちょうよ!」


そして舞依が控室を出る直前――

ROUGE NEONの五人が、一斉に立ち上がり、揃って舞依の背中を見送った。


敵意でも、牽制でもない。

それはただの“沈黙”。けれど、そこに込められた意味は――**「待っている」**という、静かなるメッセージだった。


舞依はその気配を背に感じながら、そっと手を握り締めた。


「……来いって言ってる。なら、行くしかないじゃない」


一方その頃。控室でヘッドフォンを外した琴音が、ふと空を見上げるようにして呟いた。


「……舞依、今、どんな音を鳴らそうとしてるんだろう」


瑞穂が静かに隣から言葉を重ねた。


「きっと――“本気”の音だよ。だから、私たちも全力でぶつかろう」


“静”と“光”。

“感情”と“魅せる力”。


それぞれのバンドが、それぞれの武器で挑む――決勝トーナメントが、今、開幕する。

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