初体験

「んっ……どうだった?君の、初体験は?」


「はぁ……はぁ……はぁ……最高、だったでしゅ」


「ハハハ。それならよかった」


 広いベッド。噎せ返るような熱気。ジメっとした湿気。

 そんな寝室のベッドに全裸で寝っ転がっている僕は自分と同じく全裸で寝っ転がっている少女───レーヌのささやかなおっぱいを撫でながら彼女に笑みを向ける。


「君にとって最高の思い出になったようで何よりだよ……それで?君は何を買っていく?」


「……ぇあ?」


「ハハっ。今更何か物を貰っても物足りないかもしれないけど……一応、商売なんだ。物も売らせてよ。そうだね。さっき脱ぎ捨てた僕のパンツなんていかが?」


 僕は適当に脱ぎ捨てたパンツを拾いあげながら


「んー?君のお財布の中には金貨が一枚入っていたけど……あれが、君の予算であっているかな?」


「えぁ……そ、そう、です」


「それじゃあ、金貨一枚で売ってあげるけど……買う?いや、というか普通に金貨一枚は君にとって高すぎるか」


「い、いえ!?そ、そんなことは……ッ!」


「ハハハ、無理しなくていいよ。パンツ一個金貨五枚で売っているけど……あれなんて貴族用の値段だからね。君用に売るならもっと安い方がいいよね」


「そ、そんなことは……」


「君のポケットの中に入っていた銅貨三枚でいいよ」


「へぁ!?そ、そんなわけには……ッ!」


「別に良いよ。僕はお金に困っていないしね」


 申し訳ないとばかりに口を開くレーヌの言葉を切り捨て、僕はベッドから這い上がる。


「さぁ、シャワー浴びに行こうか。ベタベタのままで帰れないでしょう?」


「は、はひっ」


 そして、そのまま僕はレーヌの手を引いて一緒にシャワールームへと向かうのだった。


 ■■■■■


「あ、ありがとうございました……ッ!」


「はーい。またの来店をお待ちしています」


 二人でシャワーを浴び、そこでもついでにもう一回戦して。

 実に充実した時間を過ごした後に僕は店を後にするレーヌを見送る。


「君もお疲れ様。もう大丈夫」


 そして、一人になったお店の中で僕は自分の代わりに店番をしてくれていた魔道具を片付ける。


「売り上げは金貨五十枚……相変わらず売れすぎなようで。もう僕の私物は売り切れだよ……うーん。また、サインでも買こうかなぁ。せっかく来てくれたのに何も買えなかったというお客さんも多いからなぁ。優先権は色々と大変なことになったし……売り物にできそうなのがサインくらいよなぁ」


 そして、自分がお楽しみタイムを過ごしていた時間の売り上げを確認し、お店の方針についての思案を始める。

 

「いや、まぁ……別にいいかぁ。面倒だし」


 そして、結局のところ何もしなくていいかという結論に至り、物を片していく。


「んっ?」

 

 なんてことをしていた中で、既に閉店していたはずの店の扉が開かれる。


「もう既に閉店して……って、あぁ、何だ。リーシアか」


 扉を開けて店に入ってきたのは一人の少女。

 自分の幼馴染でもあるリーシアだった。


「先ほど、ずいぶんと艶やかな少女が店から出ていったわ……ずいぶんと儲かっているようね?」


「おかげさまでぇ」


 その特徴的なツリ目をジト目に変え、こちらへと皮肉を告げるリーシアに対し、僕は実に呑気な様子で口を開くのだった。

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