No.015 別れ道 side-ハナ

 1節 理由


 私は音楽が好き。もちろん、END MEMORIESも。

 でも辞めなければならなかった。これは、母の命令だ。

 私は15歳の中学三年生。そして今は7月。

 受験を考えなければいけない。

 正直頭がいい高校に行きたい訳ではない。そこまでその欲求がない。その辺の治安悪すぎなくて通いやすい高校に入れればいいんだけど、母はそれを許さない。頭のいい高校に行かせたいらしい。

 バンドを始めるまでの成績は学年で10位以内ぐらいだった。でも零ちゃんたちのバンドに入ってからはギター弾いてばっかだったから、いつの間にか30位くらいまで落ち込んでいた。それでも一応全体の半分より上ではあるけど、見かねた母はバンドを脱退するように命令した。

 逃げ出せるものなら逃げ出したい。みんなとバンドを続けたい。



 2節 先例


 母が行かせたい学校の偏差値は61。県でも上位に入る進学校だ。自称だけど。

 無理に頭がいい学校に通ってもろくでもないことになることを私は知っている。

 零ちゃんがそうだった。零ちゃんは私の母が入れさせたい高校と同じ高校に入っていたらしい。でも、1年生のうちに自主退学した。勉強が難しすぎたって。零ちゃんも中学生の時はけっこう頭がいい方な子だったらしい。だから行きたかった高校より20も偏差値が高い高校に行かされることになって、案の定追いつけなくなった。「無理を言ってでも入学しなければよかった」「入学金を納付した時からもう後戻りできなくなった」ってすごく後悔してた。

 零ちゃんは、家族からよく「後悔先立たずだから、よく考えて行動しなさい」って言われてるらしい。「その言葉の意味を人生歯車が狂った辺りで知ったよ」って、自嘲気味に言ってた。

 零ちゃんは高校でバンド、つまり軽音楽をやりたかったらしい。でも、その高校に軽音部はない。だからそもそも候補から外していたんだとか。その時はまだ祐樹くんにバンドを組もうって言われてなかったから、高校の軽音部でバンドをしたいって考えてたらしい。

大学でもできる」「学校外で組めばいい」って言われて志望校を変えられた当時の零ちゃんは、相当に腹が立ったって言ってた。そして今でも、その言葉を、その言葉を言った家族を許していない。


 ——————————


 私がベットでふて寝している間に、いつの間にかEND MEMORIESのグループチャットには通知が溜まっていた。一件だけだけど。

〈二の舞にならないでね〉

 とだけ。



 3節 知らない


 私は将来の夢がない。子供の頃は『パティシエになりたい!』とか言ってたけど、それもまたいつの間にか消えていた。多分みんなそういうものだけど。直向ひたむきに夢や目標を追っている人はかっこいい。それは本当に強く思う。でも私はかっこいい人じゃない。今まさに、また目標を捻じ曲げようとしている。

 両親に言ったところで、また何か改善するのか?と聞かれたら、正直答えはNOな気がする。だって順位が下がったからってバンドを辞めさせるような人たちだし。

 私をバンドから抜けさせた時点で、あの人たちは私の中で信頼できる人からただの敵に変わった。私が行きたい進路を無視して行きたくない高校に行かせようとして、挙句バンドを辞めさせたんだから、仕方ない。

 1人で生きていけるような力を着けるしかない。

 折角信頼できるバンドメンバーがいるんだから、みんなに色々聞いていこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る