第4話

 次の日、ついに高校の授業が始まった。

 

 授業は、軽い中学の復習と簡単な導入だったから助かった。

 

「紗波さん、また明日。」

 

「お疲れ、右見瀬くん。」

 

 今日も彼はギリギリに登校して来た。

 

「またベンチで読書してたのかな」と、思ったけど、特に聞くこともなく一日が過ぎた。

 

 思ったより話しやすくて良かった。


 朝の出来事を思い出していると、ひながやってきた。


「せなちゃんお疲れ〜」

 

「ひなもお疲れ。」

 

「ね!せなちゃんは入る部活決めた?」

 

 ひなは、SHRで配られた部活動紹介の紙をパタパタとさせながら言った。

 

「私は、そのままバスケを続けるよ。」

 

「やっぱり、そうだよね〜」

 

 ひなが納得したように頷く。

 

「ひなは決まってるの?」

 

「ううん、まだ全然。」

 

「バスケに入らない?」

 

「ひなは、せなちゃんみたいに背高くないよ?」

 

「身長が高くなくてもできるよ。」

 

「んー、でも、普通に球技が怖いからいいかな。」

 

 バスケ部にひなを誘ってみたけど、キッパリ断られてしまった。

 

「せなちゃんは今日から部活?」

 

「いや、今週は高入生の人たちとの折り合いをつけるとかで、参加出来ないんだよね。」


「そうなんだ!じゃあさ、ひなと一緒に色んな部活見に行かない……?」

 

 ひなは、遠慮がちにそう言った。

 

「いいよ。一緒に行こうか。」

 

「やった!!最初は手芸部から行こー!」

 

 ひながぱっと笑顔になって、私もつられて歩き出した。


 部活見学は手芸部に始まり、演劇部、吹奏楽部、放送部、ボードゲーム部、プラモデル制作部など色々回った。

 

「私立だから、こんなに多いのかな。」


 私は天井を仰ぎ、あまりもの部活動の量に圧倒された。

 

 そういえば、右見瀬くんって何部に入るんだろう?

 

 ふと、そんな疑問が浮かんだ。

 

 運動部?


 いや、運動部は朝練あるから考えにくい。

 

 じゃあ、文化部?


 将棋とかオセロとか強そうだけど、何かちがう。

 

 やっぱ、帰宅部?それとも……


 

 ――――「おーい、せなちゃん?」

 

「!」


 私はひなに呼ばれていた。

 

「やっと気づいた。もう終わったよ?」

 

「あ、そう……。」

 

「何かあった?」

 

「いや、ちょっとボーッとしてただけ。」

 

「そっか、もう十分に見学できたしそろそろ帰る?」

 

「そうだね。」


 右見瀬くんの部活なんて、わかるわけがない。


 まぁ、そのうち教えてもらえばいいか。


 右見瀬くんのことを後回しにして、私はひなと一緒に下校した。

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