第3話
その後の予定通り入学式行われ、無事終了した。
校長先生や生徒会長の挨拶とかいろいろな話があったけど、何ひとつ内容を覚えていない。
なんとか教室に戻るまでには頭が冷え、私は冷静になった。
改めて隣の席に座る青年に目を向けた。
この人どこかで……。
青みがかった髪、中性的でやわらかい顔立ち、白くてきれいな肌。
私はテラスに腰かけていた青年を思い出した。
記憶内の彼と目の前にいる彼を比べていると、不意に目が合った。
「そんなにじっと見られたら、恥ずかしいな。」
彼は頭を軽く傾げて、戸惑いが混じった表情をしていた。
「あ、ごめん……」
私はボーっと見つめ続けてしまった。
じろじろと見つめてしまった申し訳なさから次の言葉に詰まっていると、教室前方の扉が開いた。
「おはよう、諸君!」
髪を腰まで伸ばし、ビシッとスーツを着こなした女性が現れ、教壇に登った。
「私はこのクラスの担任の
先生は淡々と自己紹介をした。
厳しい先生なのかな。
クラスの雰囲気が悪くなった気がする。
この空気を感じ取ったのか、先生は教卓に手をつきクラス中を見渡した。
「お前たちにひとつ言っておかなければならないことがある。」
先生の一言に私を含め、みんなが身構えた。
「私の魅力に惚れるなよ。」
先生はわざとらしくイイ声を作り、左目を閉じてウィンクをした。
その行動はクラス全員の呆気に取った。
「ふむ、これがギャップ萌えか……。ありだな。」
先生がぶつぶつとつぶやいていた。
だけど、先生の一言でクラスのどこか堅かった空気が和らいだ。
「よし、じゃあ隣と自己紹介してみろ。」
先生の話が終わり、教室が一気にざわつき始めた。
隣の彼をそっと覗くと、どこか余裕のある笑みを浮かべていた。
寝てたことでもからかわれるかな。
私が憂鬱な気分になったところで、彼が私の方に体を傾けた。
「面白い先生だね。」
「え?」
「どうしたの?」
「い、いやなんでもない。」
「そう?」
てっきり、寝てたことをいじられると思っていたから彼の言葉は予想外だった。
気にしすぎか。
身体の緊張が解けると、彼への興味が湧いてきた。
「名前、聞いていい?」
彼に名前を聞いた。
「僕の名前は
彼も同じように私の名前を聞いた。
「私は
私が名前を言うと、彼はほんの一瞬目を伏せた。
目を伏せている間の静寂の中では、より意識が彼に集中した。
そして彼は視線を上げ、私と目を合わせた。
「これからよろしく、紗波さん。」
気づけば、私の中から不安が消えていた。
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