第6話《おともだちをつくろう》

土曜の朝、古びたテレビから流れたのは、見たことのない子供向け番組だった。


タイトルは『おともだちをつくろう』。


オープニング曲は、やたらとテンポが遅い。

画面には、のっぺりとした着ぐるみたちが並んで手を振っている。


黄色いクマ、赤いネズミ、緑色のウサギ。

どれもどこか、形がおかしい。

顔がゆがんでいたり、腕が妙に長かったり。


司会は、真っ白な顔をした「せんせい」と呼ばれる人物だった。

白いスーツに、白い手袋。

目だけが、妙にぎょろぎょろと動いている。


せんせいは、にっこり笑った。


「さあ、きょうは だれを おともだちに するのかな?」


スタジオに、子供たちが座らされていた。

顔はぼやけていて、誰も喋らない。

ただ、微動だにせず、せんせいを見つめている。


番組が進むと、黄色いクマが子供たちの中から一人を指差した。

小さな女の子だった。


せんせいが、彼女に近づく。


「おともだちに なるひとー?」


女の子は、かすかに首を振った。

──その瞬間、スタジオの空気が変わった。


背景の壁紙が、バリバリと音を立ててひび割れた。

緑色のウサギが、妙に伸びた手で、女の子の腕を掴んだ。

引きずられる女の子。


カメラがぐにゃりと歪み、映像が乱れる。


断続的に聞こえる女の子の叫び声。

それをかき消すように、せんせいの明るい声が響いた。


「よかったねえ、おともだちが ふえたよ!」



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