第4話 “私”のご主人様は私の夫②

『WK-001 SN00003*』と初めて会ったのはそれから半年後の事。


『20歳になった時の私』を想定して作られたは、お母様に良く似ていて、私やお母様と同じ様に笑うとエクボができた。

 私はもうたまらなくなって……

 “私”にお願いしてベッドの上で抱いてもらった。

 私のips細胞を可能な限り使って作られた生体部分を持つ“私”は確かにお母様の匂いがして……私はこの奇跡に涙しながら『“私”と共に生き抜いて行こう!』と固く固く決心した。



 私と“私”がリンクして一つになる為には、かなり大掛かりな脳手術を受けなければならなかった。

「体調を鑑みると手術を受けるのは時期尚早」とお医者様には止められたが、私は最早1秒も無駄にしたくなく、頑として譲らなかった。


 “私”の毛母細胞にまだ問題があってどうしてもになると言うので、“私”には当面、私の自毛を移植する事になり、私はさっさと丸坊主になった。

 なんだか小坊主さんみたいで、「これはこれで可愛いなあ」と私は気に入ったが、お父様と響子ママが泣きそうな顔になってしまったので

「こんな事!なんの問題も無いわ! どうしてもサラサラヘアで手術跡を隠せと言うのなら早く毛母細胞を完成させて!そうしたら“私”から髪を返してもらうから」とケラケラ笑ってみせた。


 手術までの数週間は朝から晩まで毎日“私”と一緒で……お父様や響子ママにも話せない様な隠し事や恥ずかしい事まで、洗いざらい“私”に話した。

 それは、私と“私”が一つになる為だけではなく、手術が失敗したり、私の命が早々に潰えてしまった時の遺書の様なものだった。

 でも一日が終わり、“私”におやすみを言う前には動かない私の手を握って貰って「必ず一つになろう」と誓い合った。


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