第3話 “私”のご主人様は私の夫①

 10歳の時、事故に遭って私はお母様と四肢の自由を失った。


 お母様の分までしっかり生きなきゃ!と頑張ったつもりだったけど私の命の炎は徐々に小さくなり、せっかく入学できた中学校のウェブ授業を受ける体力すら無くなってしまった。


 お父様がアンドロイドの開発を得意とするベンチャー企業をM&Aしたのは偏にひとえに私の為だ。


 ただ、私は家事支援用アンドロイドを看護、介護用に作り替えているものとばかり思っていたが、それは間違いだった。


 14歳の誕生日も私は自力呼吸ができない状態で、酸素マスク越しにお願いしたのはたった一つ、乳母の響子ママについてだ。


「お願いします……どうか人を雇って大切な“響子ママ”の負担を少しでも軽くしてあげて……お父様が手掛けてらっしゃる介護アンドロイドは間に合いそうにないから……」


 そうしたらお父様は目に涙を一杯溜めておっしゃった。

「私が作っているのはお前を介護する為のものじゃない!お前にもう一度自由を与える為の……『もう一人のお前』を作っているんだ!来年の誕生日にはきっと間に合わせるから!!頑張るんだ!!」


 思えばこの時……私は疲れ果てて最も死に近づいていたのだろう。

 でもお父様は『希望』と言う名のプレゼントをくれた。

 そうして私は賽の河原に背を向ける事ができた。


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