第3話
ただ、いくら希望を出したところで「必ずその希望に沿った進路に進めますか?」と聞かれても、答えは「NO」だ。
でも、希望を出すのは個人の自由とされている。そうした場合。どうしても「人気の課」と「不人気の課」というのが出て来てしまう。
そもそもどうして人気がないのか……。
それは単純に「地味だから」というのが一番だろう。
ここはその課の名の通り日々を過ごし地上の生まれ変わりの順番を待っている人たちに対し、地上にいる人たちがお供えした物を保管。または本人に手渡すのが主な仕事だ。
ただ、基本的に「本人に手渡す」というのは稀で、大体は使い魔を使って本人に送り届けるのが普通なので「受け取り主と会う」なんて事はほぼないに等しい。
つまり、ほぼほぼ事務仕事ばかりという事だ。
もちろん、この仕事だって大事な仕事の一つなのだが……やはりどうしても治安維持活動を主にしている仕事は目立つしやりがいも感じやすいのだろう。
いくら順番とは言え、その生まれ変わりの順番を待っている内に犯罪に手を染めてしまう人間もいる。
そうし人たちを捕まえるの課や捕まった人たちを裁く課も存在しており、そういった課は人気だ。
ただ、その裁かれて重罪になった地上の人間を地獄に送る課はあまり人気がないらしい。
これは学生時代の卒業間際の職場見学を見て何となくその理由が分かった気がしたのだが……一応陸人の胸の内に留めている。
他にも理由はいくつかあるのだが、他にもここで預かる「供え物」は良くも悪くも「思い」が詰まった物が多く届けられる。
基本的にほっこりする様な物ばかりなのだが……中には「なんで?」と思わず聞きたくなる様なかなり恨みの籠った物が送られる事もある。
そういった場合は気分が悪くなる事も……無きにしも非ずな仕事だった。
ただ、そういった物でも「供え物」である事には違いないので基本的には本人に送っている。
もちろん受け取り拒否をされる事もあるが、大体は受け取ってもらっている。
しかし、場合によってはその本人がもう既に生まれ変わりの順番が来て天界にいない……という場合もあるので、そういった場合は『保管』という形を取っている。
期限も一応決まっており、それらを管理するのもこの課の仕事だ。
そして、そういった人気のない課には揃いも揃って共通のある問題を抱えてしまっている。
それは『不人気が故に人手が足りない』という事だ。
そもそも、この課に限らず不人気な課なのに関わらず人手が多く必要な課の一つでもある。
「おはようございまーす!」
ただ、あまりにも選ばれないので人では最小限に抑えられ、この課では陸人が一番の後輩だ。
「遅いっ!」
陸人が自身の机に荷物を置いた瞬間、隣にいた先輩の鋭い声が陸人の耳を突き刺した。
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