第2話


 職場に向かうと言っても場所は少し遠い。しかし、それはただ早めに部屋を出れば間に合うので全然問題はない。


「はぁ、相変わらずデカいな。ここは」


 見上げた先にはこの天界の中でも大きく壮大な建物が。決して豪華とかではなく、とにかく壮大。とにかく大きいという印象を与える。


 ただ、残念ながらその場所は職場ではなく、職場の横に併設されている職員用の『寮』だ。


 この『寮』には職場に勤めている様々な「課」の人間が生活している。しかし、残念ながら陸人が務めている課はこの寮には含まれていない。


 そういった場合は自分で住むところ決めなくてはならないのだが、大体のこの世界で人はこの『寮』に入る為、そもそもそういった場所は少ない。


 つまり、お高い。


 それに加え、陸人はまだこの職場に就職して短い新人という事もあってなかなか金銭的に余裕がないと色々な要因から職場から多少遠いもののあの部屋を借りて生活をしているのだ。


「あ、おはよう」


 ちょうどその寮から陸人とは違う課ではあるものの、同期だったヤツが出て来たので挨拶をした。


「……おはよう」


 しかし、相手は挨拶をしてきたのが陸人だと分かるとあからさまに嫌そうな表情を浮かべつつも挨拶を返し、そのままそそくさと職場である『役所』へと駆け込んでしまった。


「あー、やっぱり声掛けない方が良かったか?」


 思わず心の声が漏れてしまったが、あまりにも久しぶりに見かけたのでつい声をかけてしまった。


「ま! いいか」


 時間にはまだ余裕があるものの、遅刻は避けたいので陸人も急いで天界で『役所』と呼ばれる自身の職場へと入る。


 そして最初に目に入るのは「受付案内」と書かれた機械だ。まずはここで受付をしなければならない。


 ここで用事のある課の受付番号を受け取る。


 ちなみに、ここで働いているのは全員『天使』と呼ばれており、陸人もその一人だ。


 そして、この『役所』には様々な部署があり、その中には天界の治安を守る課も存在している。


「……」


 まだ始業時間には早いが、もう既に出社している人もおり、陸人はそそくさと自分が配属されている課は向かうのだが、どうにも周囲からの視線を感じる。


「ねぇ、あの人って」

「そうそう」


「物好きだよね」

「ねぇー」


 そんな同期か先輩かはたまた後輩か……誰か分からない会話が嫌でも耳に入って来るが、仕方がないと陸人は思っている。


 そもそもどうして同期は寮で生活しているにも関わらず、陸人は職場から離れて場所で生活をしてるのか……。


 それはひとえに「お荷物課」と呼ばれる課に配属されているからに他ならない。


「別にどうでもいいけどな」


 基本的に『天使』は皆ある一定の年齢になると全員同じ学校に通う。


 そこで卒業後の進路を決める事になり、各々自分の希望を出すのだが……そんな中一際人気のない課がある。


 それこそが陸人が働く『天界預かり物保管課』だったのである。

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