柳谷のお母さんから電話がかかってきた夜

柳谷(いつも通り)「こんばんは」

相談者(おだやかで優しい声)「……こんばんは。

あの、はじめまして……って言うべきかしら。

……柳谷の母です。」



(スタジオ、一瞬静まりかえる)



柳谷(小さく咳払い)「……え、ちょ、ちょっと……

今、普通に“母”って……え? スタッフ、これ通したの?」



母(やさしく)「夜中にね、たまたまラジオつけたら、

あなたの声が聞こえて……

すごく頑張ってるのもわかったし、

でもね、ちょっと声が、疲れてるなぁと思って……

それで、電話してしまいました」



柳谷(静かに)「……今、放送中やぞ……」



母「うん、わかってる。

でも、ちゃんと**“息子に話しかけるラジオの時間”**もあっていいと思うの」



柳谷(ちょっと笑って)「……やめろよ……

そんなこと言われたら……

……お前、今どこで聴いとんねん」



母(くすくす)「いつもの台所。

冷蔵庫の上にラジオ置いて……

味噌汁の鍋の匂いと一緒に、

あなたの声が聞こえてくるの。

……ずっと、そうだったわよ」



柳谷(少し沈黙)「……俺、

お前に何か、言えてたっけな」



母「ううん。

何も言わなかった分だけ、今いっぱいしゃべってるの、わかるから。

このラジオ、あんたの声を**誰よりも一番、ちゃんと聴かせてもらえる場所だと思ってるの」



柳谷(やや声が詰まる)「……おい……

それ、

放送中に言うやつちゃうやろ……」



母(少し冗談めかして)「じゃあ、もう切るわね。

今夜もちゃんと“みんなの声”を拾ってあげて。

あんた、声だけで、

ちゃんと人のこと、抱きしめてるから」



(通話終了)



柳谷(静かに深呼吸)「……ということで今夜は、

“一番身近だった声”に、ちょっとだけ抱きしめられました。

子供は寝なさい、大人も寝なさい……

起きてるのは、今夜も――自分の声の向こう側に、母がいることを思い出した、俺……」

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