精神病院から電話できちゃったんですけど
柳谷「こんばんは」
相談者(妙に爽やか)「こんばんは〜!今日はちょっと特別な場所から失礼します!」
柳谷「お名前年齢お願いします」
相談者「松沢、41歳、今は……ええと、病院暮らししてます。出入り自由なタイプの病棟です!」
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柳谷(一瞬の沈黙)「……なるほど。ではご相談をどうぞ」
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相談者(ハイテンション)「はい!
この病院、電波は入るし電話もできるし、
ラジオも聞けるんですよ!!すごくないですか!?
で、ちょっと相談なんですけど……
“声が壁の中に逃げる”って感覚がずっとあって……
これ、なんか科学的に説明つきます?」
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柳谷「…………(一瞬目を閉じて深呼吸)
今夜は、“聴覚異常と空間知覚の関係”について。
ゲストは、神経認知と錯覚空間論の専門家、**千堂 和臣(せんどう・かずおみ)**先生です」
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千堂「こんばんは。“聞こえる”とは、“外からの信号”だけではなく、
“自分の脳が見たい構造”そのものです。」
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柳谷「松沢さん、声が壁に逃げる、というのは、
たとえば“誰かに聞かれてる感覚”とセットだったりしますか?」
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相談者「そうなんですよ!!さすが!!
壁の向こうにいるんです!耳だけの人が!!!
で、たまに天井の換気口が反応するんです!!
あと、食堂のカレーが“怒ってる”日は、大体ナースの目が黒いです!」
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柳谷「……なるほど、あの、すごく鮮明に“見えてる”んですね」
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千堂「脳は、“現実が曖昧なとき”に、
“一番納得できる物語”で世界を埋めようとします。
松沢さんは、今まさに、
**“世界を保つために語られている物語”の中にいるんですね」
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柳谷(優しく)「でも、こうやってラジオに電話してくれたってことは、
“自分の話を外に出そう”って意志があるわけです。
それ、すごいことですよ。
“壁に吸われた声”を、ちゃんと外に出せたってことですから」
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相談者(少し静かに)「……あ……ほんとだ……
今……“逃げてない”ですね……
なんか、ちゃんと聞こえてるって……思えました……
……ありがとうございました……
これ、電話切ったらまた壁に戻るんですけど、
今だけでも、“外に行けた気がします”」
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柳谷「ということで今夜は、
**“現実がゆがんでる人間”の声ではなく、
“ゆがんだ現実の中でも外と繋がろうとした声”**を聞きました。
子供は寝なさい、大人も寝なさい……
起きてるのは、今夜も――壁の中から抜け出してきた、あなた……」
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