ハウリングが止まらないんですが、ラジオは消したくないんです
柳谷「こんばんは」
(キィィィィィ……ッ……ガガガ……ピピィッ)
柳谷(しかめっ面)「……こ、こんばんは……(顔をしかめながら)お名前と年齢お願いします」
相談者(ノイズの中から)「あッ……はっ、聞こえてます!?ワタナベですッ!!43歳!ラジオ依存型人間です!!」
(キィィィ……ガリガリガリガリィィ……)
⸻
柳谷(顔を押さえながら)「今夜は、“音響干渉と共鳴破壊”について。
ゲストは、音響心理学と周波数暴走理論の専門家、**比良坂 鳴(ひらさか・なる)**先生です」
⸻
比良坂「……耳が……耳が“ちょっと泣いてます”。こんばんは」
⸻
柳谷(口元を押さえながら)「ワタナベさん、
ラジオの音、切っていただけませんか?」
⸻
相談者(音割れ)「いやでも!!!
この番組は!!リアルタイムで!!聞かなきゃダメなんですッ!!
“自分の声が柳谷さんに届いてる感覚”が!!どうしても欲しいんです!!」
(キュイイイイイイイィィィィィッ!!!)
⸻
柳谷(机を叩きながら)「届いてるどころか、鼓膜が物理的に殴られてるんですが!?!?!?!?」
⸻
比良坂(イヤホン外しながら)「……これはもはや“聴取”ではなく、
“音響テロ”です。
“あなたが好きすぎる”は、“あなたを壊す”に変わる。
ラジオはスピーカーじゃない、“距離感”です。」
⸻
柳谷(懇願)「ワタナベさん……
あなたの“声が届いてる”って感覚は、
ラジオを消しても、電話回線でちゃんと伝わってます。
ていうかそれ以上来ると、“ラジオの墓場”にされますこの番組!!」
⸻
相談者(呼吸荒く)「……す……すみません……でも……
あの、あの、これが僕の、“生きてる証拠”なんです……
ラジオの音が、自分の声と重なる瞬間が、唯一の……実感で……」
(ヒュウウウウウウウ……パキッ……ピィィ……)
⸻
柳谷(深く息を吐く)「……わかります。でも、
あなたが好きな番組を、壊してるのもあなたなんです。
だから今は、一度ラジオを切って、“本当の会話”をしてみてください。
ここでちゃんと、あなたの声を、僕が聞きますから」
⸻
(ハウリング、ゆっくり止む)
⸻
相談者(涙声)「……今、消しました……
すごい、静かだ……
あ……ああ、これが……柳谷さんの声なんだ……
……ちゃんと、聞こえるんだ……」
⸻
比良坂「“音が消えたあと”にやっと届く声があります。
それは、“ちゃんと聞く”と決めた者だけに届く周波数です」
⸻
柳谷「ということで今夜は、
ラジオの向こうで暴走しかけた愛を、
ほんの少しだけ、人と人の距離に戻しました。
子供は寝なさい、大人も寝なさい……
起きてるのは、今夜も――
壊れる寸前で耳をすませた、あなた……」
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