あるラジオパーソナリティの匿名相談
代打MC・小出悠真(こいで・ゆうま)
「こんばんは。今夜も『オトナ科学なんでも電話相談室』、
進行は、小出悠真が務めさせていただきます。
柳谷さんは、お休みを頂いております。」
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小出「今夜のテーマは、“他人に振り回される自分”について。
ゲストは、情動疲労と対人依存の専門家、**桐島 椿(きりしま・つばき)**先生です」
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桐島「こんばんは。“疲れる”とは、“感情が置いてきぼりになっている”というサインです」
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小出「それでは、今夜の最初のご相談――
……えー、ラジオネーム“中谷”さん、男性、42歳……」
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相談者(声に加工、でも明らかに柳谷)「こんばんは……
あの、自分、ある深夜ラジオ番組のパーソナリティをやってるんですけど……
ここ最近……“頭のおかしいリスナー”と毎晩話してて……
“ちんちんが喋る”とか、“カブトムシに挟まれた”とか、
そういう話ばっかりで……
リスナーは笑ってるんですけど……
だんだん、自分の声が、“相手の妄想の処理係”みたいに思えてきて……
気づいたら、何を話してても笑えなくなって……
……すみません、これって“科学の質問”じゃないですよね……」
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小出(しばらく沈黙)
「……いえ、それは**“科学以前に、人間の話”です**。
ラジオという場所は、
ときに“誰かの狂気”を受け止めすぎて、“自分の声”を忘れることがある。
でも“喋りたくなくなった自分”を、
こうして“喋ってる”時点で、もう一度始まってると思います」
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桐島「ええ。“おかしな相手”に毎晩向き合うことは、
“自分の正常を守り続ける戦い”でもあります。
その戦いをやめても、あなたの価値は何も減らない。
だから今日は、ちゃんと自分を労ってほしいです。
“それでもマイクの前にいた自分”を」
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相談者(声が震える)「……ありがとうございます……
……なんか、初めて“番組に救われたリスナーの気持ち”がわかった気がします……
……ちょっとだけ、戻れそうな気がしました……
では、失礼します」
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小出(静かに)「……ありがとうございました、“中谷”さん。
また、どこかのマイクの前で――お会いできるのを楽しみにしています」
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桐島「“匿名”という名前は、“まだ名乗れない心”の別名です。
今夜、それが少しだけ前を向きましたね」
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小出「ということで今夜は、
喋る人が、喋れなくなったときの話をしました。
子供は寝なさい、大人も寝なさい……
起きてるのは、今夜も――“自分の限界を声に変えた”あなた……」
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