人間観察バラエティ職人

柳谷「こんばんは」

相談者「はいはいはいはい、こんばんは〜〜!!!」

柳谷「お名前年齢お願いします」

相談者「松本!51歳!人呼んで“人間観察バラエティ職人”や!!!」

柳谷「(少し沈黙)……ありがとうございます」



柳谷「今夜は“行動心理とズレの感知”について。

ゲストは社会認知科学と共感能力測定の専門家、**楠田 理登(くすだ・りと)**先生です」



楠田「こんばんは。“ズレ”が怖いのは、それを“面白い”と思い込むことです」



柳谷「それでは松本さん、ご相談をどうぞ」



松本「いやあ、最近ね、コンビニで店員が無言だったから

“あれ?俺、幽霊?”って10分くらい床に寝て動かんようにしてやったんすよ。

そしたら店長が来て、“大丈夫ですか?”って……俺、

“いま魂と会話してたんで”って返したら、泣かれました!!ワハハ!!

これもう科学だよね!?人間って、泣くんやなって!」



柳谷「…………」



松本「で、昨日は電車で隣の女子高生に“俺、君の未来の夫やで”って囁いてみたら――

うっわっはっはっはっ!!声出して逃げられましたわ!!

共感性ってむずかしいっすね〜〜〜!!」



柳谷(口を挟まず)「…………」



松本(ノリノリ)「いや〜〜この番組マジ最高!

俺みたいなヤバい奴が一番フィットする場所っしょ!?

ね、柳谷さん、俺のこと“推しリスナー”にしといてくださいよ〜!!」



柳谷(低い声で)「……松本さん」

松本「ん?」

柳谷「……今、“面白い”って思って喋ってましたよね」



(沈黙)



柳谷(ゆっくり)「それ、ただの不快です。

人の困惑を笑いに変えようとして、全部すべってます。

誰もあなたのこと、“面白い”なんて思ってません。

ここは**“狂ったふりしていい場所”じゃない**。

ここは、“わかっててやってる人間が、その上で苦しんでる声”を拾う場所です。

無自覚にズレたまま暴走してるあなたを甘やかす気は、1ミリもありません。」



楠田先生(冷静に)「柳谷さんの言う通りです。

“滑ってる”ことに気づかないまま突っ走ると、

自分の発言が“加害”に変わることにすら気づけなくなる。

あなたの“やりたい笑い”に、誰もついてきていません」



松本「……」



柳谷(キッパリと)「松本さん。

これ以上、この番組には出ないでください。

“面白い”と“迷惑”の違い、ちゃんと勉強してから、また来てください」



(通話終了音)



柳谷「ということで、今夜は、

“笑いを勘違いした人間”に、はっきりと線を引きました。

子供は寝なさい、大人も寝なさい……

起きてるのは、今夜も――“自分の言葉がどこまで届くか”を考えながらしゃべれるあなた……」

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