虹の根元に……触りたいんです……

柳谷「こんばんは」

相談者「こんばんは」

柳谷「お名前年齢お願いします」

相談者「篠原、42歳です……」



柳谷「ありがとうございます。さて今夜は、

“年齢が上がるほど怖くなる系”のご相談です。

お迎えしたのは、気象物理学と色彩神秘現象を専門とする、**雲田 虹三郎(くもた・こうざぶろう)**先生です」



雲田「こんばんは。空に見える現象に“触れようとする者”は、

たいていヤバい奴です」



柳谷「では篠原さん、ご相談どうぞ」



相談者「あの……虹って、ありますよね……

綺麗で……7色で……こう、アーチになってて……

……その……根元に……触りたいんです……

指で……こう……ちょん、って……」



(沈黙。スタッフ、飲み物を吹きそうになる)



柳谷「えー、篠原さん。お仕事は?」



相談者「会社員です。保険関係の……」



柳谷「ヤバさに拍車かけないで。本物の社会人がそれ言うな。

なんでまたそんなことを?」



相談者「……子供の頃から……虹を追いかけては消えて……

でも、42になった今……確信したんです。

あれは、“触れる日が来る”って……

だから……最近は会社休んで探してます」



雲田「それ、虹じゃなくて社会的信用が消えてますね」



柳谷「ちなみに、実際“虹の根元”って触れるんですか?」



雲田「無理です。“あなたが動くと、虹も動く”。

光と位置の相対関係”で成り立つ投影だから、

“根元”は常に幻です」



柳谷「つまり、“42歳で根元触ろうとしてるやつ”は……?」



雲田「マジでただの不審者です。

しかもびしょ濡れで野原に立ってるパターンが多い」



相談者「……でも……もし、万が一……触れたら……?」



柳谷「そしたら逆に“お前が根元”やぞ」



雲田「はい。もうその時点で君が虹の概念になってるんで、

救急車呼んでください」



柳谷「ということで、今夜もまた“オトナの願望”が

どれだけ怖いかを知れました。

子供は寝なさい、大人も寝なさい……

起きてるのは、今夜も――触れられないものに本気で手を伸ばす、汗だくの42歳……」

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