チン毛が旅をするのはなぜですか?

柳谷「こんばんは」

相談者「こんばんは」

柳谷「お名前年齢お願いします」

相談者「杉村、29歳です……」



柳谷「ありがとうございます。今夜のご相談は、いわば“日常の怪異”についてです。

お迎えしたのは、体毛動態学と家庭内軌跡解析を専門とする、**行人 黒縁(ゆきと・くろぶち)**教授です」



行人「こんばんは。“毛とは、思念の抜け殻”。そう言う人もいますが、私は“旅するサイン”だと考えています」



柳谷「では杉村さん、ご相談をどうぞ」



相談者「あの……気づくとチン毛が……いろんなとこにいるんです……

洗面所、台所、会社の机、カップ麺の上……

あいつら……どうやってそこまで旅してるんですか!?

ていうか、なんで俺の知らない場所にまでいるんですか!?」



(やや恐怖混じりの沈黙)



柳谷「つまり、“チン毛ワープ仮説”ですね先生」



行人「はい。これは“自律落毛拡散現象”と呼ばれるもので、

体毛――特に陰毛は形状がカールしており、軽量かつ跳ねやすいんです。

つまり、“脱落した瞬間”に、すでに放たれている”」



柳谷「それってつまり、“落ちたときに飛んでる”ってことですか?」



行人「はい。そして着衣や靴下に“乗って移動”したり、

静電気で吸着されて移動したり、

なんと**“排気口や換気扇に乗って空中を漂う”**ことすらあります」



相談者「えっ、あいつ……飛べるの……?」



行人「ええ。陰毛は軽くてクセがあるため、“空中で旋回する能力”が非常に高い。

これは“コアンダ効果”と呼ばれる現象で、流体に沿って滑空しながら移動できるんです」



柳谷「なにそれ……戦闘機じゃん……!」



行人「はい。実際、**“陰毛は家庭内最も高い移動能力を持つ物体”**という研究すらあります。

つまり、チン毛は――旅をしてるのではなく、旅に向いているんです」



柳谷「……かっこよすぎません?陰毛……」



行人「旅する理由はただひとつ。“誰かに発見されるため”。

それが、抜け落ちた者の最後の仕事なんです」



柳谷「ということで今夜もまた、見過ごされてきた奇跡に気づけました。

子どもは寝なさい、大人も寝なさい……

起きてるのは、今夜も――あなたの知らぬ間に旅立ち、麺の上に舞い降りる、名もなき毛……」

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