一緒に死んで、一緒に生きよう
自分の覚悟が決まったら善は急げだ。
最近夕暮と居ると思うが、夕暮の能力が戻り始めているかもしれない。本人は気づいていないかもしれないが。
「最近、よく物が動いてる気がするんだ。自分が置いた場所と違う場所から見つかるって言うか……。疲れてるのかな、僕」
そう聞いたのは昨日の話だ。もし無意識に能力を使ってるとしたら。まだ無意識下だから効果が短いのかもしれない。そもそも無意識下で能力を使えるのか?という疑問が残るが、気にしないことにする。もしかしたら、という自分の勘を信じよう。
「紫花」
明らかに待ち伏せをしていた茜に呼び止められる。
「茜。何か用?」
「俺さ、やっぱり夕暮を守りたいんだ。紫花の気持ちが変わらないなら、力ずくでも止める」
「喧嘩しようって?」
実際、俺は茜と喧嘩をしたい訳じゃない。茜も夕暮も十年以上一緒にいた友達だ。出来ることなら平和にいきたい。俺と茜は、夕暮の守り方が違うだけだ。それでも、お互い自分の意思を突き通したいのなら。
「手加減しないから」
「いらねーよ!」
殴り合いの喧嘩なんてした事ない。ずっと仲が良かった。
「お前は、意見を曲げてんじゃねーーよ!!!守る方法が殺すって、おかしいじゃねーか!」
茜のパンチを顔で受ける。んな事言ったって……。
「どの道夕暮は殺されるんだよ!方法なんて無いんだ!!分かれよ!今まで何も知らなかったくせに急にヒーローぶってんじゃねーよ!」
負けじと俺も茜の頭をめがけて蹴りを入れる。茜は腕で防ぎながら、少しよろける。
「友達守りたいって思うのは普通の事じゃねーの!?ヒーローぶってねーよ!!今までずっと本当のことを知りながら今更殺すことが正義?バカも程々にしとけ!!!!」
茜の2度目のパンチがもろに来て、鼻血を流す。
「じゃあお前、これからずっと夕暮の為に生きるのか!?誰から狙われるかも分からない、宇宙さんがどんな手を使ってくるかも分からない中で、ずっと夕暮を守って生きるか!?敵は俺だけじゃないんだ!!」
俺の膝が茜のみぞおちにめり込む。
「うっ……」
ふらつきながら後ろによろけ、壁に寄りかかる。
「それでも……夕暮は友達で……今だって、紫花と喧嘩したい訳じゃなくて……でも、」
肩で息をしながら茜がつぶやく。今までお互い殴り合いなんてしたことが無いから、限界が来た。茜に蹴りが入らなくても、こっちが先に落ちていただろう。
「夕暮がいない世界で生きるのは、やだなぁ……」
小さい、でも気持ちの籠った声だった。
「今までなんも考えてなかったから、俺が悪いから。夕暮、友達だけどさ、俺らの親じゃん?思い入れ、変わっちゃったよ。紫花だって、兄弟みたいなもんじゃん。ずっと一緒にいようよ……。普通に、ただ普通に生きたいだけなんだよ」
茜は……夕暮に死んで欲しい訳じゃなくて、三人でいられなくなるのが嫌なだけ、なのかもしれない。だったらアプローチを変えてみようか。
「だったら、三人で死のう。夕暮れを殺して、俺らも一緒に死のう。誰も一人にしない。俺らは花だ。死は怖くない。人としての茜紫音と紫花陽太が消えるかもしれないけど、花として生きていこう。一緒に。夕暮はいないけど、俺はいる」
「心中とプロポーズ同時にしてんじゃねーよ」
「してねーよ」
確かにプロポーズ紛いになってしまったが、まぁいいだろう。一緒に死んで、一緒に生きよう。
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