13: ウィンドウ操作の初歩2
一息つき、ライトの指示で現れたウィンドウの隅に触れた。
「これがアイテム画面だ。ここでお前が持ってるものが確認できる」
画面に詳細が表示されていた。
「……ペンギンの爪×1、S.E.C×1、500G……」
(こんなの手に入れた覚えないんだけど……)
不思議そうに画面を眺めた。
(ペンギンの爪……まさかね……あの時の……)
一瞬、戦いの記憶が頭をよぎる。
不安を吹き飛ばすように視線を移す。
次に目に留まったのは“500G”の文字。
(えっ、お金!?これがあれば王都までの魔法電車代もなんとかなるかも!)
驚きと期待が入り混じった表情を浮かべた。
最後に“S.E.C”の文字へ目を戻し、思考を巡らせる。
(これは一体なんだろう……聞いたこともない名前だけど、何か重要なものなのかな?)
「アイテムの取り出し方は簡単さ!このアイコンをタップして選ぶだけで、ポンっと出てくる」
説明を聞き、混乱した表情で、画面をじっとを見た。
「タップって……?」
ライトは少し笑いながら、
「お前、本当に何も知らないんだな」
と言ってふわりと動き、青い光の先端をアイコンの上に重ねた。
「こんなの、説明するまでもないくらい簡単なんだがな!まあいい。こうやって、ちょいと触るだけだ!さあ、愚鈍なお前でもできるはずだ、やってみろ!」
(正直、ジャイトは調子乗りすぎだし、ウザい。でも、少し面白いと思っちゃうのが悔しい)
ライトの声に合わせて、“S.E.C”というアイテムをタップしてみた。
触れた所が、淡く光り始める。
次の瞬間、画面から“S.E.C”が飛び出し、きなこの手に収まった。
その不思議な動きに、目を丸くした。
「……これが“S.E.C”?」
じっくり観察し、表面に刻まれた文字に気づく。
「これ、“アコース”って書いてあるけど……」
ライトは軽く肩を揺らし、問いかけた。
「なあ、お前、“アコース”って知り合いか?」
「知り合い?“アコース”ってこの石だよね?」
指で“S.E.C”に触れながら、答える。
「名前に覚えがないならいいさ」
とライトは軽く言った。
きなこは、一瞬、考え込んだあと、鉛筆を走らせる。
――――――
【邪魔板操作メモ】
S.E.C → 要調査。 “アコース“とは?
――――――
ひとまずメモを残す。
「で、これは何に使うものなの?ただのちょっと綺麗な石みたいだけど……」
アイテムをじっと見つめながら質問する。
ライトは、どこか得意げに笑って答えた。
「今はそれを気にするよりも、ウィンドウの使い方を覚えた方がいいぜ。もっとレベルが上がったら教えてやるよ」
「レベル?って何?」
と不思議そうな顔で聞く。
ライトは少し呆れた声を漏らす。
「そこからかよ!よし、いいか。レベルについて説明してやるから、ステータス画面を開いてみろ」
顔をしかめて、
「えっ、まだ説明するの?」
と不満をもらす。
ライトは鼻高々に言い放った。
「これほどの名ガイドに教えてもらえる機会なんて、人生でそうそうないぞ。これ、普通ならプレミアム料金ものだぞ!」
きなこはため息をつき、画面に目を落とした。
いつしか最初の煩わしさは消え、新しいことを知る楽しさ、そして操作に慣れていく心地良さを感じ始めている事に、きなこは気づいた。
「……うん、まぁ悪くはないかも。ガイドがもう少し静かなら完璧なんだけど」
と小さく呟き、画面に集中した。
言われるままにウィンドウを操作し、ステータス画面を表示させた。
――――――
【ステータス】
名前:きなこ
種族:グルミー族 赤柴犬型
レベル:3
HP:110/110 (+30)
MP:30/30 (+10)
STR:13 (+3)
DEF:11 (+3)
MAG:4 (+1)
MDF:7 (+2)
AGI:21 (+6)
DEX:16 (+4)
EVA:9 (+2)
LUK:11 (+2)
[SP] 6
[固有スキル]潜伏者の祝福 (Lv.1)
[種族スキル]影疾風 (Lv.1)
[魔法]風刃(かぜやいば)(Lv.1)
――――――
ステータスを確認し、ゆっくりと目を細める。
(レベル3…STRとかAGIとか…よく分からないけいけど……やっぱり呪文じゃないのかな?)
メモを読み返して考え込む。
――――――
【邪魔板操作メモ】
15.尻尾で横に撫でると、表示が変わる!→ステータスと表示。謎の文字列?呪文?
ステータスきなこグルミ!……HP,MP……何度も唱えるも何も起こらない、なぜ(・・?)
――――――
ふわりと浮かび、メモを覗き込む。
「おいおい……お前、まさかステータスを呪文だと思ってたのか!?ぷぷっ!」
ぶるぶると青い光を震わせ、転げ回るようにして爆笑する。
「ぷぷっ!お前、ホントに唱えたのかよ!頼むから一回見せてくれよ!『HP80、MP20、STR10』ってさ!」
きなこはピクリと肩を震わせた。
メモを慌ててポケットに押し込みながら、顔を真っ赤にして叫ぶ。
小さな声で付け加えるように、
「勝手に見ないでよ!それに、本気で呪文だなんて思ってたわけじゃないからっ!」
赤くなった耳を押さえて視線をそらす。
「まあまあ、気にするなよ。お前らしいってことでいいじゃないか。」
光を微かに震わせつつ、再びステータス画面を指し示す。
「ここに書いてあるLvってのがレベルだ。お前がどれだけ成長したかの目安だな」
きなこは不思議そうに画面をじっと見つめた。
「えっと、Lv3って……僕もう9歳なのに。3ってどういうこと?」
「年齢とは関係ないから!」
ライトが即座にツッコミを入れる。
「じゃあ、レベルって結局何なの?」
ますます訝しげに首を傾げた。
ライトはいたずらっぽく笑った。
「レベルが上がると、もしかしたら新しい『お手!』を覚えるかもしれないぞw」
「いや僕、犬じゃないから!いや犬型だけど……」
ムッとした表情で反論する。
「何言ってんだ?混乱しすぎだろw」
ぷぷぷっと笑いをこらえきれず吹き出す。
「えっと、だから、つまり……僕はグルミー族の赤柴犬型であって、ただの犬じゃないだ!」
肩を揺らし、光をわずかに点滅させた。
「知ってるさ。俺は賢いスーパーガイドだからな!ぬいぐるみの形をしたモンスターだろ?しかも二足歩行型。それに対して、同じぬいぐるみの形でも四足歩行型のをヌイミー族っていうんだぜ。勉強になったか?」
ドヤ顔を浮かべて付け加えた。
その言葉に、ぽかんと目を瞬かせた。
「……ん? 何言ってるの?」
「モンスターだろ、お前」
「モンスター……? それって、悪者ってこと?僕はただのグルミー族で、そんなのとは違うよ?」
ライトは光を強く輝かせ、「呆れたやつだな」と小さく呟いた。
「まぁ、せっかく犬型なんだし、『お手!』くらいは覚えても悪くないだろw」
「合ってるけど……なんか馬鹿にされてる気がするのって、気のせいかな?」
不満そうにライトを睨む。
「あーっと!名ガイドの俺としたことが、つい面白すぎちゃって話が逸れちまったぜ!」
空中を軽く回転し、真面目な口調に戻った。
「簡単に言えば、レベルが上がれば強くなるんだ!」
「それだけ……?」
訝しげな表情をすると、ライトは肩をすくめて言葉を続けた。
「いやいや。他にも今まで出来なかった事が出来るようになったりする。例えば俺だと、制限されてる情報や技術を解放できるようになるんだ!」
目を細めて考え込む。
(ん……?ジャイトだと?制限されてる?解放?ちょっと待って、どういうこと?)
「ジャイトにもレベルってあるの?」
その問いに、ライトは大きく頷いた。
「当たり前だろ?お前が強くなるほど、俺のガイド力もどんどんアップするってわけさ。しっかり頼むぜ」
「……なんか押し付けられてる気がするんだけど……」
きなこは肩をすくめ、ぼやく。
そして、メモを取りつつ、一瞬考え込む。
(あれ?なんか他にも気になること言ってた気がするけど……まぁ、いっか)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます