Happy birthday!

猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ

お誕生日おめでとう

「お誕生日おめでとう」


私の両親は毎年この日に誕生日プレゼントをくれる。

毎度、つまらないものばかり。

私の欲しいものはくれないの?

そう聞いても「ごめんねぇ、まだ早いから」

そう言って、全然くれない。

周りの子はみーんな欲しいものをもらってるらしい。

ああ……羨ましい。


☆☆☆☆☆★★★★


9歳の誕生日の前日。

時は満ちた、そう言ったのは誰だったか。


「今年はお前の欲しいものを与えよう」


両親はそういった。

あぁ嬉しい!遂に、遂に私の欲しいものをくれるのね?

とっても嬉しくって、私は普段よりも早く眠った。


──────早く明日が来ないかな?


☆☆☆☆★☆★★★


学校からの帰り道。

家に帰れば私の欲しいものがあるって、朝に父は言った。

ああ早く帰らなきゃ。


──────私は普段の数倍の速さで家に帰った。


☆☆☆★☆★☆★★


家のあるアパートの階段を登る足が早くなる。

興奮で息が荒くなり、心臓がバクバク言うのが聞こえる。

ああ……楽しみで楽しみで仕方がない。


──────私は呼吸を整えながら家に近づいた。


☆☆★☆★☆★☆★


鍵を握る手が震える。

扉を開くのに緊張して、手汗が出る。

普段よりも時間が長く感じられる。

ああ……家の中には本当に欲しいものが待ち受けているのか。


──────私は鍵を開けた。


☆★☆★☆★☆★☆


扉を開く、家に入る。

普段と違って家の中は薄暗い。

カーテンが閉じられているからだろう。

でも、そんなことはどうでもいい。

目の前にはそれ以上に私の待ち望んでいた光景が広がる。

白かった壁紙は所々赤色に。

普段と違う私の様子を見た他の住民が背後からこっそりと見ているのがわかる。

そんなこと、どうでもいい。

私の願いは叶ったのだ。

これ以上何が起ころうとも私にとってはどうでもいい。

住民がスマホを取り出し110番と119番に通報しているのがわかる。

捕まるのならそれが天罰というものだろう。

赤色の飛び散る部屋の中、私は嗤った。


──────目の前には、物言わぬ2つの壊れた人型の物があった。

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Happy birthday! 猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ @NekotukiRmune

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