江戸時代の習慣である大名行列が現代に甦ったホラーである。
頭を下げれば問題ないが、頭を上げて通り過ぎる「何か」を見た者は頭を失って死ぬ。
要するに不敬の罪で罰せられて死ぬのだが、現代は「敬う」ことを忘れた時代だから死者は増え続ける。
前半は文明批評的なホラーだが、後半になって恐怖の質は急速に個人的なものになる。
西洋にメメント・モリという言葉がある。
「死を思え」
という意味だが、この小説では死者たちが
「自分たち=死者を忘れるな」
「死者を敬え」
といっている気がした。
最後の数行の描写が際立って見事だった。
恐怖と哀感が二つ同時にあった。
自分はとくに物悲しさを感じながらこの小説を読み終えた。
ホラー好き、短編小説好きにおすすめの逸品です。
参勤交代の大名行列は、言わずと知れた、
江戸幕府が諸国大名等に強いた制度では
あるが、行列が行き過ぎるまでの間を地に
伏して『決して見てはならぬ』とされて
いる。
一方、この『決して見てはならぬモノ』は神などに於いても然り。
『見る』事は不敬に抵る為、固く禁じられ
平伏が課されるのだが…勿論、現代でも
同様の禁忌は先ず聞いた事がない。
この作品、まさに途轍もない状況から
始まるのだが、二転三転して更に途轍も
なく予想を覆される。
真夜中の大名行列は一体 何 なのか。
見る事が決して罷りならないだけに、正体
因果を予想するなど出来る筈もないが。
読んでいて、二度三度と度肝を抜かれる。
緊張感と若干の不条理。そして最後に
『決して見てはならないもの』
その正体が明かされるのだが。
臨場感に息を呑む。最後の最後まで決して
気を抜く事は許されない。