Ep27:クリスマス後の影(新たな危機)
12月26日、クリスマスが終わった星見市は、各家庭で年越しの準備が始まった。
昨夜のイルミネーションがまだ街を彩る中、冬休みに入った星見小学校の生徒たちは家族と過ごしたり、友人との時間を楽しんだりしていた。
星見キッズも例外ではなかったが、彼らの間には深い亀裂が走っていた。
シュウのタクミへの過剰な感情が原因で、ケンタ、カナエ、リナはシュウと距離を取ることを決め、5人が一緒に過ごすことはなくなっていた。
クリスマスの夜、シュウはタクミを遠くから見つめるしかできず、チームの絆は冷え切っていた。
その朝、シュウは自宅の部屋で一人、窓の外の雪景色を見つめていた。クリスマスツリーの飾りが残る近所の家々から笑い声が聞こえ、シュウの心はさらに重くなった。
「星見キッズ…。僕が壊してしまった。タクミへの気持ちを抑えられなかったせいで、みんなが離れて行った…」シュウはノートを開き、過去の事件を振り返った。田村悠斗の事件、文化祭の爆弾脅迫、モールの刺傷事件……星見キッズはいつも団結して乗り越えてきたのに、今は一人でいるしかなかった。
「タクミ…。君の笑顔が好きすぎて、みんなを傷つけた。どうすればいいんだ…」シュウはメガネを外し、目をこすった。
一方、カナエ、ケンタ、リナは別々に過ごしていた。
カナエは自宅で本を読みながら、クリスマスの楽しさを振り返っていた。「シュウとタクミがいないと、なんだか物足りない…。でも、あのままじゃチームとしてやっていけないよね…」
ケンタは近所の公園でサッカーボールを蹴り、
「シュウがタクミばっかり気にしてたの、辛かったけど…星見キッズ、解散したくないよ」と呟いた。
リナはスケッチブックに雪の風景を描き、
「シュウの気持ち、分からなくはないけど…。いつか5人でまた笑えたらいいな…」と願いを込めた。
タクミは自宅でタブレットを手に、星見キッズの写真を見ながら、
「シュウ…みんな…。どうしてこうなっちゃったんだろう…」と目を潤ませていた。
その静かな朝を破るように、街の中心で異変が起きた。
星見モールの近くにある小さな公園で、ジョギング中の男性が倒れているのを通行人が発見した。男性は胸を刺され、血を流して動かなくなっていた。救急車と警察が急行し、現場はすぐに封鎖された。
倒れていたのは地元の会社員、田中一郎、42歳で、刺された傷は深く、病院に運ばれたものの意識が戻らない状態だった。
現場には「次はお前が…」と書かれた紙切れが落ちており、警察は前回のモール事件と関連があると疑った。
高木刑事が現場に到着し、状況を確認した。
「またか…。『次はお前が…』の脅迫文がモール事件と同じだ。犯人は黒いフードをかぶった人物で、目撃者も少ない。凶器はナイフとみられるが、見つかっていない…」高木は眉をひそめ、頭を悩ませた。
モール事件を星見キッズの助けで解決した高木は、今回の事件も彼らの力を借りようと考えた。しかし、星見キッズが分裂状態にあることを知っており、誰に連絡するか迷った。
「シュウなら、頭が切れる。あいつに頼むしかないか…」高木はポケットから携帯電話を取り出し、シュウの番号を押した。
シュウは部屋でノートを手に考え事をしていると、電話の着信音が鳴った。
画面に「高木刑事」と表示され、シュウは電話を受けた。
「もしもし、シュウです。高木刑事?」
「シュウ、悪いな朝から、事件が起きた。星見モールの近くの公園で、男性が刺されて意識不明の状態だ。『次はお前が…』の脅迫文が残されていて、モール事件と繋がりがある可能性が高い」高木の声が重々しかった。
「何!? また刺傷事件…。」
「犯人らしき人物は黒いフードの男性で、ナイフを使ったらしい。目撃者も少なく、凶器も見つかっていない。トリックがあるかもしれない…」高木が説明した。
シュウはノートに状況を書き込み、
「了解しました…。でも、僕一人じゃ…。最近、みんなと距離があって…」シュウの声が震えた。
「分かってる。君たちのチームに亀裂が入ったのは聞いている。だが、今回は君の頭脳が必要だ。現場に来てくれないか?」高木が頼んだ。
シュウは一瞬迷ったが、「みんな…。カナエ、ケンタ、リナ、タクミ…。僕が原因で離れたのに、また頼るなんて…。でも、事件を解決しないと…」シュウは深呼吸し、「分かった。行きます。現場の詳細、送ってください」と答えた。電話を切った後、シュウはノートを握りしめた。
「タクミ…。君に会いたい。でも、みんながそばにいない…。僕一人でできるかな…」
シュウはコートを着て自宅を出た。
雪がちらつく中、星見モール近くの公園に向かった。
現場に着くと、警察のテープが張られ、救急隊員がまだ片付けをしていた。
シュウは高木刑事に近づき、「高木刑事、状況を教えてください」と尋ねた。
「被害者は田中一郎、42歳。朝6時頃、ジョギング中に刺された。胸に深い傷があり、意識不明だ。脅迫文が近くに落ちてたが、凶器は見つかっていない。目撃者は一人だけ、遠くで黒いフードの人物を見たって言うが、顔は分からない」高木が説明した。
シュウは現場を観察した。
雪に覆われた公園の小道に血痕が残り、脅迫文がビニール袋に入れられていた。
シュウがノートに書き込みながら言った。
「『次はお前が…』はモール事件と同じ文言。犯人が同じなら、トリックも似ているかも。シャンデリアの反射や時間操作のような…」
高木が頷いた。
「その通りだと思う。だが、今回は公園だ。建物がないから、反射や時計操作がどう関係するのか…。君の推理が頼りだ、シュウ」
シュウは雪に残る足跡を調べた。
「犯人の足跡か…。雪が降り始めているから、すぐ消えそう。大きさから、成人男性の可能性が高いな…」
ノートにスケッチを書き加えたが、心の中では別の思いが渦巻いていた。
「タクミ…。もし君がここにいたら、一緒に推理してくれただろうな…。カナエの冷静さ、ケンタの観察力、リナのスケッチ…。みんながいないと、僕一人じゃ心細い…」シュウの目が潤み、雪が頬を冷やした。
高木がシュウの肩に手を置き、「シュウ、辛いのは分かる。だが、君ならやれる。星見キッズが分裂しても、君の頭脳は変わらない。頼むよ」と励ました。
シュウは頷き、「ありがとう、高木刑事…。一人で頑張ります。まずは現場の証拠を詳しく…」と答えた。
シュウは雪の中を歩き、公園の周囲を慎重に調べ始めた。木々の影、ベンチの下、ゴミ箱の中と手がかりを探すシュウの目は真剣だったが、心は星見キッズの不在に苛まれていた。
その頃、カナエは自宅でニュースを見ていた。
「また刺傷事件…。星見モール近くの公園だって…。シュウ、関わってるのかな…」
ケンタは公園の近くを通りかかり、「あのテープ…。シュウがいるかも…。でも、会いに行くのは…」と躊躇した。
リナはスケッチブックに雪の公園を描き、「シュウ…。事件が起きたのに、私たち、助けに行けない…。ごめんね…」と呟いた。
タクミはタブレットでニュースを確認し、「シュウ…。僕、行きたいけど…みんなが…」と涙をこらえた。
シュウは公園の隅で、小さな紙切れを見つけた。
「これ…また『次はお前が…』の続きか? 『…見つけるまで』って…!」
シュウはノートに書き込み、高木に報告した。
「高木刑事、新しい手がかりです! 『次はお前が…見つけるまで』って書いてある。犯人が僕を標的にしてる可能性が…」
「何!? 君を? これは危険だ。すぐに身柄を保護する!」高木が慌てた。
シュウは「でも、犯人を捕まえないと…。僕が解明します」と決意を込めた。
雪が降り続ける中、シュウは一人、事件の謎に挑む決意を固めた。星見キッズの姿はなく、チームの絆は遠ざかったままだった。
シュウの心には、タクミへの想いと、みんなを再び集めたい願いが交錯していた。
事件の背後にある意図と、チームの未来が、冬の雪に隠されたように見えなかった。
(Ep27 完)
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