Ep26:冬休みの距離(クリスマスの街で)



12月に入り、星見小学校は冬休みを迎えていた。星見キッズは、星見モールでの刺傷事件を解決したが、シュウのタクミへの感情が原因でチームワークに大きな亀裂が入っていた。シュウがショタコンとしての自分を告白した後、カナエ、ケンタ、リナはシュウと距離を取ることを決め、星見キッズが5人で集まることはなくなっていた。






街はクリスマスの装飾で彩られ、イルミネーションが輝く中、星見キッズの心は冷たく凍りついていた。


シュウは自宅の部屋でノートを手に、過去の事件を振り返っていた。窓の外では、近所の家々がクリスマスツリーのライトで飾られ、子供たちの笑い声が響いていた。


「星見キッズ…もうダメなのかな…。僕がタクミのことばかり気にして、みんなを傷つけたから…」シュウはメガネを外し、目をこすった。タクミの無垢な笑顔が頭に浮かび、心が締め付けられた。


「タクミ…会いたい。でも、みんながこんな気持ちじゃ、僕がそばにいるのは良くない…」シュウはノートを閉じ、ため息をついた。






一方、カナエ、ケンタ、リナは街の中心にある広場でクリスマスマーケットを楽しんでいた。広場は大きなクリスマスツリーが飾られ、屋台が立ち並び、ホットチョコレートの甘い香りが漂っていた。


ケンタがホットドッグを手に、


「このソーセージ、めっちゃ美味しい! カナエ、リナ、食べる?」と笑顔で振る舞った。




「うん、ありがとう、ケンタ! クリスマスマーケット、楽しいね」カナエがホットチョコレートを飲みながら答えた。




リナがスケッチブックに広場の風景を書きながら、


「うん、クリスマスの雰囲気、癒される…。でも、シュウとタクミがいないの、寂しいね…」と呟いた。




カナエがカップを手にため息をついた。


「シュウ…正直、あの告白には驚いたよ。タクミのこと、そんな風に思ってるなんて…。でも、チームとして動くなら、感情を抑えてほしかった。シュウがタクミばっかり気にして、私たちを無視してるみたいだったから…」




「うん、僕も…。シュウがタクミのことばっかり褒めてると、僕たち、必要ないのかなって…。辛かったんだ」ケンタが目を伏せた。




リナがスケッチブックを閉じ、


「シュウの気持ち、分からなくはないけど…。星見キッズはみんなで一つだったのに、バラバラになっちゃった…。どうすればいいのかな…」と呟いた。




広場のスピーカーからクリスマスソングが流れ、子供たちがサンタの帽子をかぶって走り回っていた。カナエが決意を込めて言った。


「今は距離を置くしかないよね。シュウが自分の気持ちと向き合って、変わってくれるのを待つしかない…。でも、星見キッズを完全に解散したくない。いつかまた、5人で笑える日が来るって信じたい」




「うん、カナエの言う通りだ。僕も星見キッズ、大好きだから…。シュウがちゃんと向き合ってくれたら、また一緒にやれるよね」ケンタが笑顔を取り戻した。




リナがスケッチブックに星見キッズの5人を描き、


「うん、いつかまた…。クリスマスみたいに、温かいチームに戻りたい」と微笑んだ。








その頃、タクミは自宅でタブレットを手に、星見キッズの過去の写真を見ていた。林間学校や文化祭の写真には、5人の笑顔が写っていた。


「シュウ…カナエ…ケンタ…リナ…。みんな、バラバラになっちゃった…。僕が原因なのかな…」タクミは写真を撫で、目を潤ませた。




タクミの母親が部屋に入り、


「タクミ、街のクリスマスマーケット、行ってみない? 気分転換になるよ」と声をかけた。




「うん…行く…。でも、シュウには会えないよね…」タクミが呟くと、母親が優しく頭を撫でた。




「友達との時間、大事にしてね。タクミが笑顔でいれば、きっとまた仲良くなれるよ」


タクミは母親と一緒にクリスマスマーケットに向かった。




広場に着くと、カナエ、ケンタ、リナの姿が見えた。


「カナエ! ケンタ! リナ!」タクミが駆け寄り、3人が振り返った。




「タクミ! 来てくれたんだ!」カナエが笑顔で迎えた。




「タクミ、ホットドッグ食べる? めっちゃ美味しいよ!」ケンタが差し出した。




「うん、ありがとう! リナ、スケッチしてるんだね。クリスマスツリー、綺麗…」タクミがスケッチを覗き込んだ。




リナが微笑み、


「うん、タクミも描こうかな。4人でクリスマス、楽しいね」と答えた。




しかし、シュウの不在が4人の心に影を落としていた。








シュウは一人、街のクリスマスイルミネーションを見に外に出ていた。


星見モールの近くにある公園は、大きなツリーとイルミネーションで飾られ、カップルや家族連れで賑わっていた。シュウはベンチに座り、ノートを開いた。


「星見キッズ…。僕が壊してしまった。タクミへの気持ちが、みんなを傷つけた…。どうすればいいんだ…」シュウの目から涙がこぼれ、イルミネーションの光がその涙を反射した。


公園のスピーカーから「ジングルベル」が流れ、子供たちが雪だるまの飾りの前で写真を撮っていた。


シュウはタクミの笑顔を思い出し、心が締め付けられた。


「タクミ…。君の無垢な笑顔が、僕をこんな気持ちにさせた。でも、それがみんなをバラバラにした原因だ…。ショタコンとしての自分を、どう受け入れればいいんだ…」


シュウはノートに「タクミへの気持ち」と書き、すぐに消した。


感情を抑えるべきか、正直に生きるべきか、答えが見つからないままだった。




その時、公園の反対側でタクミの声が聞こえた。


「お母さん、あのツリー、めっちゃ綺麗!」シュウが顔を上げると、タクミが母親と一緒にイルミネーションを見ている姿が見えた。


シュウの心臓が激しく鼓動した。


「タクミ…」シュウは立ち上がり、近づこうとしたが、カナエたちの言葉が頭をよぎった。「シュウ、今は距離を置いた方がいい…」「タクミばっかり気にするの、辛いんだ…」シュウは足を止め、ベンチに戻った。


「今、会いに行ったら…またみんなを傷つけるだけだ…」


タクミは母親と一緒に公園を歩きながら、シュウのことを考えていた。


「シュウ…。僕、シュウのこと大好きだよ。友達として…。でも、みんながバラバラなのは嫌だ…。どうすればいいのかな…」タクミが空を見上げると、小さな雪が舞い始めていた。




「雪だ…。クリスマスだね。シュウ、どこにいるんだろう…」タクミが呟いた瞬間、シュウは遠くからその姿を見つめていた。




「タクミ…。クリスマス、楽しそうでよかった…。でも、僕は…」シュウはノートを握りしめ、涙をこらえた。




カナエ、ケンタ、リナは広場でクリスマスソングに合わせてダンスする子供たちを見ながら、少しずつ笑顔を取り戻していた。


「シュウとタクミがいなくても、私たちで楽しむしかないよね…。でも、いつかまた5人で…」カナエが呟くと、


ケンタが「うん、シュウがちゃんと変わってくれたら…。星見キッズ、解散したくないよ」と答えた。


リナがスケッチブックに雪の結晶を描き、「クリスマス…。みんなの心が温かくなりますように…」と願いを込めた。




冬休み初めのクリスマスは、街を温かい光で満たしていたが、星見キッズの心には冷たい風が吹いていた。シュウはタクミへの感情と向き合い、チームの絆を取り戻す方法を模索し続けていた。5人が再び集まる日は来るのか、冬休みの時間がその答えを試すことになるだろう。




(Ep26 完)


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