Ep7:図書室の殺人(前編)

星見小学校の平和な朝が、突然の事件で破られた。


5月10日、登校した僕たち「星見キッズ」は、図書室で異様な雰囲気に気づいた。司書だった佐々木美奈子さんが、昨夜の事件で逮捕された後、図書室は封鎖されていたはずなのに、ドアがわずかに開いている。




「シュウ、変だよ…。誰かが入ったみたい」カナエが小声で言った。




僕はランドセルを下ろし、慎重に近づいた。図書室の中に入ると、床に血の跡が…。


奥の棚の陰で、佐々木さんの遺体が発見された。


彼女は胸を刺され、すでに冷たくなっていた。


近くには、紙に書かれたメッセージが落ちていた。


「星見の真実を暴く者はタヒぬ」と血で書かれている。




「〇人事件…! 学校でこんなことが…」リナが震えながらスケッチブックを握った。




「落ち着こう。警察に連絡する前に、状況を把握しないと」僕はノートを取り出し、現場を観察し始めた。




血の跡は棚の間から入り口に向かって伸びている。だが、妙な点があった。血の量が少ないし、傷口が不自然に浅いように見える。


その時、校長先生と警察が駆けつけた。




「みんな、すぐにここから出なさい! これは重大事件だ」校長先生が叫んだ。




警察官が現場を封鎖し、僕たちは廊下に避難させられた。


警察の初動捜査によると、佐々木さんは昨夜、図書室で刺〇されたと推定された。


犯行時刻は夜9時頃で、窓が開いていたことから外部侵入の可能性が高いとされた。


しかし、僕には引っかかる点があった。血の量が少なすぎるし、佐々木さんの姿勢が不自然だ。まるで自分で倒れたように見える。




「シュウ、犯人は誰だと思う?」ケンタが不安そうに尋ねた。




「まだ分からない。でも、トリックがある気がする。血の量や傷口が不自然だ。タクミ、昨夜の図書室の監視カメラのログ、調べられる?」




「うん、校長室のパソコンからアクセスできるかも。夜に試してみるよ」タクミが頷いた。




「リナ、現場のスケッチを詳しく描いて。手がかりになるかもしれない」僕は指示を出した。




放課後、僕たちは校長室に忍び込み、タクミが監視カメラの映像を確認した。


夜9時頃、図書室に一人の人影が入るが、顔は暗くて分からない。


だが、その人影は何か大きな袋を持っていた。そして、出ていく時には空手で、佐々木さんの姿が消えている。




「袋…? 何か運び出したのか?」カナエが首をかしげた。




「そうだ。血の量が少ないのは、犯人が血を隠した可能性がある。佐々木さんが死んだ瞬間を隠すために、トリックを使ったんだ」僕は考え込んだ。




その夜、僕たちは再び図書室に潜入した。


警察の封鎖が解けた後で、誰もいない時間を見計らった。棚の陰を調べると、血の跡が本棚の裏に隠れるように伸びていた。


そこに、小さな血の染みた布切れが見つかった。




「シュウ、これ…誰かの服の切れ端だよ」リナが拾い上げた。




「これが鍵だ。犯人は血を隠すために、佐々木さんの体を動かして、血を別の場所に移したんだ。だが、なぜ?」僕はノートにメモした。




その時、図書室の窓から物音がした。


振り返ると、黒い影が逃げていくのが見えた。




「追うぞ!」ケンタが叫び、僕たちは窓から外へ飛び出した。




だが、影は校庭の茂みに消えてしまった。




「シュウ、犯人がまだ近くにいるかも…」タクミが息を切らした。




「うん。でも、トリックが分かれば犯人を特定できる。血を隠す理由…。佐々木さんが自分で傷をつけた可能性もあるのか?」僕は考えを深めた。




後日、警察の鑑識結果が出た。


佐々木さんの傷は浅く、致命傷ではなかった。彼女は失血〇したのではなく、ショックで意識を失い、その後窒息した可能性が高いとされた。さらに、血の多くが本棚の裏に隠されており、犯人が意図的に血を移動させた痕跡が発見された。




「自傷? それで窒息?」カナエが驚いた。




「いや、犯人が佐々木さんに自傷をさせ、その後窒息させたんだ。トリックはそこにある。佐々木さんを操って血を隠させ、死を偽装したんだ」僕は推理をまとめた。




「でも、誰がそんなことできるの?」リナが尋ねた。




「それが次に解く謎だ。監視カメラの影と、この布切れを手がかりに犯人を追う」僕は決意を固めた。




(Ep7:前編 ~完~)


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