幕間1:救出劇の残響と新たな憶測
1.探索者専門掲示板:事件報告スレッド
【スレッドタイトル】
【緊急】旧渋谷地下街ダンジョンで大規模崩落&モンスター異常発生! 巻き込まれた奴いる? Part.5
78:名無しの目撃者A
昨日、旧渋の低層でシルバーウルフの群れに襲われたんだが、マジで死ぬかと思ったわ。
あんなとこに、なんであんなのが複数もいるんだよ……。
79:名無しのサバイバー
>>78
俺もだ! 仲間とはぐれて逃げてたら、通路が崩れて閉じ込められた……。
もうダメかと思ったけど、なんか壁ぶち破って助けてくれた人がいたんだよ!
80:名無しの目撃者B
>>79
壁ぶち破った!? マジで!?
俺が見たのは、シルバーウルフの群れを一人で蹴散らしてたフードの男だけど、同一人物か?
81:名無しのサバイバー
>>80
たぶんそう! フード深く被ってて顔はよく見えなかったけど、声は若い男の人だった。
なんか、めちゃくちゃ冷静で、あっという間に壁に穴開けてくれたんだぜ……。
怪我の手当てもしてくれたし、マジで命の恩人だ。
82:名無しの情報通
例の「銀光苔マスター」と同一人物説が濃厚だな。
採取スキルだけじゃなくて、戦闘能力もガチでヤバいらしい。
しかも、DRMの救助隊が来る前に姿を消したって話だぜ。
83:名無しの懐疑派
また都市伝説かよw
そんな奴が本当にいたら、とっくにDRMがスカウトしてるだろ。
84:名無しのサバイバー
>>83
いや、マジなんだって! あの壁の壊れ方、人間の力じゃねえよ、絶対!
なんか、こう……ドゴン!って一発で……。
DRMの人も、現場見て絶句してたぞ。
85:名無しの考察班
シルバーウルフの異常発生と、その後の崩落。そして謎の救助者。
これ、偶然にしちゃ出来すぎじゃね?
何か裏でヤバいこと起きてる前兆なんじゃ……。
86:名無しの目撃者A
確かに、あのシルバーウルフの出現は異常だった。
まるで何かに“呼ばれた”みたいに、急に湧いて出てきた感じだったし。
87:名無しのサバイバー
助けてくれたフードの人、なんか事情知ってる感じだったのかな……。
「早くここから離れた方がいい」って、それだけ言って去って行ったけど。
88:名無しのまとめサイト管理人
【速報】旧渋谷地下街ダンジョンに「サイレント・ブレイカー」出現か!?
「銀光苔マスター」との関連は? 詳細情報求む!
◇ ◇ ◇
2.動画共有サイト:コメント欄より抜粋
【動画タイトル】
【衝撃映像】ダンジョン内でモンスターに襲われ九死に一生を得た探索者の手記(音声のみ)
(※動画内容は、第12話で蓮に助けられた学生の一人が、恐怖体験を語るもの)
コメント欄:
ユーザーX:
うわああ、ガチで怖かっただろうな……。生きててよかった。
でも、助けてくれたフードの人、何者なんだろう? 神か?
ユーザーY:
壁殴り代行業者かな?w
ユーザーZ:
これ、例の「銀光苔マスター」じゃない? 掲示板で噂になってる。
採取も戦闘も救助もできるとか、万能すぎだろ……。
ユーザーAlpha:
DRMは何やってんだよ、こんな危険な状況を放置して。
もっと探索者の安全管理しっかりしろよな。
ユーザーBeta:
Alpha
いや、今回はDRMの救助隊もちゃんと来てくれたって話だぞ。
ただ、その前に謎の人が解決しちゃっただけで。
ユーザーGamma:
てか、シルバーウルフが低層に複数って時点で異常事態だろ。
ダンジョンの生態系、最近おかしくね? 魔瘴濃度とか上がってんのかな。
ユーザーDelta:
フードの男、実は異世界からの転生者で、チートスキルで無双してるとかだったら胸熱なんだがw
ユーザーEpsilon:
Delta
お前みたいなのがいるから、まともな議論ができなくなるんだよw
でも、あの壁破壊は常人の力じゃないよな……。
強化系スキル持ちの上級探索者か、あるいは……。
◇ ◇ ◇
3.ホーリィ商会:リサの独り言
薄暗い店内。リサはカウンターに肘をつき、情報端末の画面に映し出された探索者掲示板の書き込みを眺めながら、くつくつと喉を鳴らしていた。
(……サイレント・ブレイカー、ねぇ。相変わらず、あいつは派手にやってくれるじゃないか。おかげで、こっちの“商品”の宣伝にもなって助かるけどさ)
画面には、「銀光苔マスター」や「サイレント・ブレイカー」に関するスレッドが乱立し、様々な憶測が飛び交っていた。
なかには、ホーリィ商会の名前を挙げ、「あの店なら何か知ってるんじゃないか」と勘繰るような書き込みも散見される。
(……ほんと、好奇心旺盛なこと。まあ、そうやって話題にされるのは嫌いじゃないけどね)
興味と警戒を織り交ぜるように目を細めながら、リサは指先で画面をスクロールしていく。
無関係を装いながらも、その“中心人物”が誰かを知っているからこその余裕と、ちょっとした楽しみ――そんなものが、彼女の中には確かにあった。
(それにしても、シルバーウルフの異常発生に、大規模な崩落、ねぇ……。ただの偶然にしちゃ、タイミングが良すぎる。まるで、何者かが蓮の“力”を試しているみたいじゃないか……)
ふと、リサの脳裏に、情報屋ノアの顔が浮かんだ。
あの男なら、これくらいの“演出”は平然とやってのける。
目的は謎だが、無意味な騒ぎは起こさない主義なのは知っている。
あるいは、もっと別の、得体の知れない何かが――彼女の把握を超えた何者かが――すでに動き始めているのかもしれない。
どちらにしても、単なる偶然ではない。
リサは、確かな直感としてそう感じていた。
(まあ、どっちに転んでも、あたしにとっては面白い展開だけどね。……さて、蓮。あんたは次に、どんな“伝説”を作ってくれるんだい?)
リサは、悪戯っぽく微笑むと、手元の端末を閉じた。
掲示板の熱狂も、動画サイトの反響も、すべては彼女にとって、今動き出した物語の余波にすぎない。
ホーリィ商会の一角、誰もいないカウンター越しに、リサは静かに立ち上がる。
店内の空気は薄暗く、静まり返っていたが、彼女の目はどこか楽しげに輝いていた。
棚の奥にしまってあった古いデータファイルを取り出し、並行して進めていた別件の情報照合を始める。
探索者ネットワーク、裏ルート、素材の流通、そしてノアの動き――どれもが、蓮を中心に少しずつ結びついていくようだった。
彼女にとって情報は武器であり、遊戯でもある。
盤上の駒は一つずつ位置を変え、誰かの手によって動かされていく。
だがその中で、蓮という存在は――もはや単なる“駒”ではなかった。
意図せずして盤を揺らす存在。
あるいは、盤そのものの形を変えてしまう“例外”。
その影響は、すでに都市に、そしてこの世界に小さくない波紋を広げつつある。
それを止めようとする者も、利用しようとする者も、これからますます増えていくだろう。
リサは椅子に腰を戻し、端末の画面を再び開いた。
蓮に関する新たな書き込みが通知に上がっている。
(やれやれ、こりゃあますます忙しくなりそうだ)
だが、その口元に浮かぶ笑みは、どこか期待に満ちていた。
彼女のゲーム盤の上で、駒はますます複雑に動き始めている。
ーーーーーーーーーー
【あとがき】
幕間「救出劇の残響と新たな憶測」をお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、蓮の意図せぬ“救出劇”が、インターネットの匿名掲示板や動画サイトを通じて、どのように拡散され、人々の間で様々な憶測を呼んでいくのか、そしてそれをリサがどう見ているのか、という視点でお届けしました。
「サイレント・ブレイカー」「銀光苔マスター」――。
本人の意思とは裏腹に、蓮の行動は新たな都市伝説のように広まり、賞賛と警戒、そして尽きない好奇の的となりつつあります。
リサの目には、そんな蓮の存在が、そして彼を取り巻く状況が、どのように映っているのでしょうか。彼女の暗躍にもご期待ください。
さて、この喧騒の裏で、世界の歪みは静かに、しかし確実に進行しています。
いよいよ次話より、物語は新たな局面へと突入します。
第2章「歪む世界と、迫る選択」では、蓮が直面する新たな脅威、深まる謎、そして彼自身の内なる葛藤が描かれていく予定です。
彼の行動が、そして彼を巡る人々の思惑が、どのように交錯していくのか。
引き続き、物語の行く末にご注目いただけますと幸いです。
次回更新も、どうぞお楽しみに。
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