11,覚醒(3)
「雄介、長老からのメッセージを伝えます。遂に宇宙の膨張が完全に停止する時が来た。君の魂のオーラで全てを救うのだ。それが君の魂の定めだ」
「アロン、分かった。遂にその時が来たんだね。この宇宙の全ての人々の為に頑張るよ」
雄介は、地球を眺めながら瞑想を始め、宇宙波動エネルギーに尋ねたた。
『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。もう直ぐ宇宙の膨張は停止して、完全に幸せの星に成っていない惑星は淘汰されるのですか』
すると雄介の左の耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。
「この宇宙の全ての惑星の運命が、僕に掛かっているんだ」
『宇宙波動エネルギーよ、地球もまだ私の魂がこのままなら淘汰される運命なのですか』
すると再び雄介の左の耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。
雄介は、心の底から決意し目をつむり瞑想に入った。そして全意識を集中させて、宇宙のすべてに心を向けた。すると遂に宇宙の膨張が完全に停止してしまったのだ。
雄介にも宇宙の膨張が完全に停止したことが感じられた。宇宙の膨張が停止すると、宇宙の全てが停止した。宇宙の営みも、全ての時間も、全ての人々の心も、魂も、潜在意識も、光も、宇宙の全てが停止し宇宙全体が暗闇に包まれた。
すると文明が遅れた惑星に異変が起こり始めた。そんな惑星は異次元空間に吸い込まれるように一つずつ姿を消していき始めたのだ。雄介には、惑星が姿を消していきだしたのが感じられた。そして遂に地球が異次元空間に吸い込まれる順番が来たのが雄介に分かった。しかし雄介の心は落ち着いていた。
「僕は望んではいけない。心の中を愛と感謝でいっぱいにしていこう。愛と感謝だ。愛と感謝の心だ。愛、そして感謝しかないんだ。僕の心を家族と一つにしよう。全ての人々と一つにしよう。宇宙の全てと一つにしていこう。この宇宙の全ての人々は愛に包まれ最高に幸せなんだ」
雄介は、ゆっくりと愛と感謝の気持ちで心を満たした。そして家族を思い出し家族と心を一つにした。全ての人々とも心を一つにした。そして宇宙の全てと心を一体化させた。
「そうだ、そうなんだ。やっと僕は気が付いた。人はそれぞれの運命を背負って生まれて来る。幸せに成れる運命もあれば、不幸に成る運命を背負っている人もいる。しかし、どんな運命だとしても、その人の遺伝子の中には必ず幸せになれる素晴らしい素質を備え持っているんだ。
世の中で大成した人や自分の夢を叶えた人、幸せな人生を歩んでいる人は、その遺伝子に秘められた良い可能性を最大限に発揮できた人なんだ。その自分の中に秘められた素晴らしい良い可能性を最大限に引き出す為には、愛と感謝の心を使っていく必要があるんだ。
もし悪い心を使ってしまえば遺伝子の中にある悪い素質が出てしまって、幸せには成れない。遺伝子の中の良い素質を出していく為には、見返りを求めず、真心で人の幸せを願い、全てに愛と感謝の心を持って人の幸せの為に行動していくことが大切なんだ。
よし、僕は地球の全ての人、この宇宙の全ての人々の幸せの為に僕の心を使う。人々の幸せを願い僕の魂から出るオーラを使う。人々の幸せが僕の幸せなんだ。人々の幸せの為に生きることが、自分の幸せとして返ってくる。
この方法を使えば、この宇宙に存在する全ての人が、その人の遺伝子の中に隠れている良い可能性を最大限に発揮して、運命を幸せの方向に変えていくことができるんだ。これがこの宇宙最大の幸せの法則なんだ」
雄介は、遂に大切な幸せの法則に気が付いたのだ。雄介は人々が幸せに暮らす姿を思い描いた。自分の魂から強いオーラが出て、地球や宇宙の全ての人々が愛と幸せに包まれている姿を想像した。望んだり願ったりするのではなく、人々が幸せに暮らす姿が当たり前のこととして、そして心を感謝で満たした。 すると雄介の魂が徐々に変化を始めた。遂に雄介の魂が覚醒を始めたのだ。
「おお、いま僕の魂が覚醒を始めたのを感じる。体全体が身震いしている。凄いエネルギーを感じる。なんて素晴らしいことか。なんて凄いことか。こんな感覚になったのは初めてだ。心の底から嬉しい気持ちが沸いてくる。心の底から愛と感謝の心が沸いてきている。この魂の力を人々の為に使おう。
この魂の力で全宇宙の人々を幸せにしよう。全てに感謝だ。なんてありがたいことか。なんて素晴らしいことなのか。心の底から熱い物が込み上げてきた。感激の涙が溢れて止まらない。ああ、ありがたい。ああ嬉しい。心から全てに感謝だ。ありがとう」
雄介の魂は遂に覚醒した。そして雄介の魂から強いオーラが出だした。雄介の全身から眩いばかりの光が発せられ、その強いオーラの光が宇宙全体に一瞬で広がり、宇宙の全てを包み込んだ。
「わー凄い。遂に僕の魂からオーラの力が発せられたんだ」
すると、今まで全てが停止していた宇宙が再び動き出した。宇宙の営みも、時間も、全ての人々の心も、魂も、潜在意識も、光も、宇宙の全てが再び元のように動き出したのだ。
地球も異次元空間に吸い込まれてしまう寸前で助かった。宇宙の全てが停止したとき、全ての惑星の人々の意識も停止していた。しかし雄介のオーラで人々の意識もよみがえり、雄介のオーラが降り注いできたのを感じた。人々は、意識を取り戻した。人々が口々に言った。
「いま気を失っていたのだろうか。しかし凄いエネルギーを感じて目が覚めた」
「なんだか、心が凄く熱く、幸せな気分がする」
「涙が自然と溢れて止まらない。心の底から幸せが沸き上がってくる」
雄介は、全ての人々の心が感じられた。
「ああ、感じる地球もなんとか間に合った。幾つかの惑星は異次元空間に消えて行ったようだが、ほとんどの惑星は間に合った。人々の意識が復活し、人々の心が幸せに包まれたのを感じる」雄介の魂は感激で震えていた。
宇宙の中の全てが復活したかのように感じた。しかし、全宇宙の中で一つだけ復活していない物があった。それは、雄介の肉体だけは、もうこの宇宙には存在していなかったのだ。
雄介は、雄介の肉体と引き換えに魂が覚醒し、雄介の魂からオーラが出だしたのだった。今は、雄介の魂がこの宇宙と言っていい存在になっていた。雄介は、魂のままこの宇宙全体に存在していた。
雄介にも自分の肉体が無くなったことを感じられた。しかし雄介は少しも寂しくはなかった。雄介は心の底から嬉しかった。自分の魂のオーラで地球や宇宙を、そして全ての惑星の人々を救うことができて、嬉しくてたまらなかった。
『ありがたい。本当にありがたい。僕の肉体は、もうこの世には存在していないみたいだ。でも僕は、僕の魂でこの宇宙の全ての人を救うことができたんだ。なんてありがたいことなのか。これは感謝でしかない。僕は最高に、最高に幸せだ』
雄介は、涙が止まらなかった。肉体が無くなり魂だけの存在になったが、嬉しさのあまりに涙が止まらなかった。雄介の魂が、ふと宇宙波動エネルギーを探してみた。すると宇宙波動エネルギーは、新しく誕生させた別の宇宙を育て始めているのが分かった。魂となった雄介は、宇宙波動エネルギーに尋ねてみた。
『宇宙波動エネルギーよ、あなたはすでに新しい宇宙を育てているように感じるのですが、それはなぜですか』すると宇宙波動エネルギーの声が聞こえた。
『あなたが存在している宇宙は、今度はあなたの真心の魂で守っていきなさい。私は新しく生まれた宇宙を育てていきます。これがこの宇宙の定めなのです』
雄介の魂は、宇宙波動エネルギーの言葉に震えた。
『僕がこの宇宙を、僕の真心の魂で守っていくんだ。これが僕の魂の定めなんだ。なんて凄いことか、なんてありがたいことなのか』
雄介の魂が、ふと周りを感じてみると、雄介の魂が今までの宇宙のエネルギーとして存在し、そして幾つかの別の金色の宇宙にもそれぞれに宇宙を守っている魂が存在しているのが感じられた。
『なんと凄いことなのか。僕の魂がこの宇宙のエネルギーとなっている。そして他にも数えきれない程の宇宙がそれぞれの魂に守られ存在しているではないか』
宇宙波動エネルギーは、宇宙の膨張を止めると同時に、その宇宙に存在していた選ばれし魂に後をまかせ、また別の宇宙を新たに創るのが目的だったのだ。
アロンやソニヤ、良太や由香里、雄介の家族が、雄介のオーラが出だしたのが分かった。そして皆が雄介を探した。しかし、雄介を見つけることができない。アロンが雄介を呼んだ。
「雄介、雄介。君はいったい何処に行ったんだ。君のオーラの力で全てが助かった。全ての人々が幸せになれた。ありがとう。雄介、早く帰って来てくれ。雄介何処にいるんだ」
すると雄介の声が皆に聞こえてきた。
『みんな、ありがとう。アロン、ソニヤさん、良太、由香里、それにお父さん、お母さん、陽子。みんな僕のことを心配してくれてありがとう。でも、もう僕の身体はこの世に存在していないんだ。僕は魂だけの存在になって、この宇宙を包んでいる。みんな、もう心配しなくていいよ。僕はこれから僕の魂でみんなを見守っていくからね』
雄介の声を聞いた皆は驚いた。
「なんだって、雄介の身体はもうこの世に存在していないって」アロンは、 驚きのあまりに頭の中が真っ白になった。他の皆も驚いた。
「雄介さん、あなたは自分の肉体と引き換えに、この宇宙を救ってくれたの」ソニヤが声を震わせ、目には涙を浮かべている。
「雄介、君はなんて凄い人間なんだ」良太も頬に大粒の涙を流している。
「雄介君、ありがとう。本当にありがとう。地球や宇宙の為に頑張ったのね。本当にありがとう」由香里も手を組み、目にいっぱい涙を溜めて空を見上げている。
「雄介、雄介」
「お兄ちゃん」
雄介の父親と母親は言葉が出ない。妹は、両親に寄り添い空を見上げ泣いている。雄介は、涙ぐむ友人や家族の姿を見て、皆との思い出がよみがえってきた。
アロンが初めて雄介の目の前に現れて驚いたこと。シップに初めて乗って宇宙空間に浮かぶ美しい地球を実際に見て感動したこと。ソニヤに初めて出会い胸がときめいたときのこと。良太や由香里とモナム星でプレゼンが成功し喜んだこと。
そして、雄介がまだ小さい頃の家族との思い出。父親と公園で日が暮れるまで夢中でキャッチボールした思い出。雄介が泣き虫で泣いていると母親が優しく抱きしめてくれたこと。妹と二人で大好きな絵本を一緒に読んだこと。
家族四人で手を繋ぎ近くの公園を散歩したこと。家族で温かい食卓を囲み楽しく笑いながら過ごした思い出。雄介の心に友人や家族との楽しい思い出が、次々とよみがえってきた。雄介の胸は張り裂けるほど熱くなった。
雄介は、涙が止まらない。優しい友人や家族を思い涙が止まらない。もう実際には会うことができなくなってしまった皆のことを思い、涙が止まらなかった。
『アロン、ソニヤさん、良太、由香里、そしてお父さん、お母さん、陽子。今まで本当にありがとう。もう皆には会えなくなってしまったことを許して下さい。でも僕は、皆に出会えて本当に良かった。本当に嬉しかった。そしてお父さん、お母さんの子供として産まれて来られて幸せでした。この家族で本当に幸せでした。ありがとう。本当にありがとう』
雄介の言葉を聞いた皆は涙が止まらなかった。雄介も泣いた。家族や友人が、自分のことを思って泣いてくれているのを見て、雄介も涙が溢れて止まらなかった。家族や友人も泣いた。雄介が肉体を犠牲にしてまでも、自分達を救ってくれたことに感謝で胸がいっぱいだった。宇宙の全ての人々も命あることに幸せを感じ、そして雄介に感謝して涙が溢れて止まらなかった。
『みんな、本当にありがとう。僕は今までとても幸せでした。みんなと一緒に地球や宇宙の幸せの為に、一生懸命に生きてこられたことを心から幸せに思っています。本当に、本当にありがとうございました』
雄介の声を聞いた皆は心から雄介に感謝した。そして雄介の魂は誓った。
『いま僕の魂は、この宇宙を守っていく為に存在している。僕はこの魂の力で、この宇宙の全ての人を愛と感謝で包み、全ての惑星を平和にしていくことを誓う。永遠に、この地球と宇宙の全てを幸せにしていくことを心に誓う。そしてこの宇宙の全てに誓う』
雄介の魂が守って行く宇宙の全ての人々は、雄介の偉大なる魂のオーラによって、争いも災いもまったくない、永遠の健康と、この上ない幸福を手に入れたのだった。
完
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