11、覚醒(2)
アロンから雄介に連絡が入った。
「雄介、その後どうですか。君の魂は向上したかい。オーラを出すことができだしたかい」
「アロン、何とか頑張ってはいるんだけど、まだオーラを出すことができないんだ」
「そうか、頑張ってくれよ。雄介、長老からのメッセージを伝えるよ。長老がお話しだったことは『宇宙の膨張スピードが更に減少しつつある。その影響でこの宇宙全体に歪が生じている。今後その歪が原因で多くの惑星に様々な災害が発生してくるだろう。
しかし全ての惑星は、人々の努力で幸せの星に近づきつつある。後は天野雄介のオーラの力さえ出れば、全ての惑星を幸せな星に変えることができて、災害さえも抑えることは可能だ』と言っておられるんだ」
「そうなんだ。僕のオーラ次第なんだね」
雄介は、アロンの言葉に少し焦りを感じた。
「雄介、焦らなくてもいい、確実に魂を向上させることに専念してくれ。君にはそれが必ずできるはずだ」
「分かった。アロンありがとう。この宇宙の全ての人々の為に頑張るよ」
雄介は、それから更に頑張った。しかし中々思うように雄介の魂は向上しなかった。しばらくして多くの惑星から災害が起こり出したと連絡が入り出した。それは地球も例外ではなかった。地球にも大地震や津波、台風などの災害が連続して発生しだしたのだ。
雄介と良太、由香里の三人が月にある自分達の会社の部屋で話をしている。
「雄介、この宇宙や地球は今後どうなっていくんだ」良太が真剣な顔で雄介に聞いた。
「大丈夫だ良太、安心してくれ。この宇宙も地球も全ての惑星も助かるから」
「でも雄介君、早くしないと多くの犠牲を出してしまうわ。すでに地球からも災害で大変なことになってきていると連絡が入っているのよ」由香里も真剣な顔で話した。
「そうだね早くしないとね」雄介も真剣な顔で言った。
「雄介、宇宙波動エネルギーと直接話をすることはできないのか。どうすれば君の魂からオーラ出すことができて、そしてこの宇宙や地球を救うことができるのか、直接話をしてみれば解決策が見つかるんじゃないのかな」
「今まで直接話をしたことは無いけど、そんなことができるのか尋ねてみるよ」
そして雄介はその場で瞑想に入り宇宙波動エネルギーに尋ねた。
『宇宙波動エネルギーよ、お尋ねします。私があなたと直接話をすることは可能でしょうか』すると雄介の左の耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。雄介はゆっくりと目を開けた。
「雄介君どうだったの」由香里が聞いた。
「直接話しができるみたいだ。よし、良太、由香里、君達も一緒に宇宙波動エネルギーとの話を聞いてくれないか。僕一人では不安な気がするんだ」雄介は断然やる気が出てきた。
それから良太と由香里は雄介の左右に座り手を繋いだ。そして三人は意識を集中して瞑想を始めた。すると三人の意識は一つになり意識だけが建物の外に出て行った。そしてどんどんと宇宙空間に出て、一瞬にして地球も見えなくなり三人の意識は更に宇宙空間の中を進んで行った。
太陽系の外に出て、銀河系も一瞬で砂粒のように見えた。更に物凄いスピードで進んでマゼラン星雲やアンドロメダ銀河も一瞬で見えなくなり、更に三人の意識は宇宙空間を進んだ。そして遂に三人の意識は不思議な場所にたどり着いた。
「良太、由香里大丈夫か」
「ああ、僕は大丈夫だ。でも今までに感じたことのない不思議な感覚だよ。自分の身体が無くなった感じだ。それにここはいったい何処なんだ」
「ここは、宇宙の外の空間のようだ」
「宇宙の外だって、信じられないよ。そんな所まで僕たちは来てるの」
「雄介君、宇宙の外にこんな空間が有るなんて想像もしていなかったわ。でもここに宇宙波動エネルギーが存在しているのね」
「そうだと思う、意識を集中させて宇宙波動エネルギーの所に行くように念じていたらここまでたどり着いたよ」
三人の意識が居る空間は、辺りが真っ白で何も無い空間のように感じた。しかし良く見ると自分達の目の前に紺色の丸い、もやもやとした塊が浮いているのが見えた。
「雄介、あの紺色の丸い、もやもやとした塊は何なんだい」
「あれが僕達の宇宙のようだ」
「あれが私達の宇宙、私達はいま宇宙を外から見ているのね。凄いわ」
「よし、宇宙波動エネルギーを呼んでみよう」そして雄介は、宇宙波動エネルギーを呼んだ。
「宇宙波動エネルギーよ私の声が聞こえますか。聞こえたらお願いです。私達と話をしてください」
すると三人の意識の中に女性の声が聞こえて来た。その声はとても澄んだ鈴の音のような透き通った声だった。三人は今まで聞いたことが無いような優しい声に感動した。
「ようこそ皆さん。私の所に来て下さったのですね」
「あなたが宇宙波動エネルギーですか。姿は見えませんがこの空間におられるのですね。あなたはこの空間で何をされているのですか」
「私は、この空間であなた達が存在している宇宙を今まで育ててきました」
「宇宙波動エネルギーよ、私は長老と呼ばれている人物から、あなたの力が最近弱り始め宇宙の膨張が低下して、やがて停止してしまうと聞きました。それは本当ですか」
「私の力が弱ったのではありません。あなた達の宇宙が成長期を終えて成熟期に入りつつあるのです。だから成長の力を弱めているのです」
「そうなんですね。ではこの段階で文明が遅れた幸せではない惑星が、ダークパワーによって淘汰されているのはなぜなのでしょうか」
「宇宙と言う物は、その宇宙の中に存在している魂が成長する場所なのです。成長する段階では魂は自由です。怒ろうが、悲しもうが、憎もうが、そんな成長できていない魂でも自由に存在しています。しかしそんな成長できなかった魂のままでは、成熟期に入った宇宙では存在することはできません。感謝や喜び、慈しみや愛情に満たされた成長した魂でなければ存在できないのです」
「それで完全に成熟期に入る前に成長できていない魂は淘汰されているのですね」良太が言った。
「私達の宇宙では、まだ成長できていない魂が存在する惑星が多いと思うのですが、そんな惑星が成長できるまで、宇宙の成長期を更に続けていくことはできないのでしょうか」由香里が宇宙波動エネルギーに尋ねた。
「あなた達の宇宙が、成長期を終えて成熟期に入るのは定めです。それを変えることなど誰にもできません」
「分かりました。では宇宙の膨張が完全に止まり宇宙が成熟期に入った時に惑星の人々の魂が感謝や喜び、愛情に満たされた幸せの惑星なら淘汰されることなく存続していけるのですね」
「そうです」
「だとしたらこの宇宙に存在する多くの惑星が幸せの惑星になる為に、私の魂から出るオーラが必要だと聞きました。私のオーラはなぜ必要なのですか」雄介が宇宙波動エネルギーに尋ねた。
「宇宙には、その宇宙を守っていくオーラの力が必要なのです。今までは私の力であなた達の宇宙を守り成長させてきましたが、わたしの役目はここまでです」
「次にあなたは何をされるのですか」
「私は次に新しい宇宙を創らなければならないのです。良くごらんなさい。ここには多くの宇宙が存在しています。あなた達の宇宙が成熟期に入ると、別の新しい宇宙を創くり育てていくのが私の役目なのです」
雄介達三人が辺りを見渡すと、その空間には遠くに幾つもの金色をした、もやもやとした塊が浮かんでいた。
「おい雄介、あの金色をした塊の全てが成熟期に入った別の宇宙と言うことなの。僕には信じられないよ」良太が驚いている。
「あの赤い小さな塊は何なのですか」由香里が比較的近くに浮かんでいた赤く、もやもやとした塊を見つけて尋ねた。
「あれは、私があなた達の宇宙の次に育ていく宇宙です。まだ生まれたばかりで熱い状態なのであんなに赤いのです。あなた達が存在している宇宙は成長期なので紺色をしています。完全に成熟期に入ると金色に変わるのです」
雄介達は、今まで想像もしていなかった宇宙の壮大さに驚くばかりだった。
「宇宙波動エネルギーにお尋ねします。あなたが次に新しい宇宙を育てていく代わりに私達の宇宙に、なぜ私のオーラの力が必要なのですか。なぜ私でなければならないのですか」
「あなたの遠い先祖に、魂から強いオーラの力を出していた人がいたから、あなたの魂はその可能性を秘めているのです」
「え、僕の先祖に」
「あなたの魂は、この宇宙を守っていける可能性を秘めています。あなたの遺伝子の中には強いオーラが出せる情報が隠れているのです。そのような可能性を持った人でなければ強いオーラを出すことはできないのです。あなたに限らず全ての人々の遺伝子の中には素晴らしい良い可能性を秘めたものが必ず備わっています。
でもそれと同時に悪い素質も必ず持ち合わせているのです。その素晴らしい良い可能性だけを最大限に発揮していくことが大切なのです。しかしほとんどの人が、その良い可能性だけを発揮する術を知らないのです」
「私も私の遺伝子に秘められた良い可能性を発揮する術を知りません。いくら魂からオーラを出そうと努力しても一向にオーラが出ません何故なのでしょうか」
「それはダークパワーが教えてくれるでしょう」
「ダークパワーが? それはどういう意味なのですか」
「あなた達の後ろをごらんなさい」
雄介達が後ろを振り返ると、そこには黒く大きなもやもやとした塊が有った。
黒い塊が徐々に雄介達に近づき、やがて雄介達を飲み込んだ。今まで真っ白な空間に居た三人は、真っ黒な霧に包まれた感じになった。三人の意識は動揺した。
「雄介、僕達はどうなるんだ。ダークパワーの力で消滅してしまうのか」良太が不安と恐怖で泣きそうな声で言った。すると三人に風が吹いてきた。その風は徐々に強さを増してきた。風は遂に嵐のような強い風となって三人に襲い掛かった。
「わー、雄介どうするんだ。なんでこんなことになるんだ」
「良太、落ち着くんだ」
「落ち着けって無理だよ。もう手が離れそうだ。吹き飛ばされるー、助けてくれー」良太が雄介と繋いでいた手が強い風の力で引き離されそうになった。
「雄介、僕の手を離さないでくれ。お願いだ。助けてくれー」強い風で二人の手は離れそうになっている。遂にあと指先一本だけで繋がれている。
「良太、大丈夫か。怖がらないで恐怖心を無くすんだ」
「もうダメだ。わー」良太の意識は強い風で遂に雄介の手を離れ、一瞬にしてどこかに飛ばされて行ってしまった。
「良太ー」
「雄介君、良太君はどうなったの。心配だわ。私達はどうなってしまうの」
「由香里、大丈夫だ。落ち付くんだ」
由香里も恐怖と良太を心配して震えている。そしてダークパワーの強い風で由香里と繋いでいた手も離れそうになってきた。
「雄介君、手が離れそう助けてー」
「由香里、心を落ち着かせるんだ。ダークパワーはたぶんマイナスの感情に反応しているんだ。恐怖心や心配する気持ちはマイナスの感情だ。心配しなくても大丈夫だ。心を落ち着かせるんだ」
「そんなこと言っても無理よ。こんな状態で心なんか落ち着かせられないわ。キャー」
雄介と繋いでいた由香里の手も離れ、由香里の意識も一瞬でどこかに飛ばされて行ってしまった。一人になった雄介は考えた。
「ダークパワーはマイナスの感情に反応しているんだ。だから成長できていないマイナスの魂が多い惑星を淘汰しているんだ。僕の魂が成長できないのも僕の心の奥底にマイナスの感情があるからだ。このマイナスの感情を無くさなければいけないんだ」雄介は、ダークパワーの強い風の中で瞑想を始めた。そして自分の心の中にあるマイナスの感情を探した。
「僕の心の中のマイナスの感情は何なんだ。そうだダークパワーに聞いてみよう」
雄介はダークパワーに勇気を出して尋ねた。
「ダークパワーよ、あなたは私の心の奥底にあるマイナスの心に反応しているのですか」
すると雄介にダークパワーの声が聞こえてきた。その声はとても低く恐ろしい声だった。
「そうだ、お前の心の奥底にマイナスの感情が有る限り、お前は俺に勝ことなどできないんだ」するとダークパワーの風は更に強さを増してきた。
「ダークパワーよ、そのマイナスの感情とは何なのですか。ただ僕は自分の魂からオーラを出して、地球や宇宙を守りたいだけなのに、どこにマイナスの感情が隠れているのですか」雄介がそう尋ねると更にダークパワーの風は強くなり、雄介の意識を吹き飛ばそうとした。雄介は、心を落ち着かせ瞑想を続けた。そして雄介は気が付いた。
「そうだ、これだ。更に風が強くなったのは、これがマイナスの感情だからだ。僕は今まで何とか自分の魂からオーラを出して、地球や宇宙を救いたいと願っていた。このことに執着しているからなんだ」雄介は更に心を落ち着かせ自分の心の中にある執着の心を無くしていった。
「そうだ、全てのことに愛と感謝だ。願ったり望んだりしてはいけないんだ。愛と感謝の心しかないんだ」
雄介は瞑想し自分の心の中を愛と感謝の気持ちで満たした。すると強い風は徐々に収まりだした。
「ダークパワーよ、ありがとうございました。あなたのお蔭で私は気が付きました」
雄介は瞑想を続け、心の中を愛と感謝の気持ちでいっぱいにした。
「おい、止めろ。俺の力が消えていく。止めろ、止めるんだー」ダークパワーが叫んだ。
雄介は更に瞑想を続け自分の心の中に有る執着の心を滅していった。そして 心の中を全てに感謝する心と、愛と喜びで満たしていった。
「ウワー」ダークパワーの悲壮な叫びが聞こえた。
すると徐々に黒い霧のような物も晴れて、辺りは元の白い空間になった。雄介は瞑想を止め宇宙波動エネルギーに言った。
「宇宙波動エネルギーよ、私は分かりました。なぜ私の魂からオーラが出ないのか。私の心の中には執着と言うマイナスの心がずっとありました。なんとかオーラを出したい。オーラを出して地球や宇宙を救いたいと言う執着がありました。このマイナスの感情がブレーキを掛けていたのですね」
「そうですね。何とか、何とかと、念を持ってしまうと物事は上手くいきません。執着を無くして、何事にも無心で取り組む事が大切なのです。これは全宇宙の幸せの法則なのです」
「全宇宙の幸せの法則」
「ここに存在する多くの宇宙に共通した法則を、もうあなたは知っているでしょう。その法則の全てを心から理解し実行していかなければなりません。それができて初めてあなたの望みは叶うのです。もう一度この宇宙の法則を心で理解し実行しなさい」
雄介の意識は心から震えた。雄介の求めていた答えが見つかった気がした。
「そうですね。私は忘れていました。もう一度この宇宙全体に共通する法則を心に刻み込んで頑張ってみます。ありがとうございました」
そして雄介の意識は、自ら自分達の宇宙に入って行き地球を目指した。すると直ぐに雄介の意識は自分の身体に帰ることができた。
「雄介、大丈夫か」
雄介が目を覚ますと、良太と由香里が雄介の側で心配そうに見つめていた。
「ああ、大丈夫だ。君達も大丈夫なのか」
「ええ、ダークパワーの強い風に飛ばされた時はどうなるのかと思ったけど、直ぐに自分の身体に帰って来られて安心したわ」
「それで雄介は何かヒントは掴めたのか」
「あのダークパワーの強い風の中で気が付いたよ。僕は自分で自分にブレーキを掛けていたんだ。オーラの力を出したいと執着することで、かえってそれがブレーキになっていたことに気が付いたよ。僕はもう一度この宇宙の法則を心に刻み込んで頑張ってみるよ」
雄介はそれから直ぐに一人でシップに乗り宇宙空間に出た。そして考えた。
「僕は大切な心を忘れていた。もう一度この宇宙の法則をしっかりと心の中に刻み込まなければいけない。大切なのは、この世界の全ての根源は心にあること言うこと、良い結果を得るように心を整えていくこと。そして良い性質を十分に発揮して良い質が集まるように努める。
次に身近を充実させ他も充実させるように努める。何事にも執着せず素直に淡々と取り組む。そして全てが必然であることを理解して、良い状態が続くよう努め、今の心が先の心と知って明るく過ごす。決してうぬぼれず初心を忘れず常に向上心を持つ。全て己に因が有ることを知って平和人として生きる。常に良い心で心身共に健康で過ごし、夢を持ち夢の実現に努力する。これをやっていかなければならないんだ」
雄介は宇宙法則を今一度頭に刻み込んだ。するとアロンから雄介に連絡が入った。
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