8,ホテルバルーン

 アロンとソニヤに案内されて、三人が宿泊するホテルに到着した。そのホテルは、さっき三人が体験したアトラクションが有る施設の隣に有った。

 「このホテルは、何だか凄いですね」良太がホテルのロビーに入ったとたんに驚いた。


 そのホテルは、今まで三人が見たことが無い雰囲気のホテルだった。ホテルのロビーはとても広く、くつろぐスペースも有ったが、ロビーの奥には、幾つもの透明なドーム型のカプセルのような物が沢山並んでいた。


 「あのドーム型のカプセルは何ですか」雄介が尋ねた。

 「あれが今夜皆さんが泊まる部屋なんですよ」

 「あの透明なカプセルが部屋なのですか。でも壁が透明だし、あんなに並んで沢山部屋が有ったらプライベートが無いかも」由香里が心配している。


 「大丈夫ですよ。皆さんが部屋に入るとあのカプセルは空に上がって、別のカプセルとは距離を取りますし、外から中は見えなくなりますから安心して下さい。それに必要な物は全て揃っていて食事も色々と楽しめます」


 「そうなんですか。空に上がって行くんですか」良太が驚いている。

 「上空からアンドロメダ星の絶景を楽しんで下さいね。じゃあまた明日迎えに来ます。ゆっくり休んで下さい」


 三人は、案内されたドーム型のカプセルに入った。するとそのカプセルの中は、20畳程のリビングとダイニングルーム、そして別に3部屋のプライベートルームも付いていた。


 「凄いね。これが空に浮かんで行くの」良太が少し興奮気味に喜んでいる。

 するとゆっくりカプセルが浮かび上がって行きだした。ちょうどそのころ夕日が海に沈むときだった。

 「あれ見て。この星の夕日もとっても綺麗よ」由香里が徐々に沈み行く夕日を見ながら感激している。


 カプセルから見える景色は、遠くにアンドロメダ星の海が見えて、オレンジ色の太陽が海も空も夕日に染めていた。その海沿いに近代的な街並みも見え、街にもネオンが灯りだしていた。カプセルの下を見ると、今日三人が居た遊園地の施設がライトアップされて、とても綺麗に見えた。


 そして空には少しずつ星々が輝きだしていた。他のカプセルも徐々に空に浮かび出していて、そのカプセルの明かりも大空に浮かぶ熱気球のようで幻想的に見えた。

 

 「何て素敵な景色なんだ」良太がカプセルから見える景色に感動している。

 「良太君。お腹が空いていたんじゃないの」

 「あそうだった。あまりの景色に見とれて、お腹が空いていたの忘れてたよ」

 

 「早速この絶景を見ながら何か食べよう」三人は円形のダイニングテーブルに着いた。

 「ところで料理は、どうやって注文するのかな」雄介が辺りを見渡した。

 「これで注文するのかな」良太がテーブルの上に置いてあった、ちょうどパソコンのマウスのような物に手触れると、部屋の壁に有ったディスプレイに料理のメニューが、美味しそうな画像と共に表示された。


 「これだ。美味しそうな料理が沢山表示されたよ。どれにする。あ、あれはどうかな。アンドロメダ特性特別ディナーって言うのは」良太が喜んだ。

 「いいねー、とってもおいしそうだ」

 「じゃあ決まり。良太君それ三人前注文して」

 「オッケー」


 良太がマウスでその料理を注文すると、直ぐに三人が座るテーブルの中央が開いて、下から料理が上がって来た。

 「ワー、凄い」三人が、料理の豪華さに驚いている。

 「いっただきまーす」三人が声を揃えて言った。

 

 窓の外は、夕日が海に沈んだところで、夕焼雲のオレンジ色が海に映って綺麗だった。街の夜景もとても素晴らしく、三人が今まで見たことが無い光景だった。

 

 「この料理は凄く美味しいね。こんなに美味しい料理は初めてだ」雄介が感激している。

 「そうね、とっても美味しいわ。良太君はどうなの」

良太は、黙々と料理を食べている。

 「うん、うまい。最高だ」良太はそれだけ言って、また一生懸命に食べだした。


 「良太君、そんなに食べたらまたお腹が出るわよ」

 「良太、料理も良いけど、外の景色を見てごらんよ。アンドロメダの夕暮れの景色は最高だよ」

 「ほんとだ」良太は、一瞬食べるのを止めて外の景色に目をやったが、直ぐにまた食べだした。

 雄介と由香里は、そんな良太を見て笑った。

 

 「ところで雄介君、今日のアンドロメダの歴史を体験してどう思ったの」由香里が料理を食べながら尋ねた。

 「そうだね、アンドロメダもとても大変な時代が有って、それを乗り越えてきたからこそ、今の幸せな世界を手に入れたのかも知れないな」


 「そうね、でも地球もアンドロメダ星のように全ての人々が、平和で幸せな生活を手に入れる為には、過酷な時代を経験しないと実現できないのかしら」

 「アロンやソニヤさんが言っていたけど、アンドロメダ星のように辛い体験を他の星にはさせない為に活動しているんだと、だとするとアンドロメダ星が経験した辛い体験をする必要は無いのかも知れない」


 「雄介君、以前地球は雄介君のお蔭で、ギャラクシーユニオンの力を借りて地球滅亡の危機を脱したわ。その時は地球の人々は一丸となって地球を救うことができたと思うの、でも今はそのときのことを段々と忘れて、また犯罪も増えてきだした気がするの。このまま地球をほっておくと大変なことにならないの」


 「そうだね。今以上に犯罪などが増えると危険な状態に成るね」

 「ねえねえ、君達食べないの。食べないのなら僕が食べてあげるよ」食べるのを忘れて話し込んでいた二人を見て良太が言った。


 「良太君、あなたのんきな人ね。私の料理は私が食べますから手を出さないで」そう言って由香里の皿を取ろうとした良太の手を由香里が叩いた。

 「痛い!」三人は笑って、また眼下に見える美しい景色を見ながら料理を食べ出した。


 食事が終わった三人は、リビングのソファーに移動した。リビングから見える外の景色は、すっかり日も暮れて一段と街の夜景が素晴らしかった。所々に浮かぶ別のカプセルのほんのりと灯るオレンジ色の明かりが、とても温かく心を和ませた。


 そして透明な天井に見える夜空を見上げると、アンドロメダ銀河の星々がとても近く、今にも降り注いでくるかのように見えた。三人は、ゆったりとソファーに腰を下ろし、夜空を見上げていた。


 「雄介君、とてもこの世の物とは思えない景色ね」由香里が夜空を見上げてうっとりしている。

 「そうだね、この星々を見ていると、この宇宙の偉大さが感じられるよ」

 「ねえねえ、お二人さん。それはそうとデザートは何食べる」良太が、マウスをいじってディスプレイに映るデザートを検索している。


 「あのね、良太君。あなた全くデリカシーの無い人ね」

 「そうかな~。あ、僕この特性銀河アイスにするよ」

 「私もそれ注文して」由香里がディスプレイに映った美味しそうなアイスクリームを見て言った。

 「了解。三人前注文しま~す」


 三人は、特性銀河アイスを食べながら話している。

 「雄介君、ところで長老が言っていた話だけど、雄介君はどんな風に感じているの」

 「そうだね。長老も宇宙の膨張が止まってしまった、今後この宇宙がどうなるのか分からいと言っていたけど、なんだか大変なことが起きそうだよね」

 

 「雄介、君の魂が更に向上したら、この宇宙の異常も止めることができるのかな」

 「どうなのかな。でもそんなに簡単に僕の魂が向上できるようにも思えないよ」

 「そうね。かなりの努力が必要なのかも知れないわね」


 「それにもうあまり時間が無いよね。早くて2、3年で宇宙の膨張が止まるとすれば、なんとしてでもこのアンドロメダ星で、何かヒントを掴んで帰らないといけないな」雄介は、自分に与えられた使命の重要性を感じていた。

 「今日は少し疲れたからそろそろ休もう」

 「そうね、じゃあまた明日ね」

 「おやすみ」


 三人は、それぞれの部屋に入った。雄介は、自分の部屋でシャワーを浴び、パジャマに着替えてベッドに横になった。雄介がベッドの横に置いて有ったリモコンのような物を触ると、部屋の天井が透明になり、アンドロメダ銀河の星々が降り注ぐかのように見えた。

 「オー、これは凄い」雄介は、ベッドに横になったまま、夜空の星々を眺めて考えた。


 「しかし、どうすれば僕の魂を更に向上させられるんだろう。何が魂を向上させる為には必要なんだろう。そういえば以前マザーさんが、心と宇宙の法則を一つにすることが大切だと言っていた。僕はまだ宇宙の法則を正しく理解できていない。この宇宙の法則とはどのような物なんだろう。それをこのアンドロメダ星で知ることができるのだろうか」雄介は色々と考えていた。


 「そうだ、僕の魂のオーラで宇宙波動エネルギーを復活させられなかったとしても、宇宙の膨張が止まったとき惑星に住む人々の心が愛と感謝と平和に満たされ、幸せに暮らしていれば、幸せな生活を続けられると長老が言っていた。


 だとするとこのアンドロメダ星のように、地球や他の惑星も幸せの星に成れば何も問題がないんだ。そうだ目指すのはこのアンドロメダ星のように幸せの星に成ることなんだ。アンドロメダ星の人々はどんな心で過ごしているんだろう。それを確かめてみよう」


 そして雄介は、瞑想を始めた。アンドロメダ星の人々の心にコンタクトして、全ての人の心を感じ取ってみた。するとアンドロメダ星の人々の心の中は、愛や感謝、それに幸せと平和の心で満たされていた。


 「なんと素晴らしいことか。全ての人々の心の中が素晴らしい心で満たされている。この星の全ての人々の心がこんなにも美しいとは。感動でしかない。素晴らしい」雄介は、その素晴らしい人々の心を感じて感激した。雄介は、アンドロメダ星の人々の心を感じて思った。


 「今の地球人の心はどうだろう。地球人の心も確かめてみよう」雄介は再び瞑想して、今度は全ての地球人の心にコンタクトしてみた。

 「今の地球人の心の中は、悲しみや憎しみ、それに嫉妬や絶望の心が段々と増えてきているのを感じる」雄介は思った。


 「全ての地球人の心も、このアンドロメダ星の人々のような素晴らしい心にしていこう。そして必ず地球も、全ての人が愛で満たされた幸せの星にしよう。それをこの宇宙の全ての惑星にも広めていかなければならいんだ」雄介はそう心に誓った。そして雄介は気が付いた。


 「そうだ、これだ、もうこの方法で進めていくしかない気がする。よしそうしよう」雄介は、ベッドから飛び起きた。そしてリビングに出て良太と由香里の部屋のドアを叩いて二人を呼んだ。


 「どうしたんだよ、雄介」もう寝ていたのか良太が眠そうな顔で、枕を抱えて部屋から出て来た。

 「何なの雄介君」由香里もピンクのパジャマ姿で部屋から出て来た。

 「ごめん、急に起こして。それがね今気が付いたんだ。この宇宙の全ての惑星を救う為に、まず何をやるかを」

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