7,アンドロメダ星(2)
「これから皆をアンドロメダ星の歴史が分る施設に案内するよ」
「その施設を体験すれば、なぜアンドロメダ星が幸せの星になれたのか分かると思うわ」 ソニヤが楽しそうに話した。
三人は、アンドロメダ星で色々と体験できそうで嬉しくなった。皆がシップに乗り込むとシップは、街から少し離れた山の方に向かった。シップの窓から見える街の景色は緑が豊かでとても自然を大切にしている星だと分かった。
「雄介、見てごらん。街の中は人が歩いたりしているけど車みたいな乗り物は一切走ってないね」
「ほんとだ。移動手段は宇宙船に乗って移動するのかな」
「そうです。地上は人が歩いたり簡単な乗り物に乗って移動したりするだけなので、事故などは一切無くて安全です。少し離れた場所に行くときは小型の宇宙船で移動します」ソニヤが説明した。
「凄く近代的で素敵な街ですね。地球も学ぶ所が沢山ありそうですね」由香里が街の美しさに感心している。
しばらく山の方にシップが飛んで行くと山間に遊園地のような施設が見えてきた。
「もう直ぐ到着です。あそこに見える遊園地の中にアンドロメダ星の歴史が分る施設があるんだ」アロンが遊園地の方を指差した。そしてシップは遊園地のプラットフォームに着陸し、皆はシップを降りた。
「皆さん、どうぞこちらです」
ソニヤが先頭に立って皆を案内した。遊園地の中に入ると小さな子供を連れた家族や、数人の子供を引率して来ている団体も見えた。皆が遊園地の中の乗り物やアトラクションを楽しんでいるようだった。
「アロン、ここの遊園地は楽しそうだね。地球にもこんな遊園地があるよ」
「そうだね、子供はこんな遊園地に来るのが楽しみだからね。アンドロメダ星には、ここと同じ遊園地が星のいたる所にあるんだ。そして家族や学校から年に数回はこの遊園地に来て家族の絆を築いたり、子供が心の勉強をしたりする場として利用されているんだ」
「それは子供をここへ連れて来ることが、この星では義務づけられているの」
「そうなんだ。ここへ来ると楽しく過ごしながら心の勉強もできるようになっているし、アンドロメダ星の歴史も分る。そして家族の絆も築けるから素晴らしい施設だよ」
「そうだね、ただ遊ぶだけではなくて心の勉強や歴史も学べて、更に家族の絆まで築ける施設なんて地球には存在しないよ」
「心の教育は、子供の頃から初めないとダメなんだ。大人になってしまったら中々心を変えることが難しくなるからね」
「そうだね、心は気が付かなうちにその人が生まれながらに持ち合わせたものを、自然と使ってしまっているよね。幸せになる為にどんな心を使っていけば良いのか、ちゃんと子供の時から教えないと気が付かないうちに悪い心を使っていたり、悲しい心を使ってしまっていたりするよね」
「色々な知識を勉強も大切だけど、それ以上に心の使い方を勉強して習得する方が、その人の人生や星全体の未来の為にも大切なことなんだ」
「流石だよアロン。是非色々と僕達も勉強して地球の未来の為に役立てたいよ」雄介はアロンの言葉に感心していた。
皆が遊園地の中を散策しながら歩いていると、ワニのような大きな口をした怪物が寝そべっていて、目をギョロギョロと動かし、体も少し動いていて呼吸をしているような物があった。
「あの怪物は何ですか」良太が怪物を見て驚いている。
「あれもアトラクションの一つです。あの中は家族が協力して色々と出て来る怪物をやっつけていくアトラクションなの。でも家族の絆が無いとやっつけることができないようになっていて、家族の愛と絆を養えるようになっているの」
「それは凄いですね」
皆がワニのような怪物に近づくと、その怪獣は大きな目で皆をにらんだ。
「これはほんとに生きている怪物ではないですよね」良太がビビっている。
「なに良太君怖がっているのよ。なんだか楽しそうじゃないの」由香里は、はしゃいでいる。すると大きな怪獣は急に大きな口を開けた。
「ガオー」
「わー」三人は、大きな声で驚いた。
そしてしばらく皆が歩いているとこんもりとした山のような施設の前に着いた。
「では皆さん、ここがアンドロメダ星の歴史が分る施設です」ソニヤが皆を案内して施設の中に入って行った。中に入ると小川が流れていてそこに丸太で作ったボートが何台か停めてあった。
「さあ、どうぞ三人さん。その丸太ボートに乗ってアトラクションを楽しんできて下さいね」
「僕達だけで行くんですか」
「大丈夫ですよ。ちゃんとアンドロメダ星の歴史について解説もしてくれるので心配ないですよ。それに年代も地球の年代に合わせて解説してくれるようにしていますから、地球と比べやすいと思うわ」
「そうですか。じゃあ行って来ます」
雄介と良太、由香里の三人は丸太のボートに乗り込んだ。するとゆっくり小川の流れに乗ってボートは動き出し暗闇の中に入って行った。
「雄介、丸太ボートって古風だね。地球の遊園地にもこんなボートに乗ってジャングルのような所を進むアトラクションが有るけど、もっとしっかりしたボートだよね。この丸太ボート大丈夫なのかな」
「そうだね、ちょっと不安な感じだね」
三人を乗せたボートが、ゆっくりと暗闇の中を進むと辺りが段々と明るくなって、そこは木や草が生い茂るジャングルのような所を進んで行った。
「雄介、やっぱりジャングルの中だ」良太が、はしゃいでいる。するとボートについているスピーカーから解説が聞こえてきた。
『皆様ようこそ。ここはアンドロメダ星に生命が誕生して、まだ間もない頃やっと植物や動物達がこの星に生息し出した状態です。アンドロメダ星は今から100億年程前に誕生し、生命がこの星に誕生したのは2億2,000万年程前のことです』
「今から2億2,000万年前の状態と言うことは、地球のほぼ倍位前にアンドロメダ星には生命が誕生したんだね」
ボートがゆっくり進んで行くと急にジャングルから大きな川に入って行った。
「何だか急に開けたね。あそこを見てごらん、大きな恐竜が見えるよ」良太が指差した先を見ると、川の側で首の長い大きな恐竜が草を食べているのが見えた。
『左手に見える恐竜は、この時期最大の大きさを誇る草食の恐竜で全長が40メートル程有り体重は100トン程ありました。上空を飛んでいるのが翼竜で大きさは両方の翼を広げると10メートル以上あります』ボートのスピーカーから流れて来た解説を聞いて、ふと三人が上空を見上げると大きな翼を広げた翼竜が、三人が乗ったボートをめがけて降下して来ていた。
「わー、危ない」良太が大きな声で叫んだ。三人は慌てて頭を抱えて身をかがめた。すると翼竜はボートすれすれの所を飛んでまた上空に上がって行った。
「びっくりしたな」良太の顔が引きつっている。
「凄いね、恐竜なんかは本物みたいだね」
「すごく楽しいわね。私こんな冒険大好きなの」由香里がはしゃいでいる。しばらく周りの景色や恐竜などを見ながら川の流れに乗って進んで行くと解説が聞こえてきた。
『アンドロメダ星の恐竜達は何度か絶滅を繰り返してきました』
すると周りの景色が氷河期になったのか、辺り一面が真っ白な雪に覆われ川も全てが氷に覆われた。三人が乗ったボートも氷で動かなくなった。周りを見ると大きな恐竜が寒さの為に凍え死んでいくのも見えた。しかし三人の体感温度は快適で少しも寒さは感じなかった。するとまた解説が聞こえてきた。
『やがて氷河期は終わり、遂に人類が誕生したのです』すると辺りの景色は、急に春が来たかのように明るく暖かい感じになり、ボートも再び川の流れに乗って動きだした。川の近くにアンドロメダ星人の祖先の原始的な人間が生活している様子も見えた。
「何だかアンドロメダ星も地球と同じような感じだね」
「そうだね、どの星も初めは同じような感じで誕生してきたのかも知れないね」
しばらく川の流れに乗って進むと、川の側に石でできた建物も見えて来た。すると解説が聞こえた。
『やがて人類は、徐々に文明が発展して来ました。今から約1万5,000年前のことです』
「やはり文明が発展したのも地球より倍以上前だね」雄介が感心している。
『それでは皆様、徐々に文明が発展していく状態を今度は上空からご覧いただきます。それではシートベルトをお締めください』
そう解説者の声が聞えると、今まで丸太のボートだった乗り物の前後の左右にプロペラが出て、プロペラは回転を初めボートは上昇しだした。慌てて三人はシートベルトを締めた。
「凄いわねボートが空を飛び出したわ」由香里は喜んでいる。
「大丈夫かな~。この空飛ぶボート墜落しないだろうね」良太は少し不安げだ。
「下を見てごらん。畑や田んぼも見えるし、段々と建物が建ちだしたよ」三人が下を見ると、地上では多くの建物が立ち並び出した。
「雄介、日本で言うと何時代位かな」
「そうだな、江戸時代位かな」
すると解説が聞こえた。
『今見えている時代は、今から約1万年前の状態です』
「やっぱり凄いね。地球ではほんの400年程前の状態が、アンドロメダ星では一万年前の状態なんだ」雄介が感心して驚いている。地上を見ていると段々と建物も近代的な建物に変わっていきだした。鉄道や自動車も走り出した。
『アンドロメダ星では、このころから徐々に殺伐とした時代に入って行きます』解説がそう流れると地上の状態が変わり出した。
「雄介君、下を見て。何だか戦争が始まったようだわ」由香里がそう言ったので雄介と良太は地上を見た。すると地上ではまさしく戦争真只中で爆弾が破裂したり、人々が逃げ回ったりしている。ふと気が付くと三人が乗った空飛ぶボートの隣をプロペラ戦闘機が飛んでいる。
その戦闘機が急降下を始めたかと思うと地上に攻撃を始めた。地上からも上空に向けて攻撃が始まり、三人が乗った空飛ぶボートの横を飛んでいた別の戦闘機に命中し戦闘機は爆発した。そのとき三人が乗った空飛ぶボートの右前のプロペラにも地上からの攻撃の球が命中して、プロペラが吹っ飛んだ。
「わー、何てことだ。このボートも攻撃されている」良太が叫んだ。
「良太君、慌てなくても大丈夫。きっとこれもアトラクションの一部よ」由香里はやけに冷静だ。たしかに由香里の言ったとおり、プロペラが一つ吹っ飛んでも空飛ぶボートは墜落しなかった。
「しかし、アンドロメダ星も地球と同じで戦争の時代が有ったんだね」
「どこの星でも通る道なのかな」由香里も悲しそうな顔をしている。そして再び解説が流れた。
『長かった世界戦争の時代も終わり、やっとアンドロメダ星に平和な時代が訪れようとしていました』
雄介達が地上を見ると、戦争で焼け野原になった街が徐々に復興を初めていた。
「ここからアンドロメダ星も復興して幸せな星になって行くんだね」良太が何だか安心した顔になった。
「幸せな星になる為に、どうやって人々の心を幸せで満たしていくんだろう」
三人が地上を見ていると、ほぼ現在の地球と同じ状態で高層ビルも立ち並び、大きな街が地上にでき上がった。すると再び解説が流れた。
『アンドロメダ星はこの時期星全体が徐々に近代的に発展していました。しかし人々の心の中は怒りや悲しみが多く、犯罪や病気、災害も多く発生している時期でした』
「これは以前の地球の状態その物だよね。雄介どう思う」
「そうだな、これは危険な状態だよね」
『ドカーン』
突然大音響と共に辺りが眩しい光に包まれたかと思うと、凄い風圧と振動を感じて三人は吹き飛ばされそうになった。
「ワーー」
三人は悲鳴を上げ頭を抱え身をかがめた。流石の由香里も今度ばかりは驚いている。徐々に風圧と振動が収まりだした。三人はかがめていた体をゆっくりと起こし恐る恐る地上を見た。すると今まで地上に有った大きな街や高層ビルは、一瞬にして瓦礫と化していた。
「何てことだ」良太が声を震わせながら言った。
「何故、何故こんなことになったんだ」雄介も驚いている。
すると解説が流れた。
『今から8,000年前のこと、アンドロメダ星に突然巨大隕石が落下しアンドロメダ星のほとんどの人々は亡くなった。事前に隕石落下が予測できていた数か国は、地下にシェルターを建設していたが世界中でこの時生き残ることができたのは、僅かに10億人程だった。隕石落下前は百億人居たアンドロメダ星の人口が一瞬にしてそこまで減ったのだ。
その後1年程は地上に出ることができない状態が続いた。地下シェルターの生活に対応できなかった人もいて、それから更に人口は減り一時期星全体で5億人まで人口が減ってしまった。やがて地上の状態も安定に向かい復興に向けて人々は動き出した。隕石落下前は幾つかの国に分かれていたアンドロメダ星は、このことを機に一つの国として統一された。
生き残った人々は考えた。何故このようなことが起きたのか。何故多くの人々は命を落とさなければならなかったのか。そして人々は気が付いた。全ては人々の心が招いたことなのだと。人々の心が怒りや悲しみに苛まれ、犯罪や争いが多く、幸せな心が少なく、しかも自然を破壊してきた人類は、滅びる運命にあるのだと。そしてこの宇宙全体に共通する法則を発見した。それが宇宙法則十カ条である。
人々は二度と同じ過ちを繰り返さない為に誓った。アンドロメダ星の全ての人々が幸せな人生を全うする為に、全ての人々の心に宇宙法則十カ条を刻み込んだ。そしてアンドロメダ星がこの宇宙全体の愛と平和の為に貢献していき、アンドロメダ星がこの宇宙から必要とされる星に成っていくことを全星人が誓ったのだ』
雄介達三人は地上を見た。隕石落下後、厚い雲に覆われていた空も晴れてきて地上では復興が進んでいた。瓦礫は撤去され新しい街ができだした。するとまた解説が聞えてきた。
『その後アンドロメダ星は、もの凄い勢いで復興が進んだ。人々の心が幸せの心で統一されると不思議と全ての物事がスムーズに進んだ。災害も無く、ほとんどの人々は病気や怪我もせず新しい技術も次々に発見されて、アンドロメダ星はもの凄いスピードで発展していった。
そして今から6,000年前、遂に他の星と交流が始まりギャラクシーユニオンが発足したのである。その後、ギャラクシーユニオンは宇宙全体の愛と平和の為に今も他の星々と協力して躍進を続けている』
気が付くと地上の様子は、現在のアンドロメダ星の状態になっていた。自然が多く残されていて街はとても近代的で明るい街になっていた。するとゆっくり三人が乗った空飛ぶボートが地上に降りて行き、最初乗り込んだ場所に帰って行った。そして三人はボートから降りてアトラクションの外に出た。外に出るとソニヤとアロンが待っていた。
「どうでした皆さん、アンドロメダ星の歴史は」ソニヤが三人に尋ねた。
「アンドロメダ星の歴史を勉強しながら、色々な体験ができてとても驚きました。でもアンドロメダ星は大変なことが有ったのですね」雄介が神妙な顔で話した。
「そうですね。しかし、あの大変なことが有ったからこそ今のアンドロメダ星が存在するのだと思います。そして大変だった時期のことを決して忘れてはいけないのです。二度とあんな辛いことが起きないためにも、このアトラクションを時々訪れる必要があるのです。
そして人々の心に平和と愛と幸せを深く刻み込むことが必要なのです。アンドロメダ星が経験した辛い出来事を、他の星が経験してはいけなのです。だからこそアンドロメダ星は、不幸なことが起きそうな星を守る為に活動を続けているのです」
「だから地球も助けてくれたのですね」
「そうだよ、雄介。もし地球が回る太陽が爆発していたら、地球はアンドロメダ星より、はるかに辛い運命を経験することになっていただろう。しかし辛い運命を逃れられたからと言って、それに甘えていてはいけない。
地球人も自分達の星が平和で愛に満ち溢れ、そして全ての人々が幸せに成れるように努力することを怠ってはいけないんだ。そうしないと何時かまた地球の破滅を招くことが起きないとも限らないんだ」
「分かったよアロン。心に深く刻み込むことが大切なんだね。地球人も皆が心に平和と愛と幸せを刻み、そして幸せの星になる為に、何をしていけば良いのか考えてみるよ」
「そうだね。今回君達がアンドロメダに来て、何かに気が付いてくれて、そして雄介の魂が更に向上する手助けができれば僕達も嬉しいよ」
「ありがとうアロン。頑張るよ」
「では皆さん。そろそろ今夜泊まるホテルにご案内しますね」ソニヤが優しく微笑えんだ。
「ありがとうございます。お願いします」
「そろそろお腹も空いて来ましたし」良太がお腹を押さえている。『ク~』良太のお腹が鳴った。恥ずかしそうにする良太を見て、皆が笑った。
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