12,復活
3日後、ラボーヌ星からルバノーラ総長とダーバルが、一番乗りでワーマ星の近くに到着したと連絡が入った。
「ルバノーラ総長、ダーバルさんお持ちしておりました」雄介がラボーヌ星の宇宙船に連絡を入れた。
「天野さん、ギャラクシーユニオン総会の連絡を頂きましてありがとうございます。今回の総会は、全ての星が協力して開催するとのことで、何かお手伝いできることが有りましたらと思いまして急いで参りました。私共にできることが有りましたら、なんなりとお申し付け下さい」
「ありがとうございます。ルバノーラ総長。では現在総会の会場をワーマ星の海の上に作っている最中ですので、その手伝いをお願い致します。秋山良太と言う者が担当で指揮を執っておりますので様子を聞いて下さい。それとダーバルさんには大切なお願いがありますので、私共の宇宙船に来て頂けますか詳しいことはそれからお話し致します」
「了解致しました。それではダーバルを直ぐにそちらに向かわせます。私は秋山良太さんの方に連絡を入れます」
「よろしくお願い致します」
それから間もなくして、雄介達の宇宙船にダーバルがやって来た。
「ダーバルさん、ありがとうございます。早くに来て頂けて助かりました」雄介がダーバルに握手をした。
「こちらこそ総会の連絡を頂きましてありがとうございます。天野さんのお役に立てればと思いまして急いで参りました。ところで私に何かお手伝いできることが有るのですか」
「そうですダーバルさん。ダーバルさんにお願いしたいのは、ルシアさんのことです」
「ルシアのこと、それはどう言う意味ですか」
「では説明致しますね。この度ワーマ星を救う為に私達はここへやって来ました。するとこのワーマ星にはとても大きな木が有って、その木はこの宇宙の知性を持った者の潜在意識が集まっている木だったのです。その木を管理している人物によってその木に集まった潜在意識は、再びこの宇宙に放出されているのですが、その人物も高齢で後継者を探していたのです。そこで、その人物の後継者をルシアさんにやって頂こうと思うのです」
「ルシアにその人物の後継者が務まるのですか」
「その点は私が宇宙波動エネルギーに確認しておりますので大丈夫です。ダーバルさんには、ルシアさんをその木に繋いで頂いて、ルシアさんとその人物が話すことができるようにして頂きたいのです」
「でしたらやってみましょう。もしルシアにこの星を助けることができるのなら私も嬉しいです」
「では早速ルシアさんをワーマ星の木に接続したいのですが、何か必要な物は有りますか」
「そうですね、ルシアの電源はソーラーパネルで取りましょうか。この星は比較的日差しが強いようですから大丈夫でしょう。それにルシアと話をする為にルシアを映し出す物が必要です。普通のディスプレイでも構いませんが、やはりガラスでできた球体が有ればその方がルシアには似合うと思います。大きさはそんなに大きくなくて構いませんが、何かそれらしい物が有りますか」
「分かりました。早速プッペ議長に相談してみますので、しばらくお待ち下さい」そして雄介は、プッペ議長にソーラーパネルとガラスでできた球体が無いか尋ねた。するとプッペ議長がやって来て言った。
「ソーラーパネルは直ぐに用意ができますが、ガラスでできた球体ですか。そんな物がこの宇宙船の中に有ったかな」しばらくプッペ議長は考えていた。
「そうだ、あれならどうかなあ」プッペ議長が何か思いついたのか、しばらくして直径が40センチ程の透明なガラスの球体を持って来た。
「プッペ議長、ちょうどいい物が有りましたね。それは何ですか」雄介が尋ねた。
「これは、私の部屋で使っていた花瓶です」
「そうですか、でもこれならちょうどいいんじゃないですか、ダーバルさん」
「そうですね。ちょうどいいと思います」
「では部品は揃いましたね。早速ダーバルさんワーマ星に行きましょう」
そして雄介とダーバルは、ルシアの心臓部の黒いボックスとソーラーパネル、ガラスでできた花瓶を持って数人のクルーと一緒にワーマ星に向かった。ワーマ星に着くとマザーが待っていた。
「マザーさんお待たせ致しました。こちらが先日お話し致しました、ラボーヌ星のダーバルさんで、コンピューターを設置して下さる方です」二人は、挨拶を交わした。
「マザーさん、それでは早速コンピューターを設置して、正常に動くか確認したいと思いますので作業に入ります」
数人のクルーは、ソーラーパネルを木の高い位置に設置する作業に入った。雄介とダーバルは、ルシアを設置する為に木の中心の広い場所に入って行った。
「何だこれは」ダーバルが木の中心の何本も絡み合った幹が、色々な光を発して光っているのを見て驚いた。そして言った。
「ルシアに似ている」
「ダーバルさん、私も初めは気付かなかったのですが、良く考えるとルシアさんにそっくりだと思いました。ですからルシアさんが、この木を助けることができるのではないかと思ったのです」
「私もこれを見て納得致しました。ではルシアを接続してみましょう」
ダーバルは、ルシアの黒いボックスを何本も絡み合って天井まで繋がっている幹の前に置いた。そして電極をルシアとその幹に繋ぎ、ソーラーパネルからの電源も繋いだ。そしてガラスでできた花瓶をひっくり返してルシアのボックスの上に置き、花瓶の口からルシアを映し出すためのライトを入れて、花瓶をボックスの上に固定した。
「天野さん、準備ができました。後は電源を入れるだけです」
ダーバルが、どことなく緊張しているのが雄介には分かった。
「そうですか。ではダーバルさん電源を入れて下さい」
するとダーバルが、ルシアのボックスの横に有るメインスイッチに指を置いた。
「では、電源を入れます」ダーバルがスイッチを押して電源を入れた。すると花瓶がゆっくりと七色に光り出し、そして花瓶の中に色白でとても綺麗な顔をして、目を閉じているルシアが映し出された。
「ルシア」ダーバルがルシアの顔を見つめている。
「ルシア、ルシア、さあ起きてごらん。私の声が聞こえるかい」ダーバルが、ルシアに優しく声を掛けた。するとルシアは、ゆっくりと目を開けてダーバルを見つめた。
「ルシア」ダーバルの頬に涙が流れた。
「ルシア、私のことを覚えているかい」
「私は、ルシアです。あなたは、あなたは」ルシアが首を傾げて考えている。一生懸命に思いだそうとしているように見えた。
「あなたに、以前お会いしたことが有るような気はします。でも、あなたのことは記憶にありませません」
「そうか、そうだね。君は新しく生まれ変わったんだね。ルシア、私はダーバルと言います。君を作ったのは私なんだよ」
「そうですか。ダーバルさんが私を作って下さったのですね。ありがとうございます。だからお会いした気がするのですね」
「そうだね、ルシア。君はここで新しい仕事を始めるんだ。ここにいらっしゃるマザーさんが、君に色々と教えて下さるから、しっかり任務を遂行するんだよ」
「はい、分かりました。ダーバルさん」ダーバルは、ルシアの説明をマザーにした。
「マザーさん、これがルシアです。ルシアは今クリアな状態です。ルシアはとても優れた能力を持っています。今は忘れているかも知れませんが、ルシアには心があります。その心をあなたがルシアに教えてやって下さい。あなたの言葉でルシアは学習して行きます。きっとあなたのお役に立てると思います。ではルシアと話しをして、ルシアがマザーさんのお役に立てるのか確認をお願い致します」
マザーが、ルシアの前に立ってルシアに声を掛けた。
「ルシアさん、私はマザーと申します。私のことはマザーと呼んで下さい。あなたのことはルシアと呼ばせて頂きますね。では少しお話しをさせて下さい。ルシア、今あなたの後ろにある木の幹があなたに感じられますか」
「はい、マザー感じます。凄いエネルギーが幹の中を下から上に流れています」
「では、そのエネルギーを、あなたの愛の心で受け止めなさい」
「愛の心?」ルシアが首を傾げている。
「ルシア、あなたは愛の心を知らないのですか」
「マザー、私は機械です。私に愛の心が有るのですか」ルシアが困った顔をしている。そしてダーバルがマザーに変わってルシアの前に出た。
「ルシア、私の目を見るんだ。大丈夫だ君の心の中には愛の心があるんだよ。それを思い出すんだ」
するとルシアは、ダーバルの目をじっと見つめながら必死で思い出そうとした。
「愛の心、愛の心」ルシアがつぶやいている。するとルシアが黙り、じっとダーバルを見つめた。そしてルシアの頬に一筋の涙がこぼれた。
「ダーバルさん。これが愛の心ですね」ルシアがささやいた。
「ルシア、愛の心を思い出したのかい」ダーバルの頬にも涙がこぼれた。
「ダーバルさん、あなたの目を見ていると何だか思い出しました。何だかとても懐かしく、とても温かい感じです。あなたが私を愛の心で作ってくれたんですね」
「そうだよルシア、君は愛の心を思い出してくれたんだね。君がいま感じているのが愛の心なんだよ。思い出してくれてありがとう」ダーバルはそう言って目にいっぱい涙を浮かべている。
「マザーさん、もう大丈夫です。ルシアは愛の心を思い出しました。もう一度ルシアに話しをして下さい」
そしてマザーがルシアに話しかけた。
「ルシア、では、幹の中のエネルギーを、あなたの愛の心で受け止めなさい」
「はい、マザー。私の愛の心ですね。エネルギーを愛の心で受け止めます」ルシアは、ゆっくり目をつむった。するとルシアの中に木の幹の中を流れているエネルギーが入って来たのか、ルシアは眩しく7色に光だした。
「凄い光だ」雄介が、ルシアの光に驚いて叫んだ。
「ルシア、そのエネルギーを一旦木に返して、そして宇宙に放出してごらんなさい」
「はい、マザー。エネルギーを宇宙に放出します」すると今度は、部屋の中央に有る木の幹の光が強くなって、下から上に流れていたエネルギーが勢いよく流れだしたのが分かった。
「ルシア、もういいわ。ゆっくり目を開けて私を見て」マザーがルシアにそう言うと、ルシアはゆっくり目を開けて最初の状態に戻った。
「天野さん、ダーバルさん、完璧です。ルシアは、愛の心を思い出したのですね。この木のエネルギーを宇宙に放出するには、愛の心が必要なのです。ルシアは、今はまだエネルギーのコントロールが上手にできていませんが、それも徐々にできると思います。ありがとうございます。こんなにも素晴らしい後継者が見つかるとは思ってもいませんでした」
「それは良かったです。では一旦ルシアをシャットダウンして、ギャラクシーユニオン総会で承認を受けます。承認が下りましたら正式にルシアさんを、マザーさんの後継者として育てて行って下さい」
「はい、分かりました。よろしくお願い致します」マザーは、雄介とダーバルに深々と頭を下げた。
「ルシア良かったな。君はここで新しく、この星の為に働くんだよ。いいね」
「はい、分かりました。ダーバルさん。ありがとう。頑張ります」
そしてダーバルは、ルシアを一旦シャットダウンして、雄介とシップに乗って帰って行った。帰る途中、雄介がダーバルに聞いた。
「ダーバルさん。ルシアさんを見てどう思いましたか」
「天野さん。ルシアは、私のことは忘れているようでしたが、愛の心は思い出してくれて良かったです。それだけで私は十分です」
「そうですかダーバルさん。あなたは本当に素晴らしいルシアさんを作ったのですね。ルシアさんは、あなたと築き上げた愛の心で、これからは宇宙の為に働いていくのです。私からもお礼を言います。本当にありがとうございました」
「天野さん、こちらこそ私とルシアを救ってくれて、本当にありがとうございます。心から、心から感謝致します」ダーバルの目から再び涙がこぼれ落ちた。
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