11,名案

 雄介がマザーシップに帰えると良太と由香里、そしてプッペ議長が待っていた。雄介は三人にワーマ星で会ったマザーのことや、話の内容、それにワーマ星の木の中心を見て来たことを話した。


 「雄介、ワーマ星のマザーさんは凄い人みたいだね。雄介以上の魂の能力を持っているのかな」良太が聞いた。

 「そうだね。マザーさんの魂のレベルは6で、しかもレベル6の中に上中下とランクを付けたとすると、僕は下でマザーさんは上だね。あの人が発するオーラは凄すぎるよ」雄介が感心している。


 「それにしても、何か良い対策を考えないといけないわね。雄介君に良い考えは有るの」

 「問題はマザーさんの後継者が居ないことだ。マザーさんと同じ位の魂の能力を持った人間を探すことができるのかな」


 「今この宇宙の中でマザーと同じ位の魂のレベルの人間と言えば、雄介だけなんじゃないの。でも雄介がこの星でマザーの代わりなんてできないよね」良太が困った顔をしている。

 「そうだね。僕には無理だ。このワーマ星の木を守ることは、この宇宙全体にとってとても重要なことなのは確かだけど、僕がマザーさんの代わりはできない」


 「しかし雄介君、もしマザーさんが亡くなって、ワーマ星の木のエネルギーを宇宙に放出できないとしたら、大変なことが起こるんでしょう。だったらそれだけは何としてでも回避しなくてはいけないんじゃないの」由香里が真剣に雄介の目を見て言った。


 「そうだね。それだけは何としてでも回避しないといけない。もしマザーさんが亡くなってしまった時、だれもマザーさんの代わりをする者が居なかったら、僕がマザーさんの代わりを一時的にでもやらなければならないのかも知れない」


 「もし雄介が、マザーさんの代わりをやるようになったら、この星のあの大きな木の側で、マザーさんのやって来たことをするんだろう。そうなったら雄介の自由が奪われて、雄介にとってもギャラクシーユニオンにとっても、地球にとってもかなりの痛手になるよね」


 「そうね、それが一時的な物として始めたとしても、次の後継者がもし現れなかったら、雄介君は一生その場から離れられなくなるわよ」

 「それも困るね」雄介も腕組みして考えた。

 「何としてでもいい案を考えないといけませんね、雄介様」側で聞いていたプッペ議長も腕組みをしている。


 「プッペ議長は何か良い案は無いですか」

 「そうですね。先ほどお話しのマザーさんの様子では、直ぐにマザーさんに大変な事態が訪れる訳でもなさそうですから、マザーさんの代わりができる後継者を、ワーマ星の中だけでなくギャラクシーユニオンに加盟している、全ての星の中から探すのはどうでしょう」プッペ議長の案に良太が、こぶしで手を叩いた。


 「プッペ議長、それはいい案ですね。このワーマ星の重要性と、いま直面している問題を連合に加盟している全星に伝えれば、全星の中からこの星の後継者になりたいと、手を上げる人物が現れるかも知れないですね。その人達の中から後継者を選べば、問題なく解決しますね。だったら総会でワーマ星の詳しい事情を全加盟星に早く伝えましょう。どう思う、雄介」良太が興奮気味に話した。


 「そうだね。それもいい案だとは思うけど、総会で各星に伝えて、それから各星が自分の星にワーマ星のことを伝えて、それから後継者の希望者を募って、その後、集まった人達の中から後継者を選ぶとなったら、かなりの時間が掛かりそうだね。それに、もしその人達の中に適任者が居なかったらまた振り出しに戻る。一度宇宙波動エネルギーにこの案が上手行くか尋ねてみるよ」

 「そうだね、早速そうしてみてくれよ」


 その場で雄介は瞑想をして、宇宙波動エネルギーにプッペ議長の案が上手くいくのか尋ねてみた。

 『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。ワーマ星の後継者をギャラクシーユニオン加盟の全星から募って、その中から後継者を選ぶことは上手くいくのでしょうか』すると雄介の右の耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。


 「雄介、どうだった」側で雄介の瞑想を見ていた良太が、雄介が目を開けたとたんに聞いた。

 「ダメみたいだ」

 「そうなの。プッペ議長の案はいいと思ったんだけどな。ねえプッペ議長もそう思いましたよね」

 「そうですね、でもダメならまた別の案を考えましょう」プッペ議長はあっさり言った。


 「だったらこう言うのはどうかしら。もしこのまま後継者が見つからないうちに、マザーさんに万が一のことが起きたとしたら、雄介君がこのワーマ星でマザーの代わりをするのではなく、テレパシーを使って離れた場所からマザーの代わりをすることはできないのかしら。だってテレパシーは、この宇宙の何処に居ても距離も時間も関係ないんでしょ。どう雄介君できないの」


 「そうだね、そんなことは今までやったことが無いからよく分らないけど、あの木のエネルギーをテレパシーを使って宇宙に放出できるのか、この案も宇宙波動エネルギーに尋ねてみるよ」そして雄介は、再びその場で瞑想を始めた。


 『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。私がテレパシーを使って、ワーマ星の木のエネルギーを宇宙に放出することは可能なのでしょうか』すると雄介の右の耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。

 「やっぱりダメみたいだ」

 由香里が肩を落とした。


 「そうか、中々難しい問題だね」良太が腕組みをしている。四人は、それぞれに腕組みをして考えた。しばらく考えたがこれと言う案は見つからない。

 「よし、今日の所はこれくらいにしよう。それぞれに考えてまた明日話し合いましょう」そして皆は自分の部屋に帰って行った。雄介は、自分の部屋に帰ってベッドに入り、マザーと話した内容についてもう一度考えてみた。


 「マザーさんは、あの木が宇宙全体の潜在意識の基だと言っていた。一旦人々の潜在意識はあの木に集まって、あの木の中で潜在意識は繋がり、そして、それをマザーさんの魂で宇宙に放出しているのだと。でもあの木の側に居ないと潜在意識を放出することはできないのだろうか。


 しかし僕のことをあんなにも知っているなんて驚きだ。テレパシーのことも、宇宙波動エネルギーのことも知っていた。僕の潜在意識があの木を通ってマザーさんによって再び宇宙に放出されたから、あそこまで僕のことが分っていたのだろうか。


 それにワーマ星の順番が来たから、僕にテレパシーを送ったとも言っていた。流れを待って居たのだとも話していたが、なぜあのタイミングだったんだ。あのタイミングは、僕達がラボーヌ星を助けて地球に帰る途中だった。

 

 ちょうどワーマ星の近くまで来ていたからなのか。だから僕も瞑想の中でワーマ星を見つけることができたからなのだろうか。何か別の何かが有る気がする。なぜあのタイミングだったんだろう。そこがなんだか気に掛かるな」雄介は、色々と考えながら眠った。


 次の日、再び四人はコックピットに集まって話しを始めた。

 「何か良い案は思い付きましたか」雄介が皆に聞いたが三人は、黙って首を横に振った。


 「ところで良太、総会の準備はどうなっている」

 「マザーさんがワーマ星の海の上に会場を作っても良いと言って下さったので、その方向で考えているよ。大きな物は一度に運べないので、海に浮かばせることができるパネルを小型の宇宙船で何回か通って運んで、そのパネルを繋げて浮島を作くるんだ。そして、その上に空気で膨らませるドームを作ってパーティー会場にするよ。総会はドームの外の広場で行おうと思っている」


 「それはいい案だね。是非その方法でいこう。マザーさんにも伝えておくよ」

 「よろしく頼みます」


 「ところで、あれから部屋に帰って色々考えてみたんだけど、マザーさんが、自分の順番が来る流れを待っていたんだと言っていたんだけど、何故あのタイミングだったんだろうか。何故かそこが気になるんだ」


 「何故なのかしら。私達がラボーヌ星から帰る途中で、雄介君が瞑想の中でワーマ星を見つけたのよね」

 「それはもしかして、ラボーヌ星の何かとワーマ星が関連しているのかも知れませんね。以前も地球とゼミア星が関連していたように」プッペ議長が言った。


 「そうか、そうかも知れないな。以前もゼミア星を助けることができて、そして地球もギャラクシーユニオンの力で滅亡危機を脱することができた。今回もラボーヌ星を助けることができたから、今度はワーマ星を助けることができるのかも知れない」


 「きっとそうよ雄介君。ラボーヌ星の何かとワーマ星は繋がっているのよ」由香里も確信を持って言った。

 「だったら何が繋がっているんだい。ラボーヌ星は自然なんて一つもない星だった。ワーマ星は自然ばかりで人工的な物は一つもない星だ。二つの星は全く正反対で、共通する物など何も無い気がするけどな」良太が首を傾げている。


 「待てよ、そうか分かったぞ。それだ、良太それだよ」雄介が急に大きな声を出した。

 「二つの星は、全く正反対の星だけど、一つだけ共通する物が有る」

 「何が共通しているの」由香里が大きな声を出した。すると雄介が、もったいぶったように言った。


 「ルシアだ」

 「ルシア」良太と由香里、そしてプッペ議長の三人が声をそろえて言った。

 「ああ、ルシアだ。ワーマ星の中心にある木を見た時、何かに似ていると思ったんだ。それをやっといま思い出したよ。大きな部屋の中心に有って、綺麗な色で光っている。まさしくルシアだ。ラボーヌ星の全てを管理していたルシアと、ワーマ星の潜在意識の基となるあの木は関連しているんだ」


 「でも待って雄介君。ルシアさんはラボーヌ星の人々を苦しめて、そしてリセットされたのよ。ワーマ星の中心の木は人々を苦しめていないし、あの木がリセットされたら大変なことになるでしょう」


 「違うよ。ラボーヌ星で役目を終えたルシアさんが、今度はワーマ星であの木を助けるんだ。これが流れだ。この流れを潜在意識は待っていたんだ」

 「雄介、それは本当か。そんな流れを待っていたなんて本当にそんなことがあるの。雄介頼む、本当にそんなことが有るのか宇宙波動エネルギーに尋ねてみてくれないか」良太が信じられないよな顔をしている。


 「分かったよ、良太。宇宙波動エネルギーに確認してみるよ」そう言って雄介は瞑想に入った。そして宇宙波動エネルギーに尋ねた。

 『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。ラボーヌ星のルシアさんが、ワーマ星の中心の木やマザーさんを助けることは可能なのでしょうか』すると雄介の左の耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。雄介は、ゆっくりと目を開け、そしてニヤリと笑って親指を立てた。


 「何て凄いことなのでしょう。この宇宙の大きな繋がりを、まざまざと見せつけられた気がする」プッペ議長が腕組みをして感心している。

 「プッペ議長、早速ラボーヌ星のルバノーラ総長とダーバルさんに連絡をお願い致します。早急にワーマ星に来て頂きたいと伝えて下さい」


 「分かりました。早速連絡してみます」プッペ議長は、クルーを呼んで支持をだした。そしてしばらくしてクルーがプッペ議長の所にやって来て伝えた。

 「議長、ラボーヌ星のルバノーラ総長とダーバル様は、先日ワーマ星でのギャラクシーユニオン総会開催の連絡を入れてから直ぐに、こちらに向けて出発されたそうで、今から3日後には到着するそうです」


 「そうか、ご苦労」

 「そうですか、それは有難いですね。一番乗りで到着ですね。ダーバルさんが来られたら、早速ルシアさんをワーマ星の木に繋いで、マザーさんの代わりができるのか確認しましょう」雄介も何だかワクワクしてきた。


 「だったら総会の準備も早くしないと、ルシアさんが上手くマザーさんの代わりができるとなったら、直ぐに総会を開いてワーマ星のギャラクシーユニオン加盟の承認を取るんだろう」良太も張り切っている。


 「そうだよ、良太。冴えているじゃないか。じゃあ僕はマザーさんに連絡してこの計画を相談して来るよ」雄介はそう言って自分の部屋に帰り、ワーマ星のマザーにテレパシーを送った。


 『マザーさん、聞こえますか。ギャラクシーユニオンの天野です』

 『はい、天野さん聞こえますよ。マザーです』

 『マザーさん、あなたの星とマザーさんの後継者の件で、お伝えしたいことが有りますので、これからそちらに伺ってもよろしいでしょうか』


 『はい、大丈夫です。いらして下さい』

 『では、これから直ぐに伺います。では後ほど』そして雄介は、早速シップに乗ってワーマ星の大きな木を目指した。大きな木の天辺に行くとマザーは待っていた。シップが着陸し雄介が降りるとマザーが出迎えた。


 「天野さん。良い案が見つかったようですね。早速聞かせて下さい。ではこちらへどうぞ」そう言ってマザーが、雄介を昨日と同じ部屋に案内した。

 「マザーさん、あなたはもうお分かりかも知れませんが、私達がこの星に来る前は、ラボーヌ星と言う星へ行って、その星で起きていた問題を解決して帰る途中だったのです。そのラボーヌ星には、その星の全てを管理していたコンピューターが有ったのですが、そのコンピューターに問題が起きていたのです。


 そして私達は、そのコンピューターを作った人物と共に、コンピューターをリセットして問題を解決したのです。そして、そのコンピューターは、その後分解されて心臓部の部品だけになって、それを私が現在保管しております。そのコンピューターはとても優秀なので、きっとこの星の中心の木や、マザーさんのお役に立てると思います。このことは既に宇宙波動エネルギーにも確認致しました。


 そして、あと3日後にそのラボーヌ星から、コンピューターを作った人物がこの星に到着致します。そう致しましたら、そのコンピューターをこの星の木に繋いで、実際に役に立つ物なのか確認したいのです。そしてマザーさんにも見て頂いて、そのコンピューターがマザーさんの後継者として働けるのか確認をお願い致します」


 「そうですか、それがこの宇宙の流れだったのですね。分かりました。その人物が到着されましたら、そのコンピューターを持ってお越し下さい。私も確認させて頂きます」マザーは、嬉しそうにうなずいた。


 「それと、もしそのコンピューターが正常に作動して、マザーさんの後継者として働けることが確認できましたら、早急にギャラクシーユニオン総会を開催して、あなたの星、私達はワーマ星と呼ばして頂いているのですが、このワーマ星のギャラクシーユニオン加盟の承認を取りたいと思うのです。


 承認が下りましたら、先ほど申しましたコンピューターを本格的に作動させて、今度はマザーさんがそのコンピューターを、あなたの後継者として働けるように教育して行って頂きたいのです」

 「分かりました」


 「そこで、先日申しましたギャラクシーユニオン総会の会場を、このワーマ星の海の上に作りますので、そこで開催させて頂いてもよろしいでしょうか。それとギャラクシーユニオン総会には、マザーさんに出席して頂いて、ワーマ星のギャラクシーユニオンに加入の為のご挨拶をお願いしたいのですがよろしいでしょうか」


 「分かりました」そう言ってマザーは目をつむってうなずいた。

 「ありがとうございます、マザーさん。私共もこのワーマ星とマザーさんのお役に立てるよう、全力を尽くしますので何卒よろしくお願い致します」


 「天野さん、ありがとうございます。この星のこの木を救うことができるのはあなただけです。私はこの木を助け、そして私の後継者を見つけて下さるあなたの言われることなら喜んで協力させて頂きます」


 そして雄介は、マザーシップに帰って行った。マザーシップに帰った雄介は、総会をワーマ星の海の上で行って良いことや、3日後にダーバルが到着したらワーマ星の木に、ルシアを繋いで確認する了解を得たことを皆に話した。


 「よし、それなら早速ワーマ星の海の上に会場の設置を始めます。プッペ議長、小型の宇宙船で海に浮かべるパネルを運ぶのを手伝って頂けますか」良太が議長にお願いした。

 「了解ですよ、良太さん。何なりと私にお申し付けください」プッペ議長も張り切っている。

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