9,新たな依頼

 雄介達が乗ったマザーシップは、ラボーヌ星に向かうときに通ったブラックホールトライアングルは迂回して、ゆっくりモナム星を目指して帰ることにした。

 

 雄介達三人がラウンジでくつろいでいると、そこへプッペ議長が来た。

 「皆さん、モナム星まで少し日にちが掛かりますが大丈夫ですか。お疲れは出ていないですか」

 「ありがとうございます、プッペ議長。私達は大丈夫ですよ。楽しくこのマザーシップの中で過ごしています」良太が明るく言った。


 「それは良かったです。何かご希望などありましたら遠慮せず言って下さいね」

 「ありがとうございます」三人が声を揃えて言った。

 「では、何かありましたらお申し付け下さい。失礼します」そう言って議長は出て行った。


 「でも雄介、今回のラボーヌ星を助ける旅で、色々なことを学んだよ。この宇宙の中には色々な星が有って色々なことが起きている。まだまだ僕達はこの宇宙の星々の為に貢献していかなければならないね」良太が神妙な顔つきで話した。


 「あら良太君、珍しくいいこと言うじゃないの。でも良太君の言う通りだわ。この宇宙は本当に広いわ。今回私達が旅した宇宙空間だって宇宙全体からすれば、ほんの片隅に過ぎないわね。この広い宇宙の平和と愛の為に、もっともっと活躍していきたいわね」由香里も今回の旅で地球だけでは無く、広い宇宙に目を向けて考えるようになっていた。


 「二人とも凄いね。君達みたいに大きな視野で僕は考えられないよ」雄介が、にやけている。

 「冗談言うなよ。雄介は僕達以上に宇宙全体のことを考えているだろ」

 「ワッハッハ、冗談だよ。でも僕達が今回の旅で学んだことは大きいね。これからもその志で頑張って行こう」

 「了解です」


 「そろそろ今日は寝ようか。また明日ゆっくり今後のことも考えていこう」

 「そうね、じゃあおやすみ」

 そして三人は、それぞれの部屋に入って行った。


 雄介は自分の部屋に入り、いつものように寝る前の瞑想を始めた。すると雄介の意識の中に、緑色した綺麗な惑星が見えてきた。

 「なんて綺麗な緑色した惑星なんだ。陸地は全て森で覆われ、海は深い青色をしている。この惑星は全てが自然でできている。まだ文明も発達していない惑星なのか」しばらく雄介は、その綺麗な緑色をした星を意識の中で眺めていた。するとその星から声が聞こえた。


 『天野さん。天野雄介さん』

 「ん、この星から僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。誰だ、誰なんだ。僕の名前を呼ぶのは」

 『天野雄介さん。やっと私の星にコンタクトして下さいましたね。私はずっとあなたを待っていたのですよ』

 『あなたは誰ですか。なぜ僕の名前を知っているのですか』雄介は、瞑想の中の緑色した星から聞こえる年配の女性の声に尋ねてみた。


 『私は、この星でマザーと呼ばれています。私の命はもうそんなには長くはありません。私が死ねば、この星の中心にある大きな木が発するエネルギーを、宇宙全体に伝えることができなくなります。そうなればなんらかの異変がこの宇宙に起こることでしょう。そうなる前に手を打たなければなりません。天野さん、是非とも私の星に来て下さい。そしてこれから先、どのようにしていけば良いのか考えましょう。ではお待ちしております』 そう言って緑色の星から聞こえた声は途絶えた。


 雄介は瞑想を終了して、いま瞑想の中で見えた星のことを考えた。さっきの星は、何て言う星で何処に有る星なんだ。なぜ僕の名前を知っていたんだ。あの声の人が亡くなると、この宇宙になんらかの異変が起こるって言っていたけど、どう言うことなんだ。雄介は混乱していた。


 「もう一度瞑想して、さっきの星を探そう」雄介は、心を落ち着かせて再び瞑想を始めた。しかし今度はさっき見た緑色の星を見ることができない。しばらく瞑想を続けたがやはり緑色した星は見えない。もう無理みたいだ。明日プッペ議長に相談してみよう。もう今日は休もう。そして雄介は眠りに付いた。


 次の朝、良太が雄介を起こしにきた。

 「雄介、いつまで寝ているんだ。君が寝坊するのは珍しいな。もう朝食の用意はできているよ」

 「ごめん、昨夜ついつい遅くまで瞑想していたものだから寝坊したよ」そう言って雄介は、朝食が用意されたテーブルに着いた。


 「何か有ったの、雄介君」由香里は既に朝食を食べ始めていた。雄介と良太も朝食を食べながら、雄介は昨夜寝る前に瞑想で見た緑色の星のことを二人に話した。

 「それは不思議な話だな。でもその星が何処に有る星で、何と言う星か分からないと手の打ちようがないよね」良太が食後のオレンジジュースを飲みながら言った。


 「そうなんだ。でもその星の様子はしっかり覚えているから、プッペ議長に言って色々な星の画像を見せてもらえば、その星が見つかるんじゃあないかと思うんだ」

 「そうね、それはいい考えだわ。早速プッペ議長に相談してみましょう」由香里が立ち上がり、雄介の腕を引っ張って立ち上がらせた。

 「ちょっと待ってくれよ。僕も一緒に行くよ」良太が慌ててジュースを飲み干して二人に付いて行った。


 三人がコックピットに付くとプッペ議長が驚いた。

 「おはようございます。今朝は早いですね。何かありましたか」

 「ええ、プッペ議長。私が昨夜眠る前に行った瞑想で、不思議な体験をしたので今朝はそのことで参りました」そう言って雄介は、昨夜の瞑想で見た惑星の話をした。


 「そうですか。その惑星から女性の声が聞こえたのですか」

 「それでその星が何処に有る星で、何と言う星なのか知りたいので、プッペ議長にそれらしい星の画像を色々と見せてもらおうと思いまして早く来たんです」


 「そうですか。その星は緑色をしていて陸地は全てが森だったんですね。海も有って海は深い青色ですね。私のモナム星に似た感じですね」

 「そうです。僕も初めはモナム星かと思ったのですが、モナム星では無かったです。その星は陸地全てが木で覆われたジャングルのようでした」

 「分かりました。それではそれらしき惑星の画像を用意してお見せしますね」プッペ議長はクルーを呼んで、惑星の画像をディスプレイに映し出すように指示した。


 「それでは準備ができましたので、1枚ずつ惑星の画像を映しますね」するとディスプレイに緑色した惑星の画像が映し出された。

 「これはどうですか。雄介様」

 「違いますね。これは陸地が緑で覆われていますが海が黒色ですね」

 「では、次のこれは」

 「これも違いますね。今度は海は青色でも陸地に地面が見えます」


 「では、ゆっくりと次から次に画像を映して行きますので、これだと思う惑星がありましたら言って下さい」

 そしてディスプレイに次々と惑星の画像が映し出された。その画像を雄介は食い入るように見ていたが、中々これと言う惑星が出てこない。


 「プッペ議長、この宇宙には沢山の惑星があるんですね。だいたいどれ位の数の星が有るんですか」良太が聞いた。

 「良太さん。この宇宙全体の惑星の数はまだ正しく把握できていません。恒星の数も正確には分っていませんが、あなた達の地球上に存在する砂粒の数より、この宇宙に存在する恒星の数の方が多いのですよ」


 「それは本当ですか議長。砂粒の数より星の方が多いんですか。地球上の砂漠や砂丘、それに沢山ある砂浜にある砂粒全部より、星の数の方が多いなんて、僕にはちょっと想像ができないですね。どれだけこの宇宙が広いのか僕の頭では理解不可能ですよ」


 「プッペ議長、いま見せて頂いている緑色の惑星は何個位あるのですか」一緒に映像を見ていた由香里が少し疲れてきたのか議長に聞いた。

 「だいたい緑色の惑星だけで800は有ります」プッペ議長があっさり言った。

 「800ですか。雄介大丈夫か。まだ100も見ていないけど少し休憩しようよ」良太も少し疲れたがでだした。


 「そうだね。これは目がそうとう疲れるね。少し休もうか。あ!ちょっと待って、さっきの画像をもう一度見せて下さい」雄介がそう言うと一つ前の惑星の画像に戻った。

 「これだ。この惑星だ。間違いない」雄介が自信を持って言った。


 「この惑星ですか雄介様。ちょっと待って下さいね。この惑星の資料を見ますね。この惑星の名前はワーマ星と言いますね。この惑星にはまだ文明がありません。これだけ緑が豊かですから生物は存在していると思いますが、まだ詳しいことは分っていない星ですね。しかしこの惑星には変わった特徴があります。この星からは、かなり強いエネルギーが発せられているようです」


 「瞑想の中の女性も惑星の中心の木からエネルギーを宇宙に発していると言っていましたけど、そのエネルギーはどのようなエネルギーなのですか」

 「それもまだ詳しくは分っていないです」

 「この星は、いま私達が居る場所からどの位離れているのですか」


 「比較的近いですね。ここからですと約1か月で到着できると思います」

 「そうですか。プッペ議長、今からこの星に向かうのは可能でしょうか」

 「そうですね、私達は大丈夫ですが皆さんはどうなのですか」

 雄介達は顔を見合わせうなずいた、そして三人が声を合わせて言った。

 「大丈夫です。行きましょう」


 「雄介、なんだかワクワクしてきたよ。また一つの星を助けることができるかも知れないね」良太がニコニコしている。

 「そうだね、今度も上手くいけばいいけど、でも今度のワーマ星はまだ詳しく分っていない星だし、だいたいギャラクシーユニオンに加入していない星だから、簡単には助けることができないんだ」


 「そうね、ギャラクシーユニオンに加入していない星を助けてはいけないことになっているのよね。何だか今回は難しいことになりそうね」由香里も腕組みしている。

 「でも何とかなるよ。前向きな気持ちでいこうよ。そうだろ、この宇宙の中に困っている星があるなら、僕達はその星を助けに行く。それが僕達の使命だろ」良太が張り切って言った。


 「良太君、あなたやる気ね。凄いわ。そうね良太君の言うとおりだわ。前向きな気持ちでいきましょう」

 「やる前から悩んでいても仕方ないね。よし、今度もワーマ星を助ける為に頑張るぞー」

 「エイ、エイ、オー、イェーイ」三人が掛け声を掛けてハイタッチした。


 「皆さん凄いですね。皆さんを見ていると私もやる気が出て来ました。是非今回も私にお手伝いさせて下さい」三人を見ていたプッペ議長も張り切って言った。

 「是非、プッペ議長よろしくお願いします」


 「私もハイタッチさせて下さい。エイ、エイ、オー」プッペ議長がそう言ってしっぽを高々と上げた。一瞬三人は、顔を見合わせて固まった。でも楽しそうにしっぽを高々と上げるプッペ議長を見て三人はハイタッチした。


 「イェーイ」

 「よーし、私も頑張ります」プッペ議長が楽しそうにしている。

 「では一旦僕達は部屋に帰りますね。また午後から打ち合わせしましょう」

 「そうですか。ではここでお待ちしております」そう言うプッペ議長を残して三人は部屋に帰った。


 「雄介、もうプッペ議長の前でハイタッチは止めよう」

 「そうだね、僕も一瞬しまったと思ったけど遅かったよ」

 「それより早く手を洗いましょうよ」

 三人は、それぞれの部屋に入って、さっきのプッペ議長のしっぽの感触を忘れようと手を洗った。


 そして午後から雄介達は、再びコックピットにやって来た。

 「プッペ議長、それではワーマ星に行く計画を立てましょう」雄介達はディスプレイの前のテーブルに着いた。


 「少し調べたのですが、ワーマ星について分かったことをお話しします。ワーマ星に行くまでの道中に問題になる箇所は無いようですので、順調に航行して一か月程で到着できると思います。ワーマ星についてですが、ワーマ星の大きさはほぼ地球と同じ位です。大気の成分も地球と同じで酸素も十分あります。


 しかし何らかのエネルギーが星の全体から放出されている為、大型の宇宙船では星に近づけないようです。小型の宇宙船ならさほど影響を受けないようですので、近くまで行ったら小型の宇宙船で上陸することになります。人体にも悪い影響を与えるエネルギーでは無いようです。文明は確認されていませんが、雄介様が誰かと瞑想で話をされたそうですので、話しができる人物が存在すると思われます。分かっているのはそのくらいです」


 「分かりました。ありがとうございますプッペ議長。しかし不思議に思ったのですが、瞑想をしている時にワーマ星のマザーと名乗る女性の方から先に、僕の意識にコンタクトして来て声が聞こえました。普通なら僕の方からテレパシーを使って目当ての人にコンタクトするのですが、あのときは、意識を僕もワーマ星に向けてはいましたが、マザーと名乗る人の方からコンタクトして来たと言うことは、マザーさんはテレパシーが使えるのだと思います」


 「だったらマザーさんは、魂レベルが6に達した人で、雄介と同じ魂レベルの人がこの宇宙の中に、もう一人存在していると言うことか」良太が驚いている。

 

 「そのマザーさんは、どんな人なのかしら。声はご年配のようで、自分の命はそんなに長くはないとお話しだったんでしょう。そしてマザーさんがもし亡くなると、ワーマ星の木が出しているエネルギーを宇宙に伝えられなく成るのよね。それで宇宙に悪い影響を与えると言っていたんだから、マザーさんは宇宙にエネルギーを伝える相当重要な人物のようね」由香里はそう思った。


 「そうだね。実際ワーマ星からは強いエネルギーが放出されているのが分っているし、もしそのエネルギーが無くなったらどんな影響が有るのか分からないけど、マザーさんは僕と同じ魂レバルを持った人のようだから、この宇宙にとって何らかの影響は必ずあるはずだ」


 「そうだね、そこまで考えてみると今回のワーマ星のことは、かなりこの宇宙全体にとって重要なことなのかも知れないな」良太も真剣に言った。

 「ところで雄介様。ワーマ星に何か問題が発生しているとして、ワーマ星を我々が助ける為には、ギャラクシーユニオンに加盟する全星から承認を受けなければなりませんが、その件はどうしますか」プッペ議長が困った顔をした。


 「そうですね、それがありましたね。実際にワーマ星に行ってみないと詳しいことが分りませんし、行ってから我々がワーマ星を助けるとすると、それから全加盟星に承認を得るのはかなり時間が掛かるかも知れませんね。どのようにするのが良いですかね」雄介も困った顔になった。


 「でも雄介君、ワーマ星のマザーさんは、あなたに助けてもらいたいから雄介君にコンタクトしてきたんでしょう。だったら悩んでないで今から全加盟星にワーマ星を助けたいと連絡を入れたらどうなの」由香里が強い口調で言った。

 「しかしそれは実際にワーマ星がどのような状態で、どのように助けるのか詳しく伝えないと、全加盟星に納得してもらえないよ」雄介も悩んだ。


 「だったらこう言うのはどうかな。ワーマ星の今までのいきさつと、我々が今詳しいことを確認に向かっていると全加盟星に伝えて、そろそろギャラクシーユニオン総会を開催する時期だから、全加盟星もワーマ星に来てもらって、ワーマ星の近くで今回はギャラクシーユニオン総会を開催することにするのは」良太が言った。


 「なんだって」雄介が大きな声を出した。

 「ごめん。簡単に言ったけどそんなの無理だよね。500の星からワーマ星の近くに集まって総会なんて無理に決まっているよね。ごめん、今のは忘れてくれ」良太が頭をかいている。


 「良太、名案だよ。それがいいよ。今から全加盟星に連絡を入れれば、僕達がワーマ星に到着して詳しい情報を聞き、対策を考える頃には、ほとんどの星から理事達がワーマ星に到着する。そうすればそのまま総会を開いて即行動が起こせる。今回のギャラクシーユニオンの総会はそうしよう」雄介が張り切って言った。


 「それは名案です良太さん。では早速全加盟星に今回のいきさつとワーマ星の詳しい位置、それに総会開催日時を報告しますね。開催日時は何時がよろしいですか、雄介様」

 「そうですね。一番遠い会員の星から到着するのは、大体何時頃になりそうですか」


 「そうですね。今から約2か月もあれば全加盟星から到着できると思います」

 「それでしたら、今からちょうど2か月後にしましょう。早く来られる星の方は来て頂いて総会の準備を手伝って頂きます。今回の総会は全加盟星が協力しておこなうこととします」


 「了解致しました。それも全加盟星に連絡致します」プッペ議長も張り切りだした。

 「良太、本当に名案だよ。今回の総会は良太の案を採用するから、総会実施本部長を良太、君がやってくれ。当然僕や由香里も手伝うからよろしく頼むよ」


 「そうよ、良太君頑張って。私も手伝うから今回のギャラクシーユニオン総会を大成功にしましょう」由香里も張り切っている。

 「僕が実施本部長なんてできるかな」

 「良太なら大丈夫だよ。最近の総会は、何回かプッペ議長のモナム星で行ったから、プッペ議長にも色々相談に乗ってもらえば大丈夫だよ」


 「良太さん、何か分からないことが有ったら何なりとお聞き下さい。お力になりますよ」

 プッペ議長も喜んでいる。

 「ありがとうございます。では頑張ってみます。皆さんご協力よろしくお願い致します」


 良太が深々と皆に頭を下げた。

 「アッハッハッ。良太、今からそんなに緊張するなよ。リラックスして行こう」雄介が良太の肩を叩いた。

 「そうだね。よし頑張るぞ。イェーイ」そう言って良太が手を高々と上げた。


 「おい、良太」雄介が慌てて言ったが遅かった。

 「イェーイ」プッペ議長がしっぽを高く上げて良太の手に合わせた。しかたなく雄介と由香里もハイタッチした。三人の顔が引きつった。

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