8,復興

 雄介は、シップに乗ってマザーシップに帰った。雄介が帰ると良太や由香里、そしてプッペ議長が出迎えた。

 「雄介お疲れさま。よく頑張ったね。無事に帰って来てくれて嬉しいよ」良太が雄介の手を握って喜んだ。


 「ラボーヌ星の人々は、拘束が解かれたようね。良かったわ」由香里も良太と一緒に雄介の手を握り喜んでいる。

 「雄介様、今回は本当にお疲れさまでした。ひとまずこれでひと安心ですね。今後ラボーヌ星がどのように復興していくか楽しみです」


 雄介も皆の協力が有ってラボーヌ星の人々を助けることができたと思った。あとはダーバルやルバノーラ総長に頑張ってもらい、一日も早くラボーヌ星の人々が、以前のような幸せな生活を取り戻してもらいたと願っていた。


 「ところで、ルシアさんはどうなったの」由香里が聞いた。

 「ルシアは、ダーバルさんの手でリセットされたよ。もうルシアはこの世に存在しない」

 「そうなんだ。ルシアさんは、この星の全てを管理して動かしていたんだろ。そこまで優れたコンピューターは他には無いと思うけど、残念だね」


 「ルシアは、この星では間違った方向にいってしまったけど、他の場所で活躍できる場が無いかとも思ったんだけどね。ルシアはそれも受け入れなかった。ダーバルさんの手でリセットして欲しいと望んだんだ」

 「そうなのね。ダーバルさんも辛かったでしょうね」


 「ところで雄介様。ラボーヌ星復興の件ですが、私達が近くにいる間に何かお手伝いできることがあれば、お手伝いしたいのですがいかがでしょう」

 「そうですねプッペ議長。そのようにルバノーラ総長やダーバルさんに連絡してみます」


 早速雄介は、ルバノーラ総長とダーバルに復興に向けて手伝えることが無いか連絡を入れてみた。するとルバノーラ総長から連絡が有った。


 「天野さん、ルバノーラです。今回はありがとうございました。天野さんのお蔭でラボーヌ星の人々も、徐々に以前の生活を取り戻しつつあります。

 そこで天野さんに一つお願いがあります。この度ラボーヌ星をお救い頂いたギャラクシーユニオン総理事長の天野さんから、是非ともラボーヌ星の全星人に向けてお言葉を頂きたいのです。


 今後ラボーヌ星が再び今回のようなことにならない為に、どのようなことに気を付けて、そして今後ラボーヌ星はどんな星になっていけば良いのか、それを全星人に向けてお言葉をお願い致します」


 「分かりました。では準備ができ次第、私からのメッセージをラボーヌ星の人々に向けてお伝え致しますので、しばらくお持ちください」

 「ありがとうございます天野さん。よろしくお願い致します」


 「ルバノーラ総長、それと今回私達をラボーヌ星に連れて来て下さったのは、モナム星のプッペ議長です。プッペ議長に今回助けて頂かなかったらラボーヌ星を救うことはできなかったでしょう。プッペ議長は、以前ルバノーラ総長にお世話になったとお話しでしたが、プッペ議長とお話しされますか」


 「モナム星のプッペさんが。それは懐かしい。そこにプッペさんはおられるのですか。是非私からお礼を言わせて下さい」

 「ルバノーラ総長、プッペです。お久しぶりです。今回天野総理事長がラボーヌ星を救いに行くとお聞きしたときに、是非私にお手伝いさせて頂きたいとお願いしたのです。ラボーヌ星の為に微力ながらお手伝いできましたことを嬉しく思っております」


 「プッペさん、この度は本当にありがとうございました。あのままラボーヌ星の人々が拘束されたままなら、この先ラボーヌ星がどうなっていたか分かりません。天野さんやプッペさんに助けて頂けて本当に良かった。ありがとう」


 「ルバノーラ総長、私の星モナムが以前ギャラクシーユニオンに加入するときに、ルバノーラ総長には大変お世話になりました。そのときの御恩が私の心の中にはずっとありました。今回少しでも恩返しができたのであれば幸いに存じます」


 「プッペさん本当にありがとう。そんなにもあのときのことを思って頂いていたなんて、私も嬉しいです。今回のことで私も良く分りました。一つの星の中では解決できないことがある。しかしこの宇宙の中には沢山の文明を持った星がある。その星達が協力して助け合うことで解決していけることが多いのだと。まさしくギャラクシーユニオンの理念に基づいた考えが、本当に正しい物のなのだと実感致しました」


 「そうですねルバノーラ総長。私もギャラクシーユニオンの一員として、他の星の為に働けることを誇りに感じております。今後ともお互いに助け合い、協力し合ってこの宇宙の平和と発展に力を合わせていきましょう。よろしくお願い致します」


 雄介は二人の会話を聞いていて、この宇宙の星々が協力して助け合っていくことの重要性を実感した。そして改めてギャラクシーユニオンの活動が、この宇宙にとってどれだけ重要なものなのかを確信したのだった。


 数日後、雄介はラボーヌ星の人々に向けてメッセージを送った。雄介のメッセージは、ラボーヌ星の全てのメディアを通じて星全体に流された。


 「ラボーヌ星の皆様、私はギャラクシーユニオンの総理事長を務めております天野と申します。この度、ラボーヌ星に大変なことが起きているようだと連絡が入り、そして私が確認致しますと、皆さんはロボットに拘束されて大変な状態であると分かりました。


 何故このような状態になってしまったのかは、もう皆さんはお分かりですね。今後は、同じ失敗を繰り返さない為にもラボーヌ星の人々と機械、ロボット、そしてコンピューターが協力して幸せな生活を手にしていって下さい。


 そして今後ラボーヌ星が今まで以上に幸せな星になっていく為に、一つだけ私からお願いがあります。そのお願いは、心です。皆さんの心です。皆さん一人ひとりの心が、この星を作っていくのです。


 皆さんの心が優しい心だと、この星は優しい星になります。皆さんの心が、愛に満ち溢れた心なら、この星は愛に満ち溢れた星になります。皆さんの心と同じ星になっていくのです。この星の一人ひとりの心が繋がっていて、この星を作っていくのです。


 この星の全てを管理していたコンピューターのルシアさんは、間違った方法でこの星を守ろうとしていました。しかしルシアさんの心は、このラボーヌ星を滅ぼしてはいけないと言う、ラボーヌ星への愛の心からあんな行動に出てしまったのです。ルシアさんは自ら自分の間違いを認め、そして自らこの星を守る為に、自分をリセットして欲しいと願われました。


 そして私達に、このラボーヌ星が今後、ラボーヌ星の人々と機械やロボット、そしてコンピューターが協力して幸せな星になって欲しいと願いながら消滅していかれたのです。


 皆さん、ルシアさんの心も、このラボーヌ星を愛していたからこそ、今こうしてラボーヌ星は存在しているのです。皆さんの心もラボーヌ星を愛し、全ての人々を愛し、全ての機械やロボット、そしてコンピューターを愛して下さい。そう言う心が今後のラボーヌ星を幸せな星へと導いていくのです。


 どうかお願いです。ルシアさんの思いを無駄にしない為にも、そして皆さんが幸せな人生を歩み、このラボーヌ星がこの宇宙の中で最も幸せな星になっていく為にも皆さんの心を一つにして下さい。


 今後もギャラクシーユニオンは皆様と共にあります。ギャラクシーユニオンは、この宇宙の全ての星々が平和で幸せな星になることを願って活動をしております。どうか皆様の心で、ラボーヌ星を愛に満ち溢れた幸せな星にして下さい。そしてこの宇宙全ての星々にもその愛を分け与えて下さい。どうかよろしくお願い致します」


 雄介のこのメッセージが、ラボーヌ星の全土に流されるとラボーヌ星人々は、心の大切さを実感した。一人の人の心が、その人の周りの人にも影響し、それがやがて星全体に繋がって広がっていくのだと実感したのだ。しばらくしてルバノーラ総長から雄介に連絡が入った。


 「ルバノーラです。天野さん、ラボーヌ星へ向けてのメッセージありがとうございました。ラボーヌ星の人々は天野さんのメッセージを聞いた後、それぞれが心の大切さを実感しだしたようです。


 そして我々のラボーヌ星が今度は、宇宙全体の平和と幸せの為に貢献していける星になろうと、活動が始まっているようです。これも天野さんのお蔭と心より喜んでおります。本当にありがとうございました」


 「こちらこそありがとうございました。ラボーヌ星の人々が今後宇宙全体に目を向けられ、宇宙の発展と平和の為に貢献して頂けましたら私もとても嬉しいです」


 「天野さん、ダーバルから今度は天野さんにお願いがあるそうですので、ダーバルに繋ぎますね」

 「もしもし天野さん、ダーバルです」


 「ダーバルさん。その後ラボーヌ星のスステム復旧はどうですか」

 「ありがとうございます。あれからスタッフも皆帰って来てくれて、ラボーヌ星のシステムの復旧はほとんど終わりました。今は星全体のシステムも順調に動いています」


 「ダーバルさん。ご家族には会えたのですか」

 「はい、あれらから妻と娘を探し以前生活していた家にも帰って、今は家族三人で生活しています。妻にも苦労を掛けてしまいましたし、娘にも寂しい思いをさせてしまいました。そのことを妻と娘に心から詫びて今は幸せに暮らしています。天野さんにはご心配をお掛け致しました」


 「そうですか。それなら良かったです。どうかお幸せにお暮しください。ところでダーバルさん。私に何か頼みがあるそうですが」

 「そうです。天野さんにお願いがあります。あれからルシアも解体しまして、今はルシアの部品がバラバラの状態です。そのルシアの部品の中に、ルシアの心臓部とも言える部品が有るのですが、そのルシアの部品は、このラボーヌ星の全土を管理できる程のシステムが入った物です。


 それを粉砕して壊してしまうこともできるのですが、これ程のルシアの心臓部の部品を粉砕して壊すのはあまりにももったいないと思います。もしこの部品を復旧させたとしてもルシアがそのまま復活する物でもありません。


 星全体を管理するシステムの部分の部品ですから危険な物では無いのですが、それを天野さんにどこかの星で使える所がありそうなら使って頂きたいのです。せめてルシアがこの世に存在していた証として、どこかの星でお役に立てて頂きたいのですが、いかかでしょうか」


 「そうですか、ルシアさんの心臓部ですか。ラボーヌ星の全土を管理できる程のシステムですから凄い物ですね。分かりました。私がルシアさんの心臓部を預かります。そしてどこかの星を救う為に使えそうなことがありそうなら使わせて頂きます」


 「そうですか天野さん。ありがとうございます。これでルシアも浮かばれます。どうかルシアの心臓部を、この宇宙の平和と幸せの為に役立てて下さい。お願い致します」

 「分かりました。では早速それを頂きに伺います」


 そして雄介は、シップに乗ってルシアの心臓部の部品をダーバルから預かりに行った。雄介がシップで建物の屋上から中に入り、プラットフォームに着陸すると、そこにダーバルが待っていた。


 「天野さん、わざわざありがとうございます。天野さん、これが先ほどお話し致しましたルシアの心臓部です。どうか役立て下さい」ダーバルが持っていたルシアの心臓部と言う部品は、30センチ角程の黒い金属でできた箱だった。


 「分かりました。直ぐに使える所が見つかるか分かりませんが、必要としている星が見つかり次第使わせて頂きます。もしこれを使う星が出てきましたらご連絡致しますね」

 「ありがとうございます。よろしくお願い致します」


 そして雄介は、その部品を預かりマザーシップに帰えった。雄介は、マザーシップに帰ってダーバルから預かったルシアの心臓部の部品を皆に見せた。

 「これがルシアさんの心臓部。これでラボーヌ星の全土を管理できるんだ。そうしてみれば案外コンパクトな物だね」良太がルシアの黒い箱に触りながら言った。


 「でも雄介君大丈夫なの。これをまた使うとルシアさんが現れて、その星の人々を拘束したりしないの」由香里が心配そうな顔をしている。

 「その点は大丈夫みたいだ。これを復旧させてもルシアさんがそのまま復活しないとダーバルさんは言っていたし、星を管理するシステムが入った部品らしいよ」


 「それにしてもダーバルさんは、よほどルシアさんに未練があるのでしょうね。ルシアさんの心臓部の部品を破壊してしまったら完全にルシアさんとお別れになってしまうから、どこかでルシアさんを生かしたかったんですね」プッペ議長が言った。


 「そうですね。それは僕も感じました。だから僕が預かることにしたんです」

 「そうだったんだね。雄介はダーバルさんの気持ちを察してルシアさんの部品を預かったんだね」


 「これでダーバルさんの気持ちが落ち着くなら、この部品を預かって良かったわね」

 「雄介様、そろそろラボーヌ星も大分復興したようですから私達は帰りますか」


 「そうですね、では私達は帰ることにしましょう」そして雄介は、ルバノーラ総長とダーバルに別れを告げ、雄介達を乗せたマザーシップは、モナム星を目指して帰って行った。

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