10,臨時総会(3)
雄介とモウザリヤ総長、そしてアロンとソニヤも祝賀パーティーが行われるホテルアウタースペースに移動した。ホテルに着くと、すでに各星の代表者達も移動していてパーティー会場はとてもにぎやかだった。雄介のことを各星の代表達が見つけると、次々に挨拶にやって来た。
「初めまして、私はセイファート銀河の中に有りますフィヤー星の者です。総理事長就任おめでとうございます。どうかフィヤー星を宜しくお願い致します」そう言って挨拶に来たのは、身長が2メートル位は有り頭に角が何本も生えていて、怪物のような顔をした星人だった。
「こちらこそ宜しくお願い致します」雄介も挨拶したが少し怖かった。
「天野総理事長、就任おめでとうございます」そう声が聞こえたが雄介には姿が見えなかった。すると誰かが雄介のお尻を突っつく感じがした。ふと後ろを振り返り下を見ると、今度は小さな子豚が服を着て立っていた。
「天野総理事長、私はモンテ銀河のラキー星の者です。今後とも宜しくお願い致します。是非一度ラキー星に来てください。ラキー星の食べ物は美味しいですから」そう子豚のようなラキー星人は挨拶した。
「ありがとうございます。機会がありましたら是非一度行かせて頂きます」雄介は、可愛らしい子豚のラキー星人に微笑んだ。アロンが雄介に話し掛けて来た。
「雄介お疲れ様。これから雄介は益々忙しくなるね。でもこれからは僕に代わって、このギャラクシーユニオンと宇宙の平和の為に宜しく頼むよ」
「アロン、そうだね、忙しくなりそうだね。しかしびっくりしたよ。急に総理事長交代の話を出したりして、事前に言っておいてくれないと困るよ」
「あら、雄介さん。あなたが総理事長になることは、あなたの魂レベルが6に達した時点で決定していたことなのよ。魂レベル6は、それだけ価値があるものなんだから頑張ってね」ソニヤも笑顔で話した。
「じゃあソニヤさんも、今日アロンが総理事長交代の話を出すのを知っていたんですね。ひどいな。でも自分で言うのも何ですが、この魂レベル6は本当に凄いですね。この魂を使って宇宙全体の平和の為に頑張ります。
アロン、それはそうと一つ疑問が有るんだけど、君が第70代の総理事長で、アロンの前々総理事長を務められていた第68代総理事長が魂レベル6で、それから約250年経ったと言っていたけど、アロンはいったい何年総理事長を務めたの」
「僕でだいたい120年位だよ」アロンがあっさり言った。
「じゃあ君は、いったい今何歳なんだい」雄介は、今までアロンの歳を聞いたことがなかったが、思い切って聞いてみた。
「地球人で言うと150歳位だよ」
「え、アロン、君は150歳なの。僕と同じ位だとずっと思っていたよ」雄介は、アロンの歳を聞いて驚きが隠せない。
「じゃあソニヤさんも、アロンと幼なじみと言っていたから150歳なんですか」雄介が、恐る恐るソニヤに聞いてみた。
「雄介さん。レディーに歳を聞くのは、この宇宙のどの星でもタブーなのよ」
「ごめんなさい。失礼しました」雄介は、驚きが隠せない。
「雄介、僕がギャラクシーユニオンの総理事長に就任したのも、今の君と同じ位のときだ。だから君もこれから130年は頑張って総理事長を務めてくれよ」アロンが雄介の肩に手を置いた。
「分かったよ、アロン。頑張ってみるよ。でもあと130年頑張るとすると150歳位まで生きないとダメだな。そんなに生きられるのかな」
「大丈夫よ、雄介さん。魂レベル6に達した者は人を健康にしてあげることもできるし、自分も健康になれるのよ。だから150歳位は楽勝よ。でも一つ若さを保つ秘訣を雄介さんに教えてあげるわ。
人は、ずっと若くいたい、歳を取りたくないと思った瞬間から歳を取っていくの、望めば望むほどそれがこだわりと成って若さが遠のいていくのよ。だから若さを望むのではなくて、心が若いままで居ればいいの。常に17歳位の心でいると精神も肉体も若いままで居られるのよ。17歳はなんでもできる希望に満ち溢れた歳よ。これは宇宙波動エネルギーからのメッセージだからね」ソニヤが笑顔で言った。
「そうなんですね。僕も今回地球が滅亡するかも知れないときに、人に望んではいけないことに気が付きました。健康も若さも望むとダメなんですね。よく分かりました。じゃあ僕も永遠の17歳の気分で150歳目指して頑張ります」
「雄介さん、でも結局今回も一番驚くことが多かったのは、雄介さんだったわね」ソニヤの言葉に、その場に居た皆が笑った。
「アロン様、天野総理事長、本日はありがとうございました」そう言ってそこへ近づいて来たのは、プッペ議長だった。
「プッペ議長、今回も素晴らしい会場で総会ができました事を感謝致します」アロンがプッペ議長に挨拶した。雄介は、何だか嫌な予感がしてきた。
「天野新総理事長、今後とも我がモナム星を宜しくお願い致します」そうプッペ議長が言って雄介に近づいて来たので雄介は身構えた。
「プッペ議長、こちらこそ地球の為にご尽力頂きましたこと感謝しております。今後とも宜しくお願い致します。でも今回握手はご遠慮致しますので」そう雄介は事前に言った。
「そうなんですか。でも私は天野様が総理事長に就任されたことがとても嬉しくてたまりません。本当におめでとうございます」プッペ議長は、感極まって雄介に抱き着いた。
「わ~、議長~、やめて~」プッペ議長の体は、議長のしっぽと同じ感触だと言うことが雄介に分かったが、すでに遅かった。そしてプッペ議長は、頬を雄介の顔に引っ付けて雄介の耳元で囁いた。
「天野総理事長、とっても美味しい豚まんを100個お願いしますね」
「誰か~、助けて~」雄介の声が会場内に響き渡った。
翌日、雄介とモウザリヤ総長がモナム星を出発するとき、アロンとソニヤが見送りに来た。雄介は、モウザリヤ総長とシップに乗り込んだ。シップの窓から二人を見ると、アロンとソニヤが一生懸命に手を振っている。雄介も二人に手を振った。シップがゆっくりと上昇していって、段々と二人が小さくなって見えなくなった。
「シップ、ゼミア星に向かってくれ」
「かしこまりました」
「モウザリヤ総長、モナム星はどうでしたか」
「素晴らしい星でしたね。あんなに自然を大切にしていて感心しました。それに文明もかなり発展しているので驚きましたよ。ゼミア星も色々と参考にしていきたいです」
「地球の文明も、まだまだこの宇宙の中では遅れています。今後は地球とゼミア星が協力して、星の発展や平和に努力していきましょう」
「分かりました。天野総理事長、今後共よろしくお願い致します」
「総長、僕を総理事長と呼ぶのは止めて下さい。雄介と呼んで下さればいいですから」
「では、私もモウと呼んで下さい。親しい友人はそう呼んでいます」
二人は、それからゼミア星に着くまでの間、楽しく今後の地球とゼミア星について話しながら帰った。シップは、3日でゼミア星に帰ってきた。ゼミア星に帰ってくると二人を大勢の人が出迎えた。ゼミア星は、とても平和で愛に満ち溢れた星になっていたので、雄介は安心して地球へ向かった。
そのころ宇宙では、宇宙の膨張スピードが更に減少し、ダークパワーによる文明の遅れた争いの絶えない惑星の淘汰は続いていた。ダークパワーの黒い力は宇宙全体に広がりつつあったのだ。
アロンは、アンドロメダ星の長老に雄介のことを報告した。
「長老、今回天野雄介は、魂のレベル向上に成功し、彼の魂レベルは6に達しました。これでダークパワーによる惑星の淘汰も防げるのではないのでしょうか」
「いや、まだまだ彼のレベルでは、ダークパワーに立ち向かうことは無理だろう。更に精進することが必要だ」
「承知致しました。長老、まだダークパワーによる星の淘汰は続いているのですか」
「そうだ、宇宙の膨張スピードも更に減少しつつある」
「そうですか、もし今後宇宙の膨張が完全に停止してしまったらどうなるのですか」
「そうなれば星の淘汰は更に加速し、この宇宙全体に何か恐ろしいことが起こるかもしれない」
アロンは長老の言葉を聞いて驚いた。
「長老、天野雄介にこの宇宙を救うことはできるのですか」
「その可能性はある。今後の彼の精進しだいだ。彼に更に他の星を助けることで彼の魂を向上させるのだ」
「分かりました。彼の魂を更に向上させて参ります」
雄介は太陽系に帰って来た。途中、海王星や天王星、土星や木星、それに火星の様子を見て、それから地球に向かった。地球が近くに見えてきた。
「地球は、やっぱり綺麗な星だな。地球が宇宙一綺麗な星だと言うけど本当だ」
雄介は、無数の光り輝く星々の中に浮かぶ、透き通る程に青い地球を見ながらそう思った。雄介はそれから世界中をシップに乗って一周してみた。すると世界中の人々は雄介の乗ったシップを見つけると、雄介に手を振り、歓声を上げて喜んだ。世界中のどの街に行っても、とても平和で全ての人が愛に包まれていた。雄介は、愛に満たされた地球を見ながら改めて思った。
「この宇宙は素晴らしい。凄く広くて、凄く大きなエネルギーを持って動いている。この大きな宇宙の中で、一人の人間はとても小さな存在だが、一人ひとりの人間がつながり、そして一人ひとりの愛の力で人類はでき上がっている。人は自分を愛し自分の可能性を信じて、自分と同じように人を愛し人を信じていかなければならない。そうしないと人類の平和は保てない。
僕はこんなに小さな存在だが、この地球と宇宙全体の更なる愛と平和の為に全力を尽くす。そしてその愛と平和を永遠に続けていくことが僕のこれからの夢なんだ。僕は、更に自分の魂を向上させる為に一生懸命に頑張るぞ。
そうだ、先ずは僕の心の中を愛と感謝と喜びで満たし、全力で家族や身近な人の全てを愛し受け入れ感謝していこう。そして感謝を『ありがとう』の言葉で伝えていこう。心からの『ありがとう』を先ずは身近な人に伝えて、身近な人の心を満たしたいくことが、僕の夢を確実に現実のものにしていく第一の条件なんだ」
雄介は、限りなく青く澄み切った地球を見ながらそう心に誓った。
地球は、平和で地球上の全ての人々の愛に包まれていた。地球上の全ての人の心も幸福と愛で満たされ、全ての人々は今の幸せは雄介のお蔭だと心から雄介に感謝していた。
雄介も全ての人々も、この平和と幸福が永遠に続くものだと思い、ひと時の幸福感に浸っていたのだった。
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