10,臨時総会(1)
数日後、アロンから雄介に連絡が入った。
「雄介、ゆっくり休めたかい」
「ありがとうアロン。もう地球の人々も落ち着いたよ」
「ところで雄介。臨時にギャラクシーユニオンの総会を開こうと思うんだ。地球がこの度滅亡の危機を脱したお祝いと、ゼミア星の連合入会の件でモウザリヤ総長に挨拶をしてもらう必要があるからね」
「そうだね。その件があったね。了解しました。それで会場と日時は決まっているのかい」
「場所は雄介がプレゼンしたモナム星だ」
「そうなんだ、了解。モナム星なら地球やゼミア星から近いからいいね。それにプッペ議長に会って今回のお礼も言いたいから良かったよ」
「そうだね、プッペ議長も喜ぶよ。日時は2か月後だ。シップをそちらに向かわせるよ。それからシップを雄介にプレゼントするから、今後シップを自由に使ってくれ」
「シップを僕にプレゼントしてくれるのかい。嬉しいよ、アロン」
「シップは雄介のとても優秀なパートナーになると思うから大事に使ってくれ。それでシップでモウザリヤ総長を迎えに行って、一緒にモナム星に行ってくれ。日時と場所を雄介からモウザリヤ総長に連絡しておいてくれないか。もう雄介のパソコンでモウザリヤ総長に連絡できるように回線を繋いでいるし、自動翻訳も掛けているから直接会話ができるよ」
「そうなんだ、分かったよ。連絡しておくよ。もうゼミア星に行っても大丈夫だね」
「大丈夫だ。今はウイルスも完全に除去できているし、全ての患者が快復している」
雄介は、モウザリヤ総長に連絡を入れた。雄介がパソコンを開きモウザリヤ総長に呼び掛けた。
「モウザリヤ総長のパソコンですか。私は、ギャラクシーユニオンの天野です。総長はいらっしゃいますか」雄介が呼び掛けると、雄介の目の前のモニターに男性の顔が現れた。
「あなたは、あなたがモウザリヤ総長ですか。私は天野です。私が見えますか」雄介は、モニターに映ったモウザリヤ総長の顔を見て一瞬びっくりした。その男性は、雄介の父親にそっくりだったのだ。
「あなたが天野さんですか。私がモウザリヤです。私のパソコンにアクセスできるようになったのですね。嬉しいです。天野さんには色々とお世話になりまして、本当にありがとうございました。心からお礼申し上げます」総長は、そう言って丁寧に頭を下げた。
「こちらこそ総長には色々とご尽力頂きまして、ありがとうございました。ゼミア星の皆さんはどうですか落ち着かれましたか」
「ありがとうございます。今はもう全ての患者が快復してウイルスも完全に除去できています」
「そうですか、それは良かったです。ところでモウザリヤ総長、ゼミア星をこの度お救いしたのはギャラクシーユニオンと言う連合がお助けしたのですが、以前も申しましたように、ギャラクシーユニオンは連合に加入している星でないと助けてはいけない規則になっております。
今回は特例でゼミア星をお助けした形になっております。そこで早急にゼミア星が正式に連合に加入するにあたり、連合総会に総長がご出席頂いて、その場でご挨拶して頂く必要があります」
「分かりました、天野さんが言われるように致します」モウザリヤ総長は優しい笑顔で答えた。
「ギャラクシーユニオン総会は、2ヶ月後に大マゼラン雲の中にあるモナム星と言う星で開催されます。ゼミア星からの距離は15万光年程です。私と一緒に宇宙船で参りましょう。3日程で到着する予定です」雄介がそう言うとモウザリヤ総長は驚いた。
「15万光年を3日で行けるんですか。驚きです」
「そうですか、今の宇宙技術では当たり前になっています」雄介は、以前アロンから聞いて驚いたことが言えて少し優越感に浸った。
「総長、本来ですとその総会で連合に加入する為のプレゼンテーションをやらないといけないのですが、今回は既にゼミア星の加入に関して承認を得ておりますので、プレゼンテーションはやらなくて大丈夫です。モウザリヤ総長は、総会に出席してご挨拶していただけましたら正式に承認されます。
総長がゼミア星を離れるのは大変だと思いますが、今回は総長お一人でご出席下さい。ゼミア星に帰って来るまでに8日程は掛かると思いますので、準備をお願い致します。では出発の日が決まりましたら、またご連絡いたします」
「分かりました。では、それまでに準備をしておきますので宜しくお願い致します。出発の日を楽しみに待っております」
それから数日経ってシップが地球に到着し、雄介がモウザリヤ総長を迎えにゼミア星に出発した。ゼミア星にはシップで一日程で到着した。ゼミア星に着くとモウザリヤ総長が、官邸の屋上で待っていた。
屋上には、数人の人々が居た。官僚やSPのような人も見えたが、モウザリヤ総長の家族も居るように思えた。皆が雄介の宇宙船シップに向かって手を振っている。雄介もシップの窓から手を振り頭を下げた。
シップが、官邸の屋上に着陸しハッチを開けステップを下ろすと、モウザリヤ総長がシップに入って来た。雄介は、翻訳機を総長に渡し耳に付けるようにジェスチャーで伝えた。総長が翻訳機を耳に付けたので雄介が挨拶をした。
「モウザリヤ総長、お会いできて嬉しいです」
「天野さん、ありがとうございます。こうしてあなたに直接お会いしてお礼を言えることを嬉しく思います。ゼミア星の全ての者を代表致しましてお礼申し上げます。ゼミア星を助けて頂きまして、本当にありがとうございました」総長はそう言って雄介の手を握り深々と頭を下げた。
「総長、私達は当たり前のことをしたまでです。今後も互いに助け合い協力していきましょう。では早速出発しましょう」雄介はそう言って、総長と一緒に見送りに来ている人達にシップの窓から手を振った。
「総長、あの方はご家族ですか」雄介は、さっきまで総長と一緒にいた女性と、15歳位の女の子を見て言った。
「はい、私の妻と娘です」総長は、その二人に手を振っている。
「ご家族は今回、総長がモナム星に行くのを心配されているでしょうね」
「そうですね。初めは心配しているようでしたが、でも宇宙人に会えると言って、今日が来るのを楽しみにしていたようです」総長はそう言って雄介を笑顔で見た。
「宇宙人に?」雄介は、どこかに宇宙人が居るのかと思った。
「天野さん。あなたのことですよ」総長は、雄介が不思議そうな顔をしているので、雄介にそう言った。
「そうですね。ゼミア星の人々からすると私は宇宙人ですね」雄介は笑った。
二人を乗せたシップがゆっくりと上昇を始めた。総長の奥さんと娘さんが一生懸命手を振っている。総長も二人に向けてずっと手を振っている。やがて見送る人達も見えなくなりシップは大気圏外に出た。宇宙から見るゼミア星は、青く輝き本当に地球そっくりだった。
「なんて綺麗なんだ。宇宙から見るゼミア星は本当に綺麗ですね。このように綺麗な星を滅ぼしてはいけませんね」総長が青く透き通ったゼミア星をしみじみと見ている。
「総長、本当に間に合って良かったです。あのままギャラクシーユニオンの助けが得られなければ、ゼミア星は今頃どうなっていたか分かりませんね」
「そうですね。しかし今回のウイルスで何十億の人が亡くなってしまいました。これは本当に残念でしかありません。でもこれも私達ゼミア星の人間の今までの心掛けや行いが招いた結果なのですね。そこをこれからは改めて、ゼミア星を平和で愛に満ち溢れた星にしていきます」総長は決意を新たにした。
二人はモナム星に向かう道中で色々な話をした。それぞれの星の歴史や最近の出来事を話すと、二つの星は本当によく似ていることが分った。雄介は地球も滅ぶ運命にありギャラクシーユニオンに加入することで助けられて、現在が有るのだと話した。
「総長、私はゼミア星にウイルスを除去するガスを散布しに行った時に気付きました。地球とゼミア星は、この宇宙のなかでバランスを保っているのだと。ゼミア星がもし滅んでいたら、地球が回る太陽も爆発して地球も滅んでいたでしょう。
今回ゼミア星を助けに来ることができて、地球も滅亡することが免れた。これは偶然ではなく、この宇宙の中で二つの星がバランスを保って、必然的に起きたことなのです」そう雄介は、総長に二つの星の運命的な繋がりについて話した。
「そうなんですね。この宇宙は凄い法則を持って動いているのですね」
「総長、ですから地球とゼミア星は今後、互いに協力して助け合っていかなければなりません。どちらかの星に問題が発生すると、バランスしてもう一方の星に必ず問題が発生すると思います。今後は密に連絡を取り合って、それぞれの星の平和を維持していきましょう」
「そうですね、もう二度と星が滅んでしまうようなことに直面したくありません。天野さん今後とも宜しくお願い致します」総長もそう言って雄介に頭を下げた。
「総長、今回はこの宇宙の中の二つの星がバランスを保っていることが良く分かったのですが、宇宙法則十カ条の第3条に『全てはバランスを保っている』とあります。これは基本的に家庭内と家庭の外のバランスを言った法則なのですが、この法則は宇宙規模にも共通した法則だと分かりました。
しかしこの宇宙のどの星でも家庭が基本です。家庭内の愛情や協力が無くなると、それが家庭の外にも波及し、やがて星全体に広がって一つの星自体を滅ぼしかねないのです。基本は家庭の中に有るのだと、もう一度地球やゼミア星の人々に伝えていきましょう」
「天野さん、分かりました。物事の始まりは家庭に有るのですね。家庭の中で家族が仲良く助け合い愛情を持って生活していれば、それがやがて星全体に愛が広がるんですね。そしてその星全体が平和の星になっていくのですね。
天野さん、私は必ずゼミア星を平和で愛に満ち溢れた星にして、今後それを持続させていきます」総長は、この宇宙の法則が理解できたようで感動していた。
雄介もこの広い宇宙の中で、二つの星の人々の心が繋がり、互いに平和で愛に満ち溢れた、幸せの星になっていけることに感動していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます