9,太陽(2)
そして1カ月後、アロンから雄介に連絡が入った。
「雄介、地球の人々の魂レベルは上がったかい。もう時間がない、もし今回の計画が失敗しても次の対策を取るのも難しい状態だ。必ず今回の計画を成功させなければならない」
「アロン分かっている。でももう少し時間をくれないか。まだ地球人の魂のレベルが上がってないんだ。そう宇宙波動エネルギーからの反応が出るんだ。どうしたらいいんだ」
雄介は度々宇宙波動エネルギーに尋ねて、地球人の魂のレベルを確認していたが、太陽爆発回避の計画が上手く行くと反応が出ていなかったのだ。
「雄介、もう1週間だけ待つ。それ以上は待てないとプッペ議長も言っている。一週間経ったら一か八か計画を実行するよ」
「分かったよアロン、あと1週間頑張ってみるよ」
雄介はそれから1日に何回も、世界中に向けてメッセージを流した。世界中の人々も頑張った。自分の魂が地球を救うのだと人々は魂のレベルを上げる為に頑張った。
「雄介、僕の魂レベルが、いま何なのか調べてくれないか」良太が雄介に頼んだ。
「良太、調べてみるよ」雄介は宇宙波動エネルギーにコンタクトして尋ねた。
『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。良太の魂レベルは今レベル1ですか』すると雄介の左耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。
「良太、君の魂レベルは1だよ。頑張って1に上げたね」
「そうか、まだレベル1なのか」良太はなんだかガッカリしている。
「雄介君、私のレベルも調べてみて」由香里も雄介に頼んだ。
『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。由香里の魂レベルは今レベル1ですか』すると雄介の右耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。『レベル2ですか』今度は左耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。
「由香里、君の魂レベルは2だよ。よく頑張ったね」
「そうなのね、でも頑張っているつもりでもレベル2なのね」
「二人ともそんなにガッカリするなよ。頑張ってレベルを上げたじゃないか。1つでもレベルが上がればいいんだよ」良太と由香里は雄介の言葉にうなずいた。
「でも雄介、地球が助かるには今の地球人の魂レベルでは、まだダメなんだろ」
「そうよ雄介君、このままだと太陽の異常を整える計画も失敗しそうなんでしょう」良太と由香里が泣きそうな顔をしている。
「なぜダメなんだろう。世界中の全ての人は頑張っているのに、なぜダメなのか分からない。宇宙波動エネルギーに尋ねると、まだダメだと反応が出るのはなぜなんだ。地球は助からないと出るのはなぜだ」雄介も切羽詰まった思いで、泣きそうな顔になっている。
「雄介、君は頑張ったよ。頑張って地球をギャラクシーユニオンに加入させたし、自分の魂レベルも上げてゼミア星も救ったし、今回も必死で世界中の人々に訴えているじゃないか」
「そうよ雄介君、あなたは頑張ったわ。そのことは地球人全ての人が分かっているわ」二人の言葉に雄介は我慢していた涙がこぼれだした。良太と由香里が雄介の肩を抱いた。
「ありがとう、良太、由香里、君達が僕の側に居てくれて本当に嬉しいよ」良太と由香里の瞳にも涙が溢れている。
そして遂にそのときがきた。ギャラクシーユニオンに加盟する星々から超大型宇宙船が異次元空間を移動して太陽の周りに集結を始めた。超大型宇宙船の1隻の大きさは、月の倍程の大きさが有る。その超巨大な宇宙船が次々と太陽の周りに姿を現した。全宇宙から地球を救う為に太陽の周りに集結したのだ。
プッペ議長が20隻の超大型宇宙船を指揮して、太陽の周りを取り囲んだ。その映像が、地球の全てのテレビやインターネットで放映されている。それと同時に、ギャラクシーユニオンに加盟している全ての星にも放映されるのだ。
地球人はもとより、他の星の全ての人々がその映像を見ながら祈った。雄介も良太と由香里の三人で映像を見て祈った。プッペ議長が画面に現れた。
「皆様、プッペです。いま20隻の超大型宇宙船で太陽を取り囲んでいます。只今から太陽に向けて磁場変動エネルギーの放射を行い、太陽の核融合調整と重力調整を行います。エネルギー放射の様子を中継致しますので、今回のミッションが成功するよう皆さんでお祈り下さい。では間もなく始めます」
太陽の映像が映し出された。20隻の超大型宇宙船は、水星の軌道より遥かに内側に入り、ぎりぎりまで太陽に近づいていた。そしてエネルギー放射の時がきた。20隻の超大型宇宙船から一斉に強いエネルギーが太陽に向けて放射され始めた。
エネルギーは物凄い光を放ちながら宇宙船から太陽に向けて放出されている。その映像を見ている全ての人が祈っている。地球を救う為に心を一つにして祈っているのだ。しばらくエネルギー放射が続いた。するとプッペ議長が画面に映った。
「いま太陽の核融合の調整ができたもようです。このままエネルギーを放射して次に重力の調整を行います」
画面には、再び太陽の様子が映し出され、しばらく太陽の映像を全ての人が食い入るように観ていた。すると次の瞬間、太陽を映し出していた画面が急に強い閃光を放ち、目を開けていられない程の光を放った。
「ワー、危ない。逃げろー。太陽が爆発するぞー」プッペ議長の雄叫びにも似た声が聞こえた。
「ワー」全ての人が叫んだ。
そして映像は途絶え画面は真っ暗になった。全ての人が沈黙していた。映像を見ていた地球の人々や、ギャラクシーユニオンに加盟している全ての人が心配した。地球から太陽が直接見えている場所の人々は、濃いサングラスを付けて実際の太陽を見ていた。プッペ議長からの映像が途絶えてから約8分後、地球からも太陽が普段の倍以上の光の強さで急に強く光り出したのが見えた。
「太陽が爆発するぞ!」誰かが叫んだ。
「キャー」人々の悲鳴が響き渡った。全ての人がもう終わりだと思った。そして全ての人が沈黙した。手を合わせ祈る人もいる。家族と抱き合っている人もいる。全ての人が太陽が爆発すると思った。太陽は、強い光を放ったまま地球を照らしている。強い太陽光線で気温が上がり出したのを太陽を見ていた人は感じた。
するとしばらく沈黙が続いていたが、テレビやパソコンの映像が復帰して神妙な面持ちでアロンが画面に現れた。
「地球の皆様、そしてギャラクシーユニオンに加盟している全ての星の皆様、現在プッペ議長に連絡を入れて詳細を確認しておりますが、プッペ議長と連絡が取れません。
今回我々は、地球が回る太陽爆発を回避する為に、太陽に強い磁場変動エネルギーを放射して太陽の核融合と重力調整を試みましたが、残念ながら今回の計画は失敗致しました。このままですと太陽はいつ爆発するか分かりませんし、太陽の放射エネルギーも強くなってしまいました。これでは地球の気温が徐々に上昇し、地球に住むこともできなくなります。直ちに次の対策を考えて・・・」
そこで映像が再び消えた。雄介は顔が青ざめた。身体の震えが止まらなかった。雄介は心を落ち付かせようと頑張った。そして瞑想に入り宇宙波動エネルギーにコンタクトした。
『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。まだ地球は滅亡する運命なのですか』すると雄介の左耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。
「まだダメだ。どうすればいいんだ。太陽が爆発する。地球が無くなる。地球人全てが死んでしまう。何故なんだー」雄介は叫んだ。そして雄介は頭を抱えてしゃがみ込んだ。すると雄介の耳に誰かの声が聞こえた。
『あなたの心の問題です。あなたの心はそれだけ偉大なのです』
「え、誰なんだ。誰かの声が聞こえた。僕の心の問題だって?」雄介は、いま聞こえた言葉に、はっとして気が付いた。そして宇宙波動エネルギーに尋ねた。
『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。私は今まで地球の全ての人に、魂のレベルを上げるよう望んでいました。これが間違いなのですね』すると雄介の左耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。
「そうなんだ。分かった。僕自身が原因なんだ。僕は今まで人々が変わることばかり望んでいた。変わらなければならないのは他人ではないんだ、僕自身なんだ」雄介の魂が震えた。雄介は気が付いた。そして宇宙波動エネルギーに再び尋ねた。
『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。僕が変われば地球は救われますか』すると雄介の左耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。雄介の目に涙が溢れた。
「そうだ、そうだったんだ」雄介は気が付いた。そして雄介は誓った。
「僕は宇宙波動エネルギーに誓います。全ては己にあり、全ては己の心にあることをいま気が付きました。僕はもう人に望むことは決して致しません。変わらなければならないのは他人ではない僕自身なのです。僕はこれから精一杯努力して僕の家族や身近な人の為、地球上の全ての人の為、この全宇宙の人々の為に更に魂を磨いていき、僕の命が続く限り愛と平和の為に生きていくことを誓います」雄介は、ひざまずき手を合わせ、心の底から宇宙波動エネルギーに誓った。
すると今まで、もの凄い光を放っていた太陽が徐々に弱まりだし、普段の太陽の光の強さに戻り始めた。そして今度はプッペ議長が画面に現れた。
「やった。やったぞ。成功だ。磁場変動エネルギーの放射で太陽の光が一旦強くなったが安定した。これでもう安心だ。地球は救われた」
画面はアロンに変わった。
「皆様、失礼致しました。太陽が強く光りだした後プッペ議長にも交信できず、てっきりプッペ議長の宇宙船も太陽の重力に吸い込まれてしまったのだと思いましたが、太陽の調整に成功した模様です」アロンも興奮している。
雄介は、涙が止まらない。雄介と良太、由香里の三人で抱き合って喜んだ。地球人全ての人が家族や友人、そして大切な人と抱き合って喜んだ。映像を見ていたギャラクシーユニオンに加盟している全ての星の人々も大喜びした。しばらくして雄介がプッペ議長を心配して声を掛けた。
「プッペ議長、大丈夫でしたか。怪我など無かったですか」
「大丈夫です。太陽が急に強い光を放ち重力も強く成ったので、もしかすると爆発するのではと思って、急いで太陽から離れようとしたのですが、太陽の強い重力に引き込まれそうになって、なかなか逃げられなかったのです。しかし徐々に重力が弱まって全ての宇宙船が無事に逃れることができました。ご心配頂きましてありがとうございました」
「お礼を言うのはこちらの方です。地球人全てを代表してお礼を申し上げます。本当に今回地球を救う為にご尽力頂きまして、誠にありがとうございました。なんとお礼を申し上げても足りない程です。本当にありがとうございました」雄介と良太、由香里の三人は深々と頭を下げた。映像がアロンに変わった。
「地球の皆さん。おめでとうございます。これで地球滅亡の危機は回避することができました。これも地球の皆さんの魂のレベルが上がり心が一つになって、地球を平和で愛に満ちた星にできた結果だと信じております。これからも地球人が一丸となって、その素晴らしい地球を守っていって下さい」
アロンの言葉に地球人はもとより、ギャラクシーユニオンに加盟する他の星の人々も、一つの星がまとまり平和で愛に満ちた星になることの大切さを実感したのだった。
良太と由香里が雄介に声を掛けた。
「雄介、よく頑張ったな。本当に頑張った。君はほんと良くやったよ」
「雄介君、おめでとう。あなたの頑張りが実を結んだのよ」
「ありがとう、良太、由香里。君達が僕の側に居てくれたから頑張れたよ。君達のお蔭だよ」
「雄介、でもぎりぎりまで宇宙波動エネルギーに尋ねたら地球は滅亡すると反応が出ていたんだろう。それなのになぜ地球は助かったんだい」良太が不思議に思って聞いた。
「僕も、もうダメだと思ったんだ。そのとき誰かの声が聞こえたんだ」
「誰の声が聞こえたの」由香里が不思議に思った。
「それが僕にも誰の声なのか分からいんだ」
「その声は何て言ったんだい」
「それはね『あなたの心の問題です。あなたの心はそれだけ偉大なのです』と聞こえたんだ」
「それで雄介は、あのとき叫んだんだね『宇宙波動エネルギーに誓います』と」
「そうなんだ。今まで僕は間違っていた。地球人の魂レベルが上がっていないから地球は滅亡するんだと思っていたんだ。あの声で僕は気が付いた。原因は僕自身にあるんだと、僕が地球人皆に魂レベルを上げるように、望む気持ちを持っていたのが原因だったんだ」
「雄介、君は凄いよ。あんなぎりぎりで自分の心を変えて地球を救えるんだから」
するとそこへアロンから連絡が入った。
「雄介おめでとう。頑張ったな。君が地球を救ったんだ。よくやった」
「ありがとうアロン。でも僕の力ではないよ。全ての人々の心が地球を救ってくれたんだと思うよ。本当に感謝しかないよ」
「そうだね。そうかもしれないね。雄介、少し休んでくれ」
「ありがとう」
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