9,太陽(1)
雄介とアロン、ソニヤは地球に帰って来た。
地球に帰ってみると、良太と由香里が雄介のプレゼンが成功して、地球がギャラクシーユニオンに加入できたことを伝えてから、地球の人々は安心仕切っている様子だった。
その後、アロンとソニヤはアンドロメダ星に帰り、モナム星のプッペ議長や、他の星とチームを作り地球が回る太陽の異常活動の原因を調査し対策を検討した。雄介と良太、由香里も地球人代表としてチームに参加した。
調査の結果、太陽異常活動の原因は、太陽の重力異常と核融合反応の異常が同時に二つ起きていることが分かった。しかし地球の100倍以上もある太陽の、しかも二つの異常を正常に戻すことは容易なことではなかった。
雄介は、地球からアンドロメダ星にいるアロンに連絡を取った。
「アロン聞こえますか。太陽爆発回避の計画は上手くいっていますか」
「ああ雄介、色々と調査した結果、今回の太陽の異常活動は、二つの原因が重なったことによるものだ。そこで太陽の異常活動を鎮める計画は、プッペ議長が率いるギャラクシーユニオンの超大型宇宙船20隻で、太陽を取り囲むように太陽に近づき、太陽の周りから強力な磁場変動エネルギーを放射して、太陽の重力異常と核融合反応異常を二つ同時に正常にしていく計画だ。
計算上では問題ないけど、もし思ったように異常活動が収まらなかったとしたら、今なら爆発まで1年はある。ダメなら次の方法を考えよう」
「アロン、頼むよ。必ず成功させてくれよ」雄介は、祈るような気持ちで言った。
「問題なのは、太陽はかなり大きいから超大型宇宙船が20隻は必要なんだけど、現在ギャラクシーユニオンには18隻しか無くて後の2隻は製造中なこと、宇宙船から放射する磁場変動エネルギーで、太陽の重力異常と核融合異常が同時に正常にできるのか、やってみないと分からないことなんだ」
「アロン。本当に大丈夫なの」雄介はアロンの話に不安を感じてしまった。
「今プッペ議長が数隻の宇宙船で、磁場変動エネルギーが太陽に有効かどうか、別の寿命を迎えた恒星で実験してみるそうだから、プッペ議長に様子を聞いてみるよ。様子が分ったら連絡するから雄介しばらく待っていてくれ」
「分かったよ、アロン。プッペ議長にも宜しく伝えておいてくれないか」
「了解、ではまた」アロンは通信を切った。
「本当に大丈夫なのかな、雄介どう思う」そばで聞いていた良太も不安そうだ。
「そうだね、なんだか心配だよな」雄介も不安でたまらなかった。
しばらくしてアロンから雄介に連絡が入った。
「雄介、アロンです。聞こえますか」
「アロン聞こえるよ。プッペ議長は何と言っていましたか」
「プッペ議長がこれから、まだ新しい恒星からエネルギーを超大型宇宙船に吸収し、そのエネルギーを磁場変動エネルギーに変換して、寿命を迎えた恒星にエネルギーを放射して、恒星が上手くよみがえるか実験する様子を見せてくれるそうだ。じゃあ映像を映すよ」
アロンがそう言うとパソコンの画面に、まだ新しく強い光を放っている大きな恒星が映し出された。その恒星の周りに10隻の大型宇宙船が集結し、恒星のエネルギーを宇宙船に吸い込んでいる様子が分かった。
「アロン、物凄いね。恒星の強いエネルギーを超大型の宇宙船が吸い込む様子がよく分かるよ」
10隻の大型宇宙船は恒星にぎりぎりまで近づいて、恒星のエネルギーを、まるで恒星の全てを吸い込むかのように吸収しているのが分かった。
「恒星のエネルギーは凄いよ。まだ新しい恒星はエネルギーが無尽蔵に有るからね。それに恒星のエネルギーは我々の宇宙船の動力の基にもなっているし、この宇宙全体のエネルギーの基でもあるんだ。そのエネルギーを使って君たちの太陽も正常に復活させるんだ」
そして次に、一つの赤黒く弱々しく光る恒星が映し出された。その恒星は星としての寿命が近づいているように雄介には思えた。
「プッペです。赤黒い恒星の様子が見えていますか。これから更に恒星に近づいて、先ほど吸収した恒星エネルギーを磁場変動エネルギーに変換して放射します。恒星が上手くよみがえるか見ていて下さい」そうプッペ議長が言うと、10隻の超大型宇宙船は恒星を取り囲むように恒星に近づいて行った。そして10隻の宇宙船が一斉に恒星に向けてエネルギーを放射する様子が映し出された。
「よし、この調子だ。更にエネルギーを強く放射するんだ」プッペ議長の大きな声が聞こえた。すると宇宙船から放射されるエネルギーが更に強くなったのが分かった。
「十分気を付けるんだ。もし恒星に異常が有ったら全速力で恒星から離れるんだ。いいな」プッペ議長も緊張している様子だ。すると次の瞬間、恒星の光がもの凄く強くなった。
「あ、危ない。逃げろー」プッペ議長が大声で叫んだ。
10隻の大型宇宙船がエネルギー放射を止めて、全速力で恒星から離れた様子が分かった。すると恒星は、ゆっくりと強い光が収まり掛けたと思った次の瞬間、もの凄い閃光を放ち大爆発を起こした。
「ワー」その光景を見ていた雄介と良太、由香里が同時に叫んだ。
「プッペ議長、聞こえますか。大丈夫ですか」アロンが心配している。
「はい、プッペです。大丈夫です。恒星が急に光を強くしたので、急いで恒星から離れたので心配ありません。しかし今回の実験は失敗しました。磁場変動エネルギーの強さに問題が有ったと思われます。直ぐに帰って計算し直します」
「宜しくお願いします」アロンも心配そうだ。
「プッペ議長。天野です。議長大丈夫なのでしょうか」
「天野様、今回の実験は失敗しましたが、エネルギー放射の大体の強さが分かりました。今回のデーターを基に、地球が回る太陽に合わせた磁場変動エネルギーの強さを、計算し直しますから安心して下さい」画面にはそう言って、親指を立ててウインクしているプッペ議長の顔が映った。
「宜しくお願い致します」しかし雄介は、不安で仕方なかった。
間もなくプッペ議長は、モナム星に帰り実験のデーターを基に、太陽に合わせた磁場変動エネルギーの計算に入った。そして何回も大きなコンピュータを使ってシミュレーションも行った。長い日数を掛けてやっと計算の結果ができたと、プッペ議長からアロンと雄介達に連絡が入った。
「プッペ議長。計算の結果はどのような感じですか。上手くいきそうですか」アロンが聞いた。
「アロン様、計算とシミュレーションの結果、磁場変動エネルギー放射は一度だけです一度のエネルギー放射で、まず太陽の核融合の調整を行い、続けて太陽の重力調整も行います。もし一度のエネルギー放射で両方の調整ができなければ、太陽のバランスが崩れ太陽は大爆発を起こすと、シミュレーションの結果分かりました」
「プッペ議長、天野です。今回の計画の成功率はどの位なのでしょうか」
「70パーセント位だと思います」
「70パーセントですか。分かりました議長宜しくお願い致します」雄介は祈るような気持ちだった。
「それでは、あまり残された時間も有りませんので、超大型宇宙船の準備ができ次第、計画を実行致します。磁場変動エネルギー放射のときは、映像を送りますので皆さんでご覧になって下さい」そう言ってプッペ議長の通信が切れた。
「大丈夫かな。このままで上手くいくのかな」雄介は、不安な気がしてきた。
「後はプッペ議長に任せるしかないね。20隻の宇宙船が一斉にエネルギーを放射しなければならないし、チャンスは一度しかない。もし一度に核融合と重力を調整できなければ太陽は爆発してしまう」
「アロンさん、僕は不安で失神しそうですよ」良太が、気弱なことを言った。
「良太君、君達がそんなに不安でどうする。君達が信じないでどうするんだ。君達は、地球人の代表だろ。プッペ議長がエネルギー放射のときは、その様子を宇宙船から中継すると言っていた。その映像を地球全土に流すんだ。この計画が上手く行って地球が今まで通りに幸せな日々が過ごせることを、地球人皆で祈るんだ」
「分かったよ、アロン。そうだね僕達が不安がっていたらダメだね。よし、腹が決まった。プッペ議長に全てを託すよ。地球人全ての運命を託すよ。エネルギー放射の時期が決まったら、また連絡してくれないかい。それまでに僕達は、地球全土に太陽爆発回避の計画を伝えて、地球人皆で一つになって計画の成功を祈ることにするよ」
「雄介、その調子だ。僕達ギャラクシーユニオンに加盟している星の全てに、今回の計画を伝えて、その瞬間を全ての星の者で祈るよ。ギャラクシーユニオン全ての星の人々が君達の星、地球の為に祈るよ」
「ありがとうアロン。必ずこの計画は成功するね。本当にありがとう」雄介と良太、由香里の胸は感謝でいっぱいになった。
雄介はその日の夜、宇宙波動エネルギーにコンタクトして尋ねた。
『偉大なる宇宙波動エネルギーにお尋ねします。今回の計画で地球が回る太陽の爆発は回避できるのでしょうか』すると雄介の右耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。雄介の顔色が青ざめた。
「今のままならダメなんだ。なぜダメなんだ。プッペ議長がシミュレーションも行って、地球の兄弟星のゼミア星も助けたのになぜダメなんだ」雄介は思った。
「地球人は地球がギャラクシーユニオンに加入できたことで、安心してしまったんだ。気を抜くと落ちるのは早いとアロンが言っていた。安心して魂のレベルが下がったのかも知れない」そして雄介は、ふと思ったことを宇宙波動エネルギーに尋ねた。
『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。地球人の魂レベルが低すぎるから地球は助からないのですか』すると今度は、雄介の左耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。
「そうなんだ、今のままの地球人の魂レベルでは地球は助からないんだ。早急に地球人の魂レベルを上げる対策を取らないといけない」
次の日雄介は、昨夜宇宙波動エネルギーに尋ねたことを、アロンに連絡した。
「そうなんだ。それは大変なことだな。雄介もう太陽爆発まであまり時間が無いから、早急に地球人の魂レベルを上げる対策を取ってくれ」
「アロン、どのようにしたら地球人の魂レベルが上がると思う」
「それは雄介が地球の全ての人に、訴えるしかないんじゃないのかな」
「分かったよアロン、やってみるよ」そして雄介は、良太と由香里にも相談した。
「そうだね雄介の言う通りだね。僕も雄介がプレゼンを成功させて地球をギャラクシーユニオンに加入させたから、もう地球は大丈夫だと安心仕切っているよ」
「雄介君、私も良太君と同じだわ」
「よし分かった。以前僕が地球の人々に伝えたように、今回も人々に伝えるよ。このままなら地球は助からないことをね」
雄介達はそれから、世界中のメディアに連絡して重大な発表が有ることを伝えた。そして雄介からのメッセージが世界中に流されることとなった。
「世界中の皆さん。私は以前アンドロメダ星の友人と地球をギャラクシーユニオンに加入させる為にプレゼンを行った天野雄介です。ただいま地球が回る太陽爆発回避の為に、ギャラクシーユニオンに加入している星々の協力を得て準備を進めているところです。
しかし、今の地球の皆さんの心の状態では、太陽爆発回避は難しいことが判明致しました。もう太陽爆発までにあまり時間がありません、早急に対策を取らなければなりません。
先日私は、我々が存在している銀河系の中にあるゼミア星と言う星の危機を救いに行って来ました。その時に私は魂のレベルについて学びました。人がこの世に生まれて来た目的の一つに、自分の魂のレベルを上げることがあるそうです。それが今の地球人には必要なのです。
魂レベルが生まれたままの状態ではダメなのです。自分の感情をコントロールすることが大切なのです。怒りたいときに心を静め穏やかに過ごし、悲しいときに気分を変えて笑い、嬉しいときに感謝する魂が必要なのです。そして身近にいる人を愛し喜ばすのです。そのことを自分の喜びにするのです。皆さん、もう時間がありません。今から魂レベルを上げる努力を皆で行いましょう」
雄介のメッセージが全国に流れた。良太と由香里も自分の魂のレベルを上げる努力をした。それから雄介は、地球全土に太陽爆発回避の計画と、磁場変動エネルギー放射の瞬間が中継されることも伝えた。
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