8,ウイルス

 それから直ぐにモウザリヤ総長が、雄介が伝えた内容をゼミア星の全土に発表した。

 「ゼミア星の皆さん、モウザリヤです。皆さんもサテラに映し出されたメッセージを見て驚かれたでしょう。しかしギャラクシーユニオンの方が我々の星、ゼミア星を助けに来てくれたのです。もうゼミア星は我々の力で立ち直ることができません。


 いいですか皆さん。ギャラクシーユニオンの技術は私達の想像を絶するほど発展しているのです。その方がおっしゃるように我々が変わらなければ、ゼミア星は滅んでしまうのです。今この星の中で争っている場合ではないのです。互いに助け合い、協力し合って、ゼミア星を愛に満ち溢れた星にしていかなければならないのです。さあ今から始めましょう。自分達の為、そして自分が愛する人々の為、そして自分達の掛け替えの無いゼミア星の為に」


 ゼミア星の人々は、サテラに映し出されたメッセージに驚き、そしてモウザリヤ総長の言葉に賛同し始めた。それから数日が経って、雄介はモウザリヤ総長にテレパシーを送った。

 

 『モウザリヤ総長、聞こえますか。天野です』

 『天野さん、あなたからのテレパシーを待っていました。あなたのお蔭でこのゼミア星は変わりつつあります。この星の者全員が今までの考えを改めて、互いに協力し助け合って平和の星になりつつあります。そうしたら自然とウイルスで亡くなる人が段々と減ってきているのです。本当にありがとうございます。これも天野さん、あなたのお蔭です』


 『そうですか、それは本当に良かった。でも私の力ではありません。これができたのもギャラクシーユニオンの力です。それではこれからギャラクシーユニオンに掛け合って、完全にゼミア星のウイルスを退治して、ゼミア星の人々に健康で幸せな生活を、手に入れてもらえるようにしなければなりません。


 ゼミア星に今蔓延しているウイルスを除去するガスは既に開発済みです。しかし実際にこのガスを使用するにあたって、ギャラクシーユニオンに加入している全ての星の承認を得ないといけません。ゼミア星は現在ギャラクシーユニオンに加入していないので、加入していない星をギャラクシーユニオンの力で助けるには承認が必要なのです。早速承認を得る手続きを進めて参りますので、もうしばらくお持ちください。承認が得られましたらご連絡いたします。それでは失礼いたします』


 雄介は、早速アロンと共にギャラクシーユニオンに加入している各星に連絡をして、承認を得る手続きに入った。承認は意外にも早く得られ、ギャラクシーユニオンに加入している星の全てが、ゼミア星を救うことを承諾した。


 「雄介、これでゼミア星のウイルスを除去できる。早速雄介がシップに乗ってゼミア星に行き、ウイルスを除去するガスを散布してきてくれ」

 「僕が一人で行くのかい。分かったよ、行ってくるよ」雄介は、少し不安でもあったが自分がやるしかないと思った。


 「雄介、ゼミア星に行っても決してシップの外に出てはいけないよ。それに何を見たとしても驚かず、冷静に任務を遂行してくれ。いいね」アロンが今までになく真剣な表情で雄介に話したので、雄介も大変な任務なのだと思った。

 「分かったよ、アロン。無事に任務を遂行してくるよ。ではモウザリヤ総長に連絡したら直ぐに出発します」雄介は少し緊張してきた。


 『モウザリヤ総長ですか、天野です。ギャラクシーユニオンの各星から承認が得られましたので、これから直ぐにウイルス除去のガスを散布に参ります。私が小型の宇宙船に乗ってゼミア星の上空から散布致します。


 このガスは人体には何ら害を与える物ではなく、ウイルスだけに作用し、人体の中にまで侵入しているウイルスも退治してくれます。ガスの散布が終わり全ての人の症状が改善するまで、しばらく時間が掛かるかも知れませんが、ゼミア星の全ての人が健康になるのを楽しみにお待ち下さい。それではこれからガスの散布に参ります』


 『天野さん、ありがとうございます。ゼミア星を代表して天野さんと、そしてギャラクシーユニオンの全ての星の方々に心から感謝致します』

 それから間もなく雄介は、シップにウイルス除去のガスを積み込み出発した。

 

 「シップ、準備はいいか」

 「雄介様、準備完了です」

 「よし、出発だ」そして雄介を乗せたシップはゼミア星に向かった。ゼミア星までほんの一瞬で到着した。ゼミア星に到着した雄介は、ゼミア星の上空からガスの散布を始めた。ゆっくりとゼミア星の上空を飛びながら雄介は、ゼミア星の風景を見て段々と疑問が湧いてきた。


 「何故なんだ。このゼミア星の風景は地球と一緒じゃないか」雄介には分からなかった。ゼミア星の山や川、街や海、地形までもが地球そっくりだった。

 「何故なんだろう。何故こんなにも地球にそっくりなんだ。アロンが言っていた、何を見ても驚くなと言うのはこのことなのか」雄介の頭は混乱してきた。


 「ダメだ。落ち着かなければ。こんなことでは任務が遂行できない。そうだ瞑想をしよう」雄介は、ゆっくりと目をつむり瞑想に入った。『リラークス、リラークス』雄介は、心の中でそう唱え瞑想に入った。そして宇宙波動エネルギーにコンタクトして、いま自分が見ているゼミア星の風景が、何故地球と似ているのか問いかけてみた。


 『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。ゼミア星は何故、こんなにも地球に似ているのですか』雄介の体に何も反応が無い。雄介はふと、頭の中にひらめいたことを尋ねてみた。

 

 『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。ゼミア星は地球の兄弟星なのですか』すると雄介の左の耳の奥で『ポク、ポク』と小さな音がするのが感じられた。波動エネルギーに尋ねたことが正しければ、雄介の身体の左側に反応がでるのだ。


 「やっぱりそうだ。ゼミア星がこんなにも地球にそっくりなのは、地球とゼミア星が兄弟星で、互いにバランスを保っているんだ。そのことをアロンは知っていて、僕にゼミア星を助ける為によこしたんだ」雄介は、疑問が解けたような気がした。


 「地球もこのままだと太陽が大爆発を起こして滅んでしまうかもしれない。ゼミア星も今回ギャラクシーユニオンの助けが無ければ滅んでいた。一つの銀河の中で二つの星が互いに結ばれ、バランスを保っているんだ。なんてこの宇宙は凄いんだ」雄介は、この大きな宇宙の中に張り巡らされたネットワークのようなものを感じた。


 「そうだ、そうなんだ。この宇宙は、宇宙波動エネルギーを中心にして全ての星が繋がっているんだ。そしてそれぞれの星に住む全ての人も繋がっているんだ。だから瞑想をして魂レベルを上げると、人の考えていることが分ったり、過去や未来まで分ったり、テレパシーで相手の意識にまでコンタクトできるんだ。人の潜在意識は全てが繋がっているんだ」雄介は、この宇宙の仕組みを感じて身震いが止まらない。


 「魂レベル6は、潜在意識に入りこめ宇宙波動エネルギーにコンタクトできた状態なんだ。だから時間も距離も関係なくテレパシーで交信できるんだ。全てが分るんだ。宇宙波動エネルギーに全てが記録してある。過去も、現在も、そして未来も、だから全てが分るんだ」雄介は、もう一度宇宙波動エネルギーにコンタクトしてみた。自分が感じたことが正しいのか確かめる為に。

 

 『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。宇宙波動エネルギーは、全ての星や、全ての人々に繋がっているのですか』雄介の左の耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。

 「やっぱりそうなんだ」雄介は、もう一度訪ねた。


 『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。宇宙波動エネルギーは、全ての星や、全ての人々の過去や、現在、未来も全てが分るのですか』やはり左の耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。もう一度雄介は、宇宙波動エネルギーに尋ねた。


 『宇宙波動エネルギーよ、最後にもう一度お尋ねします。全宇宙の星や、その星に住む人々の未来は、努力しだいで良い方に変えるのは可能なのでしょうか』雄介の左の耳の奥で『ポク、ポク』と音がするのが感じられた。雄介の心に熱いものが込み上げてきて、身震いが止まらない。


 「この魂レベル6を使えば、宇宙全体の星々を救うことができる。未来を良い方に変えることができる。そして、その星に住む人々を幸せにすることもできるんだ。なんて凄いことなのか。なんて素晴らしいことなのか。僕はこの魂を使って、地球や宇宙全体の平和と幸せの為に貢献したい。いや、必ずそれをやらなければならない。それが僕に与えられた使命なんだ」雄介は、魂のレベルを上げる素晴らしさを実感した。そしてこのことを全ての人々に伝えていかなければならないと感じた。


 「そうだ、魂レベル5や6は無理でも、レベル4は訓練しだいで誰でも到達できるとソニヤさんが言っていた。そのことを全ての人に伝えなければならない。魂のレベルが4に達するだけでも、健康になれるし、気持ちも落ち着くし、記憶力が増したり、アイディアがひらめいたり、ストレスの解消もできる。きっと人々の幸せにもつながる能力に違いない。


 僕は今回魂のレベルを向上させることを知った。でも魂にレベルが有ることすら知らない人はたくさん居るはずだ。人はこの世に、魂を向上させる為に生まれてきたのだとアロンは言っていた。それを全ての人に使えよう。それが魂のレベルを上げることに成功した者の使命に感じる」雄介は誓った。自分の命が続くかぎり地球と、この宇宙の幸せと平和の為に貢献することを。


 雄介は、宇宙船でゼミア星の隅々にウイルスを除去するガスを散布して回った。ゼミア星の全土に散布するのに2日掛かった。雄介は、ガスの散布が終了した時、ゼミア星のモウザリヤ総長にテレパシーを送った。

 

 『モウザリヤ総長、聞こえますか。天野です』

 『天野さん。聞こえます。ウイルス除去のガスを散布して下さったのですね。世界中の患者が、みるみる回復していると連絡が入っています。本当にありがとうございました。何とお礼を申し上げたら良いのか分かりません』モウザリヤ総長は、感動に震えている。


 『お礼などはいりません。しかし一つだけお願いがあります。それは、これから先もずっとゼミア星の人々が、助け合い、協力し合って、平和で愛に満ち溢れた幸せの星であることを続けて下さい。これから先、永遠にそうあって下さい。そのことをゼミア星の人々に、そしてこの宇宙に誓って下さい。お願い致します』


 『分かりました、天野さん。今回のことはゼミア星の歴史に永遠に刻まれるでしょう。それをこれから先ずっと語り継いで忘れたり致しません。ゼミア星は、これから先永遠に平和で愛に満ち溢れた、幸せの星になることをお誓い申し上げます』モウザリヤ総長の固い決意が雄介に感じられた。


 『天野さん。一つだけお願いがあります。是非、天野さんに直接お会いしてお礼を言いたいのですが、それは可能でしょうか』モウザリヤ総長が、雄介のテレパシーが切れる前にそう話した。


 『直接会うことはまだできません。しかし近い将来私達は直接お会いするでしょう。そんな気がしています。ではまたお会いできる日を楽しみに、お互い健康には気を付けましょう。さようなら』雄介はそう言ってテレパシーを終了した。雄介には何故だか分からなかったが、モウザリヤ総長に近いうちに会うことになると予感がしていた。


 雄介を乗せたシップが、サテラに帰ってきた。するとアロンとソニヤが出迎えた。

 「雄介お疲れ様。任務は無事に終了したみたいだね。でもどうだったゼミア星は、驚いたかい」アロンがにやけて言った。


 「アロン、君は知っていたんだね。ゼミア星があんなに地球そっくりな星だと言うことを」

 「ごめん、雄介を驚かせようと思ったんだ」

 「笑いごとじゃないよ。本当にびっくりしたんだから。でも行って良かったよ、ゼミア星に行って全てが分ったよ」雄介も笑顔になった。


 「雄介さん。あなたは、ゼミア星に行くことでこの宇宙の素晴らしいシステムに気が付いたのね」

 「アロン、ソニヤさん。僕をここに連れて来てくれて本当にありがとう。ここに来ることで得られたことは、僕の人生で最高の宝物になったよ」雄介は心から感謝していた。


 「雄介さん。ここであなたが得た能力は、あなただけのものではないのよ。この全宇宙の宝になるものなの。あなたは、この宇宙波動エネルギーに選ばれし者なのだから」ソニヤが、雄介を真剣な目で見て言った。


 「そうだよ、雄介。君がここに来て得られた能力は、この宇宙全体を見てもそんなに得られる能力ではないんだ。だからこれから先君は、君の能力を地球と、この宇宙全体の平和の為に使っていかなければならない。それが君に与えられた使命だよ」


 雄介もアロンとソニヤの言葉に自分に与えられた使命のようなものを感じていた。雄介は自分が得た能力を地球や宇宙全体の平和の為に使っていかなければと決心していた。そして雄介はモウザリヤ総長に自分が言った言葉を思い出しアロンに尋ねた。


 「アロン、モウザリヤ総長が僕に直接会いたいと言っていたんだけど、今は会えないけど近い将来会うことになりますと言ったんだ。なんだかそんな気がしてならないんだけど、なぜなんだろう」


 「それは雄介、ゼミア星を今回ギャラクシーユニオンの力で助けたけど、ゼミア星はまだギャラクシーユニオンに加入していない。今回は時間がなかったから緊急の処置を取ったけど、モウザリヤ総長は近いうちにギャラクシーユニオン総会に出席して、そこで正式にギャラクシーユニオンの加入を認めてもらわなければならないんだ。だからその時に君はモウザリヤ総長に会うんじゃないの」


 「今回地球がギャラクシーユニオンに加入したときのように、ゼミア星も総会に出席して、加入を認めてもらうんだね。そのときモウザリヤ総長に会えるかも知れないね」雄介は、総会でモウザリヤ総長に会えるのを楽しみに感じた。


 「雄介、もうこれでゼミア星は大丈夫だ。後はサテラのスタッフに任せて地球に帰ろう。そして今度は地球を救うんだ」

 「そうだねアロン。地球を救わないとダメだね。でも地球の兄弟星のゼミア星を救うことができたから、地球も上手く救うことができるね」


 「雄介さん、気を抜いてはダメですよ。しっかり気合を入れていきましょう」

 「分かりましたソニヤさん。何事も気を抜いてはダメですね。しっかり気合を入れて頑張ります」

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