6,ゼミア星

 次の日、雄介達三人は地球に帰る準備も整い、ホテルアウタースペースの部屋でくつろいでいた。するとそこへアロンがやって来た。

 「皆さん、地球に帰る準備はできましたか」

 「はい、アロンさん。もっとモナム星でゆっくりしたいのですが、地球に帰って色々やることもありますから、帰らないといけませんね」由香里が残念そうに、部屋の天井に見えるエメラルド色のモナム星を見ている。


 「またゆっくり遊びに来たら良いですよ。ところで皆さんに一つご相談があります」神妙な顔つきのアロンに三人は注目した。

 「何だいアロン、相談って」

 

 「実を言うとさっきアンドロメダ政府から連絡があって、早急に解決しなければならない問題が、君たちの銀河系の中に有る惑星で発生しているみたいなんだ。詳しいことはまだ分かっていないんだけど、その惑星は君達の地球とあまり歴史が変わらない星なんだ。その星の名前はゼミア星と言うんだけど、まだギャラクシーユニオンにも加入していない。ゼミア星は最近大変なことが起きているみたいで、このままほっておくとあと数ヶ月で滅亡してしまいそうなんだ」


 「それは大変じゃないか」雄介が驚いた。

 「そこで相談と言うのは、そのゼミア星の状態を確かめる為に、今から僕とソニヤが行くんだけど雄介も一緒に来て欲しいんだ。地球には良太君と由香里さん二人で帰ってもらいたい」

 「え、僕も一緒に行くの」雄介がアロンの言葉に驚いた。

 

 「雄介には新しく加盟したギャラクシーユニオンの新会員代表として、是非とも協力してもらいたいんだ」

 「でもアロンさん、僕と由香里の二人で地球に帰って何をすればいいんですか」良太が聞いた。

 

 「君たちは地球の皆さんに、地球がギャラクシーユニオンに加入できた報告と、今後地球が回る太陽が爆発しないように、ギャラクシーユニオンが調査して対策を取っていくから、その進行状況を随時報告する役目をしてもらいたいんだ」


 「そんな大役が務まるかな」

 「雄介もそのうちに地球に帰れると思うから心配いらないよ。地球滅亡までにはまだ時間があるけど、ゼミア星にはもう時間がないらしいんだ」アロンの言葉に三人は、協力するしかないと感じた。

 「分かったよアロン。君の言うとおりにするよ」雄介の言葉に良太、由香里もうなずいた。

 

 それから直ぐに良太と由香里はシップに乗り地球に帰って行った。シップは二人を地球に送り届けると無人でゼミア星を目指した。地球に帰った良太と由香里は、地球がギャラクシーユニオンに無事に加入することができたことを伝えた。すると地球の人々は歓喜に沸いた。そして今後ギャラクシーユニオンの力によって太陽の調査と、太陽爆発回避の計画進行状況を二人が随時報告して行くことを伝えた。


 アロンとソニヤ、雄介の三人は、良太と由香里が出発すると同時に別の宇宙船でゼミア星を目指した。宇宙船の中でアロンが雄介にゼミア星の説明と、ある提案をした。


 「雄介、詳しいことはまたゼミア星に着いてから話すけど、簡単に説明しておくからよく聞いてくれ。ゼミア星は地球から銀河系の中心を通って、ちょうど真反対にある星で、距離は地球から5万光年程離れている星だ。いまゼミア星の分かっている情報は、どうもゼミア星に直接行くことは危険みたいなんだ。それにただゼミア星の人に我々ギャラクシーユニオンが助けると、メッセージを送っても理解できないだろう。


 そこで提案なんだけど、雄介の魂のレベルを上げて、テレパシーでゼミア星の総長に交信すると安全だし、テレパシーだと相手の潜在意識にインプットできるから効果的だ。まずは雄介の魂のレベルを上げることを頑張ってみてくれないか」


 「僕の魂のレベルを上げて、テレパシーで交信しろだって」雄介は、アロンの言っている意味が理解できなかった。

 「雄介さん、魂のレベルについて私が説明するわね」ソニヤはそう言って説明を始めた。


 「魂のレベルには、レベル0からレベル6まであるの。魂レベル0は、その人が生まれながらに持ち合わせている感情のままの魂で、怒りたいときに怒り、悲しいときに泣き、嬉しいときに笑い、感情のままに生きている魂なのよ。


 魂レベル1は、自分の感情をコントロールできる魂で、怒りたいときに心を静め穏やかに過ごし、悲しいときに気分を変えて笑い、嬉しいときに感謝する魂なの。人が生きていく目的の一つは、生きている間にその人の魂のレベルを上げることなのよ。この世に生きている間でないと魂を向上させることはできないの。この世は魂のレベルを上げる為の修行の場とも言えるのよ。


 この世は全てが自由なの。何でもできるわ。自分の生まれ持った欲望のまま生きるのも自由よ。しかしレベル0の魂のままではなにも成長しないし運命も変化しない。人はレベル1以上の魂にする為に生きていかなければならないの。


 魂レベルが6に達したら他人とテレパシーで交信もできるわ。雄介さんは、そのテレパシーを使ってゼミア星の総長と交信する為に、レベル6の魂を目指さなければならないのよ。でもいきなり魂レベル6は無理だから、一つずつクリアしていってね。まずはレベル1を習得する為に頑張ってみましょう。魂レベル1が習得できたらレベル2について説明しますね」


 なんだか大変そうなんだけど、なぜ僕なんだろう。アロンやソニヤさんではダメなんだろうかと雄介は思った。

 「ところでアロン、僕の魂レベルは今は0なのかな」

 「雄介はどう思うんだい」


 「僕はそうだな。アロンが教えてくれた宇宙法則十カ条を勉強してから、自分の感情が自分の人生に、かなり影響を与えることが分ったんだ。それから感情をコントロールするように努力してきたから、魂レベル1には達していると思うけど」


 「そうだね、雄介は高校時代から比べるとかなり穏やかになったし、いつも前向きな考え方になってきているから、魂レベル1はクリアできているね」

 「そうかな。アロンにそう言ってもらえると嬉しいよ」


 「雄介さん凄いわね。すでに魂レベル1をクリアできているのね。では魂レベル2について説明しますね」ソニヤか魂レベル2について説明を始めた。


 「魂レベル2は、一番身近に居る人を喜ばすことのできる魂なの。一番身近に居る人を、常に幸せと思わせることが大切なのよ。雄介さんが幸せな人生を歩めるかどうか、あなたの人生のカギを握っているのも、雄介さんの一番身近にいる人なのよ」


 「そうなんですね。でも僕の一番身近な人ってやっぱり家族なのかな。僕の家族は僕と一緒に居て幸せを感じているのかな」

 「雄介、君が今回地球をギャラクシーユニオンに加盟させることができたと言うことは、家族も君のことを認めている証拠だよ。君のお母さんからの手紙にもそう書いてあったし、自信を持って家族を幸せにできていると思っていいんじゃないのかな。ソニヤはどう思う」


 「そうね、その通りだと思うわ。なら魂レベル2もクリアしているようね。魂レベル3を説明するわね」そしてソニヤが説明を始めた。


 「魂レベル3は、人の幸せが自分の幸せと思える魂なの。人が幸せになる為に動き、人が幸せになることが自分の幸せである魂なのよ」

 「魂レベル3は、なかなか難しい感じですね。人を幸せにする為に動くとは、どのように動けばいいのかな」


 「雄介は、幸せとはなんだと思う」

 「以前、なにかの本で読んだことがあるけど、幸せとは、健康で、欲しい時に欲しいものが買えるだけの経済力があって、身近な人からの愛情にも恵まれることと書いてあったのを覚えているよ」

 

 「そうだね、その三つのうちのどれが欠けても幸せとは言えないだろね」

 「人がその三つを得る為に、僕はどのようにすればいいんだろう」雄介が腕組みをしながら考えている。

 

 「そんなの簡単だよ雄介。まず自分が幸せになって、その方法を人に教えてあげたらいいんだよ。ところで雄介はいま幸せなのかい」

 「僕は地球をギャラクシーユニオンに加盟させることができて、地球滅亡から救えそうだから今とっても幸せだよ」

 

 「どうやって今の幸せを手に入れたんだい」

 「それは、アロンが教えてくれた宇宙法則十カ条を頭に入れて、それを実行していったんだ。そしたら今の幸せが手に入った気がするよ」


 「だったら雄介がゼミア星の人々に宇宙法則十カ条を伝えて、ゼミア星の人々が大変な状態から、幸せの方向に変わったら最高じゃないのか」

 「そうだね。いま大変な状態の一つの星の運命を、幸せの方向に救うことができたら更に幸せだよ」


 「雄介、君はもう魂レベル3もクリアしているよ。地球の人々を幸せに導くことを自分の幸せに感じ、ゼミア星を幸せの星に導くことも自分の幸せに感じ、それを実行に移そうとしている。後は行動あるのみだ」

 「そうなんだ、ありがとうアロン。僕は地球の為、そしてゼミア星のために頑張るよ」


 「雄介さん凄いわ、魂レベル3もクリアしているわね。じゃあ次は魂レベル4だけど、魂レベルを4に上げる為には少し訓練が必要なの。次はゼミア星に着いてから説明するわね」


 雄介は、魂レベルを上げることが楽しみに思えてきた。

 「雄介、君に一つ言っていなかったけど、これから行くゼミア星には地球と同じように、一つの衛星が周りを回っているんだ。その衛星は、実は人工の衛星で宇宙ステーションなんだ。そこにいま僕達は向かっているんだよ」


 三人を乗せた宇宙船は、モナム星を出発して三日でゼミア星に到着した。ゼミア星は青く輝く星で、一見地球によく似た星だった。

 「雄介、ゼミア星に到着致したよ」

 「アロン、ゼミア星は地球によく似た星だね。地球に帰って来たのかと思ったよ」


 宇宙船はゼミア星の衛星に近づいて行った。その衛星も地球の月によく似ていると雄介は感じた。しかしその衛星が人口の物で宇宙ステーションだとは信じられなかった。大きさも地球の月とほぼ同じで、表面も月と同じようにクレーターが沢山有った。宇宙船がゼミア星の衛星に近づくとハッチが開き中に入って行った。中に入ると雄介は衛星の中の風景に驚愕した。


 「なんだいこの衛星の中は、衛星の中が空洞になっているじゃないか」

 衛星の中は空洞になっていて、内側に多くの建物が建てられていた。中は明るく、上を見上げると空ではなく、遥か遠くに街や湖や山が見えた。雄介は初めて見る風景に感覚がおかしくなる感じがした。


 「この風景は頭がおかしくなりそうだ。上を見上げると、空ではなく街や森が逆さまに見えるなんて、この風景になれるのは時間が掛かりそうだ」

 アロンは、宇宙船にアンドロメダステーションに行くよう指示した。アンドロメダステーションに着くと、ステーションのスタッフが三人を出迎えた。


 「アロン様お待ちしておりました。アロン様、ゼミア星はとても危険な状態です。宜しくお願い致します」神妙な顔つきでスタッフは話した。

 「分かりました。私達で何とかゼミア星の人々を救えるように頑張ってみます」アロンもスタッフの神妙な様子を見て、ゼミア星が大変な状態なのだと察した。

 

 「雄介早速なんだけど、いま分かっている範囲で君に説明するよ。ゼミア星は、君の住む地球とほぼ同じ頃に誕生した星で、歴史もほぼ地球と同じようなものだ。でもまだギャラクシーユニオンのことも知らないから、この衛星も人口の衛星だと気が付いていない。


 ゼミア星の人々は、この衛星を『サテラ』と呼んで親しんでいる。このサテラも地球の月のように一定の周期でゼミア星の周りを回り、同じ面をゼミア星に向けていて、常にゼミア星を監視しているんだ。ゼミア星の大きさは地球より少し大きいけどほぼ同じ位だ。


 ゼミア星人の人口は、以前は地球より多かったけど、今は三割程減っているようだ。ゼミア星には最近、悪い病気が流行っていて、その病気が星全体に蔓延している。それで人口が今も急速に減っている。このままだとゼミア星は、あと数ヶ月の間に滅んでしまうかも知れない」


 「何故そんなことになったんだい」

 「それは、以前の地球と同じだよ。一つの星の中で紛争や犯罪が絶えなかったり、私利私欲ばかりで愛が無く、お互いを助け合えなかったりで、そんな星は滅んでいく運命だね。でもこのような危機的な状態のときに自分達の愚かな行動に気付き、一つの星の中で全ての人が協力して助け合い、平和で愛に満ち溢れた星になることが必要なんだ。それをこのゼミア星の人々に伝えて、この星を救うことが必要なんだ。それが今なんだよ。今がチャンスなんだ」


 雄介は思った。以前の地球も紛争や犯罪が多くて、あのままだとギャラクシーユニオンにも加盟できなかった。アロンやソニヤさんは、この宇宙の中で危機に直面している星を救って回っているんだ。人を救うことがこの二人の生き甲斐なんだ。雄介は、アロンやソニヤがしていることが、本当に素晴らしいことだと感心した。

 

 「雄介さん、人はね人から必要とされないと生きてはいけないのよ。私達のアンドロメダ星は、危機に直面している星を助けることで、その星の人から必要とされ、そしてこの宇宙からも必要とされているからこそ存続できているのよ。人も星も同じことなのよ。これは宇宙波動エネルギーからのメッセージよ」ソニヤが優しい笑顔で雄介に言った。

 

 「宇宙波動エネルギーからの」

 「雄介さん。あなたはその宇宙波動エネルギーからの選ばれし人なのよ。頑張ってね」

 「ソニヤさん、ありがとうございます。でもソニヤさんもアロンも本当に素晴らしいですね。ぜひ僕にもこのゼミア星を救う手助けをさせて下さい」雄介は、自分もなにか手助けがしたいと思った。


 「雄介、安心してくれ。このゼミア星を救えるのは君しか居ないんだよ」アロンも優しい笑顔で雄介に言った。

 「僕しか居ない。僕がこの星を救うの」

 「そうさ、だから君をここへ連れて来たんだ。頑張ってくれよ」アロンとソニヤが優しい笑顔で雄介の手を握った。

 「そうなの」雄介も少し引きつった笑顔で二人の手を握り返した。

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