5,プレゼンテーション

 雄介とアロンは、ギャラクシーユニオン総会会場の中のカップに乗っていた。良太と由香里も別のカップに乗って雄介達の隣に浮かんでいる。各星の代表もそれぞれカップに乗って会場の中に浮かんでいる。辺りは暗く、全面に星々が見えて宇宙空間の中に浮いている感じだ。


 カップの中のモニターにモナム星人の顔が映った。

 「皆様、お待たせ致しました。それでは只今からギャラクシーユニオン総会を開催致します。私は今回、議長を務めますモナム星のプッペと申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは最初にギャラクシーユニオン総理事長、アンドロメダ星のアロン様、ご挨拶をお願い致します」そう議長が言うとモニターに、いま雄介の隣に座っているアロンの顔が写し出された。


 「アロン、君が総理事長なの」雄介は、驚いて叫んでしまった。

 「静かに」アロンが雄介に言った。そしてアロンが挨拶を始めた。

 

 「皆様、ギャラクシーユニオン総会にご出席頂きましてありがとうございます。今回モナム星のプッペ議長にご尽力頂いて、このように盛大な総会が開催されますことを感謝致します。今回の総会が、この宇宙全体の平和と各星々の発展のために、素晴らしい総会になりますことを願っております」


 「総理事長アロン様ありがとうございました。では早速、今回の議題に入ります。今回の議題は、銀河系内太陽系第3惑星の地球が、ギャラクシーユニオン加入にふさわしい星であるかどうかであります。では地球人代表の天野雄介様、プレゼンテーションを行って下さい」


 そして今度は、モニターに雄介の顔が映し出された。雄介はアロンが総理事長だったことに驚き固まっていたが、それが安心感に変わった。

 「皆様、地球人代表の天野雄介と申します。どうぞよろしくお願い致します。皆様、上をご覧下さい」雄介がそう言って、隣のカップに乗っている良太に合図を送った。


 すると頭上の星々の中に銀河系の姿がゆっくりと映し出された。その銀河が段々と大きく近づいてきた。そしてその中の一つの星に近づいて行くにつれて、次々に太陽系の惑星の姿が映し出された。


 綺麗な水色の海王星。そして海王星よりもさらに鮮やかな水色の天王星。次に綺麗なリングを持った土星。横島模様が綺麗な木星。褐色の火星や、明るく輝く金星と水星の映像も映し出され、最後に地球の映像が天井いっぱいに映し出された。


 「皆様、これが地球です」雄介が言った。

 すると会場内にどよめきが沸き上がった。さらに雄介は続けた。

 「皆様、地球はご覧の通りとても美しい星です。この星に住む者は、植物が約20から30万種、動物が約137万種、その動物の中でも地球人が約80憶人存在しております。その地球人が知性と技術力を持ってこの地球を支配していると、勘違いして生きてきました。その地球人80億人を代表致しまして、今回ここでプレゼンテーションをさせて頂くのが私です。


 ご覧のように私はまだ若く、人としてまだまだ未熟ではありますが、この地球と言う人類の大切さは、誰にも負けないぐらい分かっております。ここにいらっしゃる皆様の星にも愛すべき人々、そして大切にしなければならない物があると思います。その皆様と同じ位に自分の星、地球を愛しております。


 確かに地球人は、自分達が一番偉いと勘違いしながら生きてきました。同じ地球上に存在する植物や動物、そして地球人同士も傷つけてきたことは事実です。しかしこれではギャラクシーユニオン会員として認めて頂けないことは分かっております。そしてこのままだと地球は滅んでしまうことも分かっております。そのような原因を作ってきたのは、他ならない私達地球人なのです。


 しかしアロン。失礼しました。総理事長のアロン様に教えて頂きました。今までのように地球人同士で争い傷付け合っていては、地球は滅亡への道を歩んでいるのだと。地球人は変わらないといけないのだと。皆様、地球はいま変わりつつあります。掛け替えのない地球を守るのだと。地球人が一つになって、自分の大切な愛すべき人の為に変わるのだと。愛に満ち溢れた星になる為に変わっているのです。アロン様が教えて下さった宇宙法則十カ条も、生活に取り入れて考え方を改めております。


 どうかこの、まだまだ未熟な地球人の為にお力をお貸し下さい。地球と言う人類を助けて下さい。皆様のお力が無いと、地球はこの宇宙から無くなってしまいます。ここに地球人を代表して誓います。地球人は、心を一つにして地球人類のため、そしてこの宇宙全体の平和のために生きていくことを誓います。どうか皆様、私のふるさとの地球をお救い下さい。最後に、私の愛すべき家族をご覧下さい」


 すると頭上に見えていた地球が段々と大きくなり、日本に近づいていった。そして大阪の街が見えだし雄介の家が見えてきた。その家の庭に、雄介の両親と妹が仲良く肩を組んで空を見上げ、こちらを向いて手を振っている様子が映し出された。


 そして隣の家に映像が変わった。すると隣の家でも、その家の家族が肩を組み手を振っている。またその隣も、そしてまたその隣の家でも家族が仲良く手を繋ぎ手を振っている。


 次に近くの公園の映像が映し出された。その公園でも大勢の人々が集まり、こちらを向いて手を振っている。マンションのベランダでも全ての人が手を振っている。街を歩いている人も手を繋ぎ、肩を組んで笑顔で手を振っている。


 そして映像には世界中の街が次々と映し出され、大勢の人々を映し出した。世界中の全ての人が笑っている。全ての人が肩を組み、手を繋いで手を振り、投げキッスをしたり、歓声を上げたりしている。世界中が平和で愛に満ち溢れている様子が映し出された。


 「皆様、ご覧ください。この人達全てが、私が住む地球と言う家の家族なのです。誰一人としてかけがえのない家族なのです。私の愛すべきこの大勢の家族と地球を、どうかお助け下さい。皆様、何卒宜しくお願い致します。ありがとうございました」雄介のプレゼンテーションは終わった。そしてプッペ議長がモニターに映った。


 「それでは皆様、採決に移ります。地球がギャラクシーユニオンに加入するためには、連合規定第2条第3項にありますように、総会出席者全星の賛成が必要です。では太陽系第3惑星の地球が、ギャラクシーユニオン加入に賛成の方は、目の前のモニター画面に触れて下さい」


 すると、宙に浮かんでいるコーヒーカップのような乗り物が次々と7色に光だした。全てのカップが光っているように思えた。

 「あと一つだけ明かりが灯っていないカップがありますね」議長がモニターに映ってそう言うと、アロンが雄介に言った。

「雄介は明かりを点けないの?」


 「あと一つはこれか」慌てて雄介は目の前のモニター画面に触れると、雄介とアロンが乗ったカップが7色に光だした。

 「皆様、これで満場一致で地球の加入が認められました。それでは総理事長アロン様、総評をお願い致します」アロンの顔が、モニターに映った。


 「皆様、ありがとうございました。今回このギャラクシーユニオンが一つにまとまり、そしてこの美しい星、地球を助けるために皆様の意見が統一できたことは、この宇宙全体が平和である証でございます。これからまだ地球を救うために皆様の力をお借りしなくてはなりません。今後とも宜しくお願い致します」


 「アロン様ありがとうございました。それではこれでギャラクシーユニオン総会を終了致します。この後、会場をホテルアウタースペースに移しまして、パーティーを行いますので皆様ご移動をお願致します」そう議長が言うと、会場全体に歓声が上がった。


 「雄介おめでとう。これで第一関門は突破だ」

 「ありがとうアロン。これも君のお蔭だよ。でもアロン、君が連合総理事長だとは驚いたよ」

 「隠していてごめん、でも初めから分かっていたら雄介は努力しなかっただろう」


 「そうかな。そうだね、君に甘えて努力しなかったかも知れないね」

 「よしパーティーに行こう。パーティーの主役は新連合会員代表の雄介、君達だからね」


 参加者は、ホテルアウタースペースに移動した。良太と由香里は先にホテルに来ていて、雄介とアロンを見つけ駆け寄って来た。

 「雄介やったね。これで地球は助かるんだね」

 「雄介君、あなたのプレゼン良かったわ。私感激した」良太と由香里が雄介の手を握り喜んでいる。 

 「ありがとう。これも君達の協力があったからだよ。僕一人の力ではできなかったよ。本当にありがとう」雄介も喜んだ。


 そこにソニヤがやってきた。

 「雄介さんおめでとう」

 「あ、ソニヤさん。来てくれていたんですね」

 「ええ、あなたのプレゼンがどうしても見たかったから、宇宙船団とアンドロメダ星に帰ってからすぐに駆け付けたのよ。本当にあなたのプレゼン良かったわ」

 「ありがとうございます。ソニヤさんにもそう言ってもらえてとても嬉しいです」


 雄介は、良太と由香里にソニヤを紹介して、皆でパーティー会場に入って行った。

 パーティー会場には、様々な星の料理が沢山並べられていた。その中には地球の料理も並べられていて、多くの宇宙人がそこに群がっていた。

 「地球の料理は、とても美味しいな」

 「うん、僕も是非地球に行ってみたくなったよ」多くの宇宙人が話している。


 「この食べ物は実に美味しい」そう言って一生懸命に食べているのはプッペ議長だった。

 アロンが夢中で食べているプッペ議長に話しかけた。

 「プッペ議長。今回とても素晴らしい会場で総会ができましたこと感謝しております、そして大成功で総会が終了しました。ありがとうございました」

 

 「いいえ、こちらこそ今回モナム星を総会会場に選んで頂きましたことを感謝しております。ところで天野様、この実に美味しい地球の食べ物はなんという物なのですか」

 「それは豚まんと言う物です。私の生まれ育った土地の名物なんです」

 「豚まんですか、これは実に美味しい、気に入りました。地球の食べ物は本当に美味しいですね」プッペ議長は、一人で豚まんを全部食べつくした。

 

 「アロン様、是非天野様と三人で記念写真が撮りたいのですが宜しいでしょうか」

 「はい、いいですよ。雄介、じゃあ真ん中に立って」アロンが、そう言って雄介をプッペ議長の隣に立たせた。雄介はなんだか嫌な予感がした。

 「良太、由香里も一緒に入れよ」雄介は二人を呼んだが、二人は顔の前で大きく手を横に振り遠慮した。

 

 「天野様、是非握手をして下さい」プッペ議長がそう言って、雄介の目の前にしっぽを差し出した。雄介の嫌な予感は当たった。雄介がアロンの方を見ると、アロンはニヤニヤ笑っている。目の前のカメラマンがカメラを構えて早く握手しろと促している。

 「アロン助けて」小声で雄介が言うと。

 「そのうち慣れるよ」アロンも小声で答えた。


 雄介は、しかたなくしっぽを握った。

 「はい、それでは写しま~す。天野様、笑って」

 雄介は引きつった顔で笑った。

 「パシャ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る