7,魂の特訓(1)

 雄介には、アンドロメダステーションの中の部屋が与えられた。その部屋は、マンションの部屋のようで、リビングや寝室などもあり生活に必要な物は全て揃っていた。しかし、窓から見える頭上に街や山が見える景色には、中々なれない雄介だった。雄介達が、ゼミア星の衛星のサテラに到着た次の日から、早速ゼミア星を救う為の計画が立てられた。


 「雄介、ゼミア星にはもうあまり時間がないから、ゼミア星を救う計画を立てよう。いまゼミア星で蔓延している病気は、ウイルス性の病気で凄く感染力が強いようだ。薬もまだ開発されていない。だからゼミア星に直接行くことはとても危険な状況だ。


 でも、それよりもゼミア星の人々は、このような状態になったのはウイルスのせいで、自分達自身に原因が有ることに気が付いていない。この病気に対する特効薬ができたとしても、また別の病気が流行ったり、災害が起きたりして人類の生命を脅かすだろう。


 まず気付かなければならないことは、このような状態になったのは、自分達の愚かな行いが原因していると言うことなんだ。そこを改めさせるのが肝心なんだ」


 このゼミア星は以前の地球の状態とまったく同じだ。いまゼミア星が直面している問題はそこにあるんだ。まずゼミア星の人々が助け合い、協力し合って、平和で愛に満ち溢れた星になることが肝心なんだ。雄介はあらためてそう思った。


 「雄介、君はゼミア星の総長にコンタクトして人々が変わる重要性を伝えることと、ゼミア星の今の詳しい状況を聞き出してもらいたいんだ」アロンが真剣な顔で雄介に言った。


 「でもそれをテレパシーでやるの。そんなことが僕にできるのかな」

 「雄介さん、大丈夫よ。今日から早速あなたの魂のレベルを上げる特訓を始めるから。私が雄介さんの魂を向上させるコーチをさせてもらうわ」

 

 「ソニヤさんはテレパシーが使えるんですか」

 「いいえ、私はまだ使えないわ。だから雄介さんと一緒に魂レベル6を目指して訓練するつもりよ。一緒に頑張りましょう」ソニヤが雄介にウインクした。

 

 「僕にもし、そんな能力があるなら訓練したいですけど、アロンやソニヤさんではダメなんですか」

 「雄介、残念ながら僕には全くその能力は無いんだ」アロンが残念そうな顔をした。


 「私達はまだ魂レベル4だから、テレパシーが使える状態ではないの。でも雄介さんにはその可能性があるのよ。そう長老が教えてくれたわ」

 「長老がそう言われたんですか。以前アロンから長老の話を聞いたことが有るけど、もう少し詳しく長老のことを教えて下さい」


 そしてアロンが長老について雄介に説明した。

 「僕が現在のギャラクシーユニオンの総理事長を務めているんだけど、僕の前に総理事長を務めて下さっていたのが長老なんだ。長老は現在第一線を退かれてはいるんだけど、我々に色々とアドバイスをして下さっている。


 長老の魂レベルは5で、ギャラクシーユニオンの中では最高レベルなんだ。長老のように魂レベル5以上になれば、宇宙波動エネルギーとコンタクトできて、自分や人が行おうとすることが、プラスなのかマイナスなのか、このさき行おうとすることが上手くいくのかいかないのかが分るようになんだ。それで長老は宇宙波動エネルギーから雄介の可能性を導き出したんだよ」

 「宇宙波動エネルギーから。宇宙波動エネルギーについても、もう少し教えて下さい」


 ソニヤが宇宙波動エネルギーについて説明した。

 「この広い宇宙には、宇宙が誕生した時から宇宙全体を司り、そして動かし、更に宇宙を成長させている宇宙の中心とも言えるエネルギーが存在しているの。そのエネルギーが宇宙波動エネルギーなの。


 宇宙波動エネルギーは、この全宇宙の中の過去や現在、そして未来までも把握しているのよ。そして宇宙波動エネルギーは常に私達の側に存在しているのよ。全ての人々の心と密着している存在なの。普通の人はその存在に気が付かないけど、魂のレベルを上げていくと宇宙波動エネルギーからのメッセージも感じ取れるようになるわ」


 「そうなんですね。それはほんとに凄いことですね」雄介は、自分もそんな能力を発揮することができるのかとワクワクしてきた。

 「雄介さん、あなたは魂レベル3はクリアできているから、では早速魂レベル4を説明するわね。魂レベル4になると、次々と新しいアイディアが沸いてきたり、記憶力が向上したり、心が落ち着いて健康になれたり、ストレスも解消できるわ。


 そして体が宙に浮く感覚が得られるようにもなって、魂だけ別の所に行くことができるのよ。この魂レベル4までは、訓練次第で誰でも得られるレベルよ」


 「凄いですね。そんなことができるんですか。じゃあ僕も訓練次第で幽体離脱みたいな体験もできるんですね」

 「おいおい雄介、そんなに興奮するなよ。魂レベル4までは誰でもなれても、レベル5や6はその能力が有る者しか到達できないし、訓練も厳しいよ」アロンが少し雄介を脅かした。


 「分かったよ、アロン。真剣に取り組むよ」

 「それでは雄介さん、早速訓練を始めるからこっちに来て」そう言ってソニヤが雄介を隣の部屋に案内した。


 隣の部屋は六畳程の部屋で窓は無くて薄暗く、ちょうど豆電球が一つ灯っているような部屋だった。そして部屋の真ん中に椅子が二つ向かい合わせに置かれていた。

 「雄介さん、そこに座って」ソニヤが雄介を椅子に座らせ、ソニヤも雄介と向かい合って座った。


 「それでは雄介さん、魂のレベルを4に上げる訓練に入るわよ。訓練と言ってもやることは瞑想なの。瞑想がどれだけ深くできるかに掛かっているわ。雄介さんは今まで瞑想はやったことはあるの」

 「ソニヤさん、僕は瞑想をしたことがないです。大丈夫ですか」

 「大丈夫よ。瞑想は取りあえずリラックスしてやれば大丈夫なの。緊張せずにリラックスして始めましょう」


 雄介は、これから何が始まるのか緊張していたが、ソニヤの優しい笑顔で緊張がほぐれた。

 「雄介さん、これから瞑想のやり方から説明するわね。では、部屋の明かりをもう少し暗くしてから始めます」すると、部屋の明かりが少し暗くなり、温かなオレンジ色の光に包まれている感じになった。

 

 「瞑想をする時は椅子か床に座って行います。椅子の場合は、柔らかいソファーの様な椅子ではなくて、いま座っているような食卓の椅子か勉強机の椅子のような物にしましょう。椅子には浅く座って、背もたれにはもたれずに背筋を伸ばします。


 床に座る場合は、座布団かクッションをお尻の下にだけに敷いて、足はあぐらを組んで床に付けて、お尻を床から五センチから10センチほど高くして座ります。そうすれば背筋を伸ばしやすいですからね。部屋はできるだけ静かな環境で行うのがいいわ。では背筋を伸ばして座って、ゆっくり目をつむります」ソニヤがゆっくりと目をつむったので、雄介も背筋を伸ばし目を閉じた。

 

 「手は楽な感じで膝か腿の上に置いたらいいわ。雑念は考えないようにして、でも人間は何も考えないのは無理なの。だから瞑想をする時は、あるキーワードを頭の中で考えるようにします。キーワードは何でも良いけど、瞑想する時はいつも同じキーワードを頭の中で思うようにします。そのキーワードを思うと、自然と瞑想状態に入れるようにして行くのがポイントなの。


 キーワードは取りあえず『リラークス』をキーワードにしましょう。目をつむって瞑想に入り『リラークス』と何回も頭の中で唱えると、キーワードをと唱えるだけで自然と気持ちが落ち着き、瞑想状態に入れるようにしていきます。ここまで大丈夫ですか」

 「はい、大丈夫です」


 すると、ソニヤがとてもゆっくりとした口調で話しだした。

 「では、深呼吸をゆっくり3回して下さい。1回、2回、3回、頭の中で『リラークス、リラークス』とゆっくり繰り返し唱えましょう。『リラークス、リラークス』次に顔の力を全て抜いていきます。額、目の周り、頬、口。顔全体の力をゆっくり抜きます。『リラークス、リラークス』


 次に体全体もリラックスさせて気持ちを大きく持ちます。心を宇宙と同じ大きさにしていきます。あなたは気持ちがゆったりと大きくなってきました。今あなたが居る宇宙空間と同じ大きさの心にしていきましよう。『リラークス、リラークス』後は時間を忘れて『リラークス、リラークス』と頭の中でゆっくり繰り返し唱えるだけでいいです。


 雑念を取り除き『リラークス、リラークス』心をゆったりと大きく持って顔の力は全て抜きます。体もゆったりとさせます。『リラークス、リラークス』

すると自然と体が動きだしたり、揺れだしたりすることがあります。でもその動きに体を合わせましょう。動きを止める必要はないです。動きを楽しみましょう。ただ頭の中で『リラークス、リラークス』と唱えるのです。


 すると今度は、体が宙に浮いたような感覚になることがあります。宇宙空間を漂っているような、無重力空間にいるような感覚です。そのような感覚になってもただ『リラークス、リラークス』と唱えます。そんな感覚になれたら、あなたは完全に深い瞑想に入っています。『リラークス、リラークス』瞑想無重力を楽しんで下さい」ソニヤがそこまで話すと、しばらく静かな時が流れた。そしてソニヤが、またゆっくりと話し始めた。


 「それでは、瞑想から覚める方法を説明します。まだ目を開けてはいけません。まずゆっくりと深呼吸を3回しましょう。1回、2回、3回、そして腕を上げて背伸びをしましょう。次に意識をしっかり持てたら、ゆっくり目を開けて下さい。これで瞑想は終了です。


 瞑想は最低でも毎日20分はやってみてね。体が宙に浮いたような無重力の感覚が得られるまで、とりあえず頑張って瞑想します。どうでしたか雄介さん、瞑想できた感じがしましたか。体が宙に浮いた感じを得られましたか」ソニヤがニコニコしながら雄介に尋ねた。

 

 「ソニヤさん、初めて瞑想したので、瞑想できたのかよくわからないのですが、でも凄く心が清々しく体も楽です」雄介はとても嬉しい気持ちになった。

 「それで大丈夫よ、雄介さん。取りあえず瞑想を繰り返しやりましょう。体が宙に浮く感じが得られたら魂レベル4はクリアよ。


 瞑想が自分のものになったら、どんな場所でも瞑想できるようになるわ。たとえ人混みの中に居たとしても、布団に入って寝る前でも、目をつむり『リラークス』と心の中で唱えさえすれば瞑想状態に入れるわ」ソニヤは優しい笑顔で雄介に言った。


 雄介は、ソニヤの優しさに益々ソニヤのことが気に入った。それから雄介は、一日に何回も瞑想を行った。雄介は、瞑想する度に段々と深く瞑想ができるのが感じられた。瞑想の度に更に心は落ち着き気分が良くなった。頭も冴える感じがしていた。


 数日が経ったある日の夜、雄介は、自分の部屋の布団に入り、瞑想しながら寝ようと布団の中で瞑想を始めた。

 「リラークス、リラークス」すると雄介の体がゆっくりと宙に浮く感じがした。


 「リラークス、リラークス、なんだか体が浮いている感じがする。このまま浮いていこう。リラークス、リラークス」そして雄介は、宇宙空間に出た感じがした。すると雄介の意識の中でゼミア星が見えてきた。そしてゆっくりゼミア星に近づいて行った。


 ゼミア星に着いた雄介の意識は、街の中を見回した。しかし誰も居ない。別の街にも行ってみた。でもそこにも誰もいない。雄介は今見ている光景が実際のゼミア星のものなのか、地球の光景なのか、それとも夢なのか区別がつかなかった。そうしているうちに雄介は深い眠りについてしまった。

 

 次の日の朝、目が覚めた雄介は、急いでアロンとソニヤに昨夜のことを話した。

 「凄いじゃないか雄介。それは実際に魂がゼミア星に行ったんじゃないのかな。ソニヤはどう思う」

 「そうね、そうかも知れないわね。それが現実に魂が行ったのか夢だったのか分からないけど、どちらにしても体が宙に浮く感じがしたのは事実らしいから、魂レベル4はクリアしたわね」


 「凄いじゃないか雄介、この調子で魂レベル5をクリアしてくれよ」アロンが雄介の肩を叩いて言った。

 「雄介さん、早速魂レベル5を説明するわね。魂レベル5は潜在意識を介して、他人の思っていることが分る魂なの。自分の魂が相手の潜在意識の領域に達して、黙っていても人の心の中が感じられるようになるわ。それに人の過去、現在、未来も分る魂なのよ。


 そのうえ宇宙波動エネルギーとコンタクトすることもできて、物事のプラスかマイナスが分るの。物事がこの先、上手くいくのか、それともいかないのかも分るようになるわ。宇宙波動エネルギーとコンタクトできると自分で判断しなくても、宇宙波動エネルギーが判断してくれるから、何事にも悩まなくてすむようにもなれるわ」


 「それは凄いですね。そんなことができだしたら嬉しいですね」

 「宇宙波動エネルギーにコンタクトして回答を得るには、瞑想状態に入ってから尋ねたいことを頭の中で唱えるの、そうしたら自分の体に何かしらの反応が有るの。尋ねたことがプラスとか結果が良いなら体の左側に反応が出るの。もしマイナスや結果が悪い場合は、体の右側に出るわ。


 反応の出方は人それぞれで、耳の奥で音がするとか、体がぴくぴく動くとか、虫が体をはうような感じがするとか色々よ。自分の反応を注意深く感じないと最初は分かりにくいと思うわよ。でも気を付けなければならないことは、宇宙波動エネルギーの反応を私利私欲の為に絶対に使ってはいけないの。もし自分の利益の為だけに宇宙波動エネルギーを利用したら、あなたの健康を害することになるから注意してね」


 「分かりました。宇宙波動エネルギーは人の幸せの為に使うといんですね。でも凄いですね。宇宙波動エネルギーは未来まで分るんですか。それに瞑想はほんとに凄いですよ。自分の色々な能力を引き出してくれるし、そのうえ心がとても落ち着いた気分になれて清々しい感じになれる。とても元気も出るから健康にも絶対いいですね」雄介は、瞑想とこの宇宙の凄さに感激した。


 「そうね、この宇宙波動エネルギーは偉大だわ。じゃあ今度は魂レベル5を習得する為に頑張りましょう。魂レベル5を習得する為には、瞑想しているときに宇宙波動エネルギーにコンタクトするつもりですると大丈夫よ。レベル5に達したら出会った人の過去、現在、未来が自然と感じられるからレベル5に達したことが分るわ」


 「では早速、魂レベル5を目指して頑張ります」でも不思議だ。なぜ魂のレベルが上がると人の過去や未来が分かったり、テレパシーが使えたりするようになるんだろうか。雄介は、自分でも想像しなかった能力が身に付きだして不思議に思った。それから雄介は一日に何回も瞑想を行った。雄介は瞑想することが楽しくてたまらなくなっていた。

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